第20話 お前の敗因は

『待て、ソウスケ。我は貴様に魔眼しか与えられていない。そんな状態ではこのバリアを破るのは困難だ』

 魔眼はあくまでサポート用だし、その他の箇所は何の変化もない。それはソウスケ自身がよく知っている。

「分かってるさパイモン。だけどこれは俺とあいつの戦いだ。口出しはしないでくれ」

 ここでパイモンから知恵を借り、バリアをどうにかするのは簡単だ。仲間の力を借りてはいけないとは言われてなかったがそれでは俺の戦いじゃなくなる。

『まあ、策はあるようだし……だが次からは我も頼れよ。契約者ならば契約者らしく振舞ってもらわなくては困る』

「ああ、言われなくてもそうするさ。だが今は!」

 異世界に来てから初めてのバトル。

 自分が培ってきたものがここで、魔法にどれだけ通用するかは定かではないがここで見極めてやる。

 そう決心してもう一度距離を詰める。バリアのギリギリ手前まで。そして渾身の一撃を叩きつける。

「無駄だよ。その程度じゃあ傷一つつかない」

「じゃあこいつはどうだ?」

 バリアを踏み台にして追尾してくる黄色い玉を回避してそれは勢い余ってバリアに衝突して鈍い音が廊下に響き渡る。

「まさか僕の攻撃を利用してくるとは……油断していたよ。でも、それでも一歩届かなかったようだね」

 微かにヒビは入ったがこれでは拳すら入らない。

「バーカ。誰が一度だけつったよ」

 空中で一回転したソウスケは着地したと同時にまた突進して透明の壁に勢いを乗せた拳を放つ。

「魔眼は魔力の流れだけじゃない。それがどんなもんかも判別できる。あの黄色い玉は魔法生物みたいに内蔵されてある魔力がなくならない限り動き続けるやつだろ? しかもお前があの黄色い玉に課したのは俺を追尾して攻撃する事。そのバリアは急ごしらえで用意したもの。いつまでもつか見ものだな!」

 殴り、避けて、突っ込み、また殴る。

 ただその繰り返しだが確実にヒビは広がっていく。

「まさかそこまで悪魔の力を使いこなすとは……」

 油断をしたわけではない。異世界人はそうじて何かに秀でていた。各地を回ってそれは嫌というほど知っていたがこの男、ソウスケは想像を遥かに超えていた。

 まさかこれほど悪魔に体質のある人間がいるとは彼でさえ予想だにしていなかったのだ。

「お前の敗因は俺のハーレムを邪魔した事だ!」

 その一言と共に放たれた攻撃は見えない壁を打ち砕き、両者の間を遮るものはなくなった。

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