第16話 契約
『いらぬ心配だったか。人間、成功だ。初めてだからまずは少ししか貸せんがこれは貴様の役に立つだろう』
紫色の光が止むとそんな声がした。
俺にとってその声は悪魔ではなく切っても切れぬ縁の者の声になっていた。
「と言われてもパイモン。全く変化を感じられないんだけど」
爪が伸びたり、耳が鋭くなっていたり、羽根が生えたりもしていない。今まで通りの体だ。何の違和感もない。
『鏡を見てみろ。特に目を』
「目?」
ベッドの横に置かれていた鏡で自分の姿を見てみる。パイモンに言われた目を特に。
すると、左目に何かが刻まれていた。
「なんだこれ? 魔法陣?」
『魔力の流れを可視できるようにしてやった。念じて瞬きすれば切り替えができる』
なるほど、確かにできる。
だけどそれが何だという話だ。
これで俺が強くなったというわけでもない。
「ふ〜ん。それって凄いのか?」
聞いている限りだとピンとこない。
『地味ではあるが便利なものであるのは確かだ。それは我が保証しよう』
「分かった。じゃあ、実際に確かめてみる」
百閒は一見にしかずだ。とりあえず部屋から出たアドちゃんの言う魔法生物を見つけなくては。
『魔法生物? まさかそんなものの為に我と契約したのか?』
「なっ! 俺の心を読んだのか?」
『契約をしたからな。我とお前は一心同体だ』
一心同体? それって体も一緒って事?
いや〜、まだそういうのは早いんじゃないのかな〜。もう少し関係を進めてから……あ、こういうのも聞こえてるのか。以後気をつけないとな。
「あ〜、一つ聞きたいんだけどパイモン。その喋り方をなおすのは無理か? なんか我とか女っぽくなくって……てか、本当に女? まさかあのガキ俺に嘘をついたんじゃあ……」
『ちゃんと女だ。しかし、この喋り方を変えるつもりはない』
「まあ、お前が変えたくないならそれでいいけど。お前はそういうキャラって事で」
それよりも問題はこの目か。使い方がイマイチ分からないし、本当に使えるのか疑問だ。
それと時間。こうして話している間にあいつに先を越されてしまうかもしれない。
『おい、人間。力はまずその魔眼だけしか貸せないが知恵はいくらでも与えられる。我の策に乗ってみる気はないか?』
そう、それは俺に足りなかったものだ。だが今はある。一心同体になったのだから。
「俺はソウスケだ。人間と呼ぶのはやめろ」
じゃないと萌えないだろ。
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