第14話 封印されし悪魔

「さて、どうしたものか」

 この宿は想定していたよりも広い。部屋にある机の引き出しにあった地図でそれを確認する。五階建てで部屋の数は合計四十。

 そして俺たちがいるのは四階。

 あいつと俺の部屋は隣同士で廊下をまたいで秘密の花園がある。忍び込むのは簡単だが今はそれどころじゃない。

 とにかく、引き分けにならないようにしないとならなくなった。

 なんたってゲーム名をそのまんまにするアドちゃんが決める呼び名だ。今より悪化するのは目に見えている。

 それだけは阻止しないと……。

「片っ端から探すか? いや、それだと時間がかかり過ぎるか。アドちゃんは魔法生物を暴れさせたりするから騒ぎになるのを待ってそこに行くか? これも駄目だ。後手に回る上に着く頃には逃げられてるかもだし」

 駄目だ。これ以上考えると脳がオーバーヒートしてしまう。宿が小さければ罠を作ったり、色々とやりようはあったけど時間制限がある以上そういった時間をかけた作戦はできない。

「くっ……頭痛い。これまでか……」

 もう無理だ。スタートがあれなだけあってそれほどやる気は出ない。勝っても商品が商品だしな〜。別にここはあいつに任せても……。

「待てよ。ここで諦めるって事はあいつに勝ちを譲る結果になっちまう。つまりまたあいつの好感度が上がる。それだけは……それだけは耐えられない。ここが挽回するチャンスだ。頑張れ俺!」

 よし、なんとかやる気が出てきた。まあやる気でどうにかなる事ではないけど。

 ぶっちゃけ一人でブツブツ言ってるこの場面を見られたら精神的に立ち直れなくなりゲームオーバーだけど幸いにも外に人の気配はない。

 なので、一旦自分を落ち着かせる為に部屋をゆっくりと歩く。そしてある物に目が行き一筋の光が見えた。

「確か俺には何もなかったよな。ハンデとか。何かを使っちゃいけないとか言ってなかったよな。それに誰かに頼っちゃいけないとも」

 ソウスケは机の上に置いていた短剣を手に取り、不気味な笑みを浮かべて柄頭にある宝石に封印されているという悪魔に呼び掛ける。

「俺に力を貸せ」

 確証はなかった。

 領主の戯言、もしくは封印された悪魔が力尽きている可能性もあったが彼女は生きていた。

 そして、今彼の声に答える。

『我が名はパイモン。契約をするのなら貴様に力と知恵を貸そう』

 それは女性にしては低かったが宝石から聞こえるこの地獄から響いてくるような声はまさしく悪魔の声だった。

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