第13話 ゲーム
ゲーム。
これは時間を持て余していた俺らには魅力的なものだ。アドちゃんはこれを通してあいつと仲良くさせたいみたいだけどあれはお断りだ、男だからじゃない。それだったら俺に友達はいない。
ただあいつは普通じゃない。魔導師だから普通じゃないのは当たり前だけどそういう意味じゃなくて雰囲気の問題だ。
自慢じゃないけど俺は家庭の事情で一目でどんな人かどのくらいの強さが分かる。だがその後発的スカウターであいつを見ても何も読み取れなかった。
だから警戒をしてるけど何かをする様子もないがせめて気を許さないようにしている。が、アドちゃんの提案のゲーム。
これはチャンスだ。勝っても負けてもぶっちゃけどうでもいい。あいつの底さえ知れれば。
夜になる前に宿に入り、各自部屋に別れる。
フィアやミキやアドちゃんと違う部屋なのは残念だったけどあいつがいないのは好都合だ。今のうちに準備を……
「お〜い、ソウちゃん。どうしたの?」
と思ったらアドが目の前で手を振りこちらを見つめていた。
「あ、いや何でもない。それより俺に何か用?」
夜這いにはまだ早いように思えるけど。
もしかして人恋しくなって俺のところに?
なら俺の胸を貸そう……と、どうやら違うようだ。ドアの前から動かない。
「ふふん、実はゲームの方法が決まったの。これで二人とも公平な勝負ができるよ。褒めて褒めて」
「ぜひ喜んで! いい子いい子〜」
悪魔にいい子と言って頭を撫でるのはどうかと思うがこれは俺得。アドちゃんの髪の毛を触れた。何かいい匂いするし、柔らかくてずっと触っていたい気分だけどそういうわけにもいかないので本題に入る。
「それでその方法っていうのは?」
魔法、体術なしとなるとかなりジャンルが狭まってくるけど。
「題して! 私の魔法生物がこの宿で暴れたり、隠れたりするから捕まえてねゲーム」
タイトルがそのままだった。もはや説明の必要がない。
「このゲームは私がつくった魔法生物がこの宿で暴れたり、隠れたりするからそれを捕まえるゲームです。先に私にその魔法生物を連れて来た方の勝ちにします」
「あ、うん。大体分かってた」
でも律儀に説明してくれたのは可愛い。
「それとジーちゃんに結界を張ってもらってるし、この宿の人にはオーケー貰ってるから。それにジーちゃんにはハンデとして大規模な魔法とか強力な魔法を使わないように言ってあるから」
なんか俺は何もなしで下手に見られてる感は否めないがまあいいだろう。
「それで開始はいつから?」
「今からだよ。魔法生物が消えるまでが時間だから気をつけてね。あ、引き分けの場合は私が決めた呼び方でお互い呼んでもうから」
「え? 今から?」
それらしい合図もなく、俺とあいつの尊厳(呼び名)をかけたゲームが始まったらしい。
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