第12話 悪魔の提案

 馬車の中は意外と快適だった。

 てっきり急いでるから近道して山道を進んで揺れたりするのかと危惧していたけどフィアは平坦の道を選んだ。

「この道は騎士団が警備しているから安全なんだよ。それに魔法とかで最短距離になっているから別に無理して危険な道を進む必要がなくなったんだ」

 とクソ眼鏡に説明された。

 こいつは俺の心を覗いているのか?

「急がば回れか。それで、クラウ・ソラス領まではどれくらいで着くんだ?」

 街を出てから人や馬車とすれ違わないから少し不安になってくる。

「四日くらいはかかるよ。とりあえず今日は暗くなる前に街まで行ってそこの宿に泊まろう」

 この旅の進路等は仕事柄外出する事が多いというジーニアが担当して、馬も彼がつくりだした魔法生物で勝手に動いてくれている。この旅は彼が牛耳っていると言ってもいい。

「なら、当分は安心か」

「それよりソウスケくん。僕の呼び方どうにかならないかな? せめて名前で呼んでくれるとありがたいんだけど」

「お前の名前呼びにくいんだよ」

 それに邪魔だし、男だし、頭良さそうだし、魔法使ってみんなの役に立って好感度上げようとしているみたいだし。

「絶対理由がそれだけじゃないのは察してるけど一応僕はそれなりの地位でね、部下が何人もいるし各領地に知り合いもいる。それなのに異世界人に馬鹿にされてると知れたら僕の立場がない」

「分かった。お前がそこまで言うなら今度は普通に呼ぶよ。悪かった眼鏡」

 うん、呼びやすくなった。クソは駄目だったな。女の子がいる前でそれは駄目だ。流石に下品だしなこれは。うん、これで解決。

「いや、だから名前で呼んで欲しいんだけど……」

「ならゲームで決めたら?」

「「ゲーム?」」

 アドの唐突な提案に不本意ながら声が重なってしまったがそれほどこの提案は心を揺さぶるものがあった。

「そ、どうせクラウ・ソラス領まで退屈だからソウちゃんとジーちゃんが対決して勝った方が相手の呼び方を変更できるってのはどう?」

「待ってください。僕は魔法が使えるけどソウスケくんは使えない。体は鍛えてあるようですから体術勝負となれば勝つのは彼ですがそれでは不公平だ」

 ゲームとはいえそれでは両者納得はしない。

「うん、だからやり方は私に任せて。ちゃんと私が公平で面白いゲームを用意するから」

 彼女はまるで新しいオモチャを手に入れた子供のように、何かを企んでいる悪魔のように笑みを浮かべた。

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