第11話 素直に
「すいませんフィアさん。あんな話、街中でしちゃいけませんよね」
食事を終え、すぐに次の街へと向けて出発した馬車の中でソウスケは反省していた。
「いいさ。ジーニアが事前に結界を張っていたから会話は私たち以外誰にも聞かれていなかったしな。これから気をつければいいさ」
確かに気をつけないと。これではあの眼鏡魔導師の好感度が上がってしまう。頑張って挽回しないとな。
「んも〜ソウちゃんはドジっ子だな〜」
喋り方からして天然な悪魔にドジっ子認定されてしまった。一応これでもクール系に努めてたはずなんだけど。
「いや、アドちゃんが事前にちゃんと俺たちに説明してくれればこんな事にはならなかったよ」
こんな事にと言ってもあの眼鏡魔導師のおかげで何事もなかったけど俺としてはなんか口が軽い奴だと思われてしまうのが心外だ。
てか、思ったけど結界を張ってたって事は俺がそういう話をするって予想してたのかあのクソ眼鏡。そう考えると急に腹が立ってきた。
「それよりソウちゃんってさ〜何でフィアちゃんとかミキちゃんによそよそしいの? もしかして嫌いなの?」
俺の話をスルー。これが天然か流石だ。
しかし、この質問は愚問だな。故に即答する。
「いえいえ! 凛としていて頼り甲斐がある綺麗なフィアさんと物静かだけど周りを良く見てて、街中で見つけたネコに泣き真似をして接してるミキが嫌いな訳ないじゃないですか! むしろ好きですよ、愛してますよ」
「ふ〜ん。じゃあ、呼び方変えてみたら?」
俺の熱に対して対応が冷たい。なるほど、これがいわゆる嫉妬というやつですか。
「でもそれは本人たちの了承とかいるし……」
いきなり下の名前から呼ぶのは馴れ馴れしく思われてしまうから初めて会った人は苗字で呼ぶようにしている。ただ今回ばかりはそれが通じないから、さん呼びをして仲良くなったらなくそうとしていたんだけど。
「そうだな。アドの言う通りだ。私たちはこれから困難を共にする仲間だ。それなのに距離を置かれては困る」
「私、も大丈夫」
「ほら、二人はこう言ってるよ」
「じゃ、じゃあ……こほん。フィ、フィア。ミキ」
流れで言ってみたけどやっぱ恥ずかしい。だがそれ以上に嬉しい。
これは他の人からしたら小さな一歩かもしれないが、俺にとっては大きな一歩だ。
「よ〜し、それでよし。ソウちゃんはそれでいいんだよ。遠慮とかしちゃ駄目だよ〜。自分では気がつかなくてもストレスとか溜まっちゃうから」
「ああ、ありがとうアドちゃん」
ひと段落してこのやり取りを傍目で見ていた魔導師が気になって彼に質問した。
「ではソウスケくん。僕はどのように呼んでくれるのですか?」
「クソ眼鏡」
ストレスは溜めちゃいけないらしいからな。
気をつかうのをやめにしたソウスケは本心を述べた。
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