第9話 旅立ち

 魔導師、もしくは魔法使いと言われて想像するのは老人だ。

 しかし、ソウスケの目の前には白髪ではあるが眼鏡をかけた青年が立っている。

「驚いたかい、こんな僕が魔導師で。普通魔導師は長年魔法の修行を積んだ人がなれる職業だったからね。でも今は才能があれば数年で魔導師になれる。だから僕のような若者の魔導師がいるんだよ」

 帽子はないがフードを被り、杖を構えるその姿は紛れもなく魔導師の姿。

 だがソウスケにはアドよりも怪しげな人物に見えた。

「いや、聞いてねーよそんなの。回復役なら俺がするから帰れ」

 俺があの手この手で癒すから(意味深)。

「帰るわけにはいかない。一応領主様に君たちを守れと命令されたからね」

「なんだ、そんなに俺たちが信用ならないってか」

 別に突然異世界から来た俺らを信じろとは言わないけど一方的に押し付けてきたのはそっちだろ。

 その態度にソウスケは苛立ち歯ぎしりを鳴らす。

「そうじゃない。むしろ領主様は君たちに期待しているようだったよ。でも、聖剣様が君たちを指定したのには何か理由があるはず。そう考えると君たちに死なれては困る」

「だから自分の手駒を寄越したってのか」

 あの子供領主、以外とバカにできないかもな。

「手駒って。確かに僕は領主様の部下ではあるけど、その前に一人の魔導師のつもりだよ。もしかして領主様を疑ってるとかじゃないだろうね」

「まさか。俺の親父は家の事情上、色々と教えてきてな。嘘を見破る方法も教えてくれたんだ」

 といってもただ相手の表情、行動をよく観察するだけなんだけど。

「へぇ、息子思いの父親だ。それで、その方法によると僕は白なのかい? 黒なのかい?」

「灰色だな。親父から教えてもらった方法は絶対じゃあない。だがフィアさんはお前を信頼しているようだし、とりあえず白よりの灰色にしてやる」

 だけどフィアさんやミキさんやアドちゃんに手を出したら即刻死刑だがな。

「二人とももういいか? 男同士仲良くするのはいいがもうそろそろ出発したい。一秒でも早く聖剣を集めたいからな」

 別に仲良くしているわけはなく、むしろ牽制していたんだけどこれ以上フィアさんを待たせるわけにはいかない。

「分かりましたフィアさん。おい眼鏡魔導師、さっさとワープさせろ」

 既に準備はソウスケが領主からアゾット剣を受け取っている間に済ませてある。

「ワープって、もしかして空間転移のことかい? 冗談はよしてくれよ。僕一人じゃあ無理だよ。空間を操る魔法はかなり難しくてね、それに魔力も大量に必要だ。少なくとも僕クラスの魔導師があと十人か二十人はいないと」

「ふ〜ん」

 まずこの眼鏡魔導師がいう僕クラスがどのくらいか知れないけどゲームのようにはいかないらしい。

「だから移動は馬車だがそれでは不服か?」

「いえいえ、フィアさんと一緒なら馬車でも逆立ちでも構いませんよ」

「ふっ、おかしな奴だな」

「ちょっと〜、まだ〜私もう待ちくたびれた〜」

 こうして駄々をこねられたのでソウスケは素早く渡されたものに着替え、一行は馬車に乗り聖剣を悪魔に食べさせる為の旅に出た。

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