第7話 アゾット剣

 ちょっと整理させてくれ。

 俺は親父の跡を継いで忍者になるのが嫌でわざわざ家出をしたはずだ。

「なのに何で俺は短剣なんかを渡されてるんだ⁉︎」

 聖剣の間(アドと出会った場所)から再び謁見の間に戻って子供領主から話があると言われ一人残され、唐突に柄頭に宝石がついた短剣を領主直属の護衛兵から手渡された。

「仕方ないだろ〜それが聖剣様の遺言なんだも〜ん」

「おい、ふざけるなよガキ。知らんぷりしても無駄だ。頼りの聖剣様が悪魔に食べられたのにそんなに落ち着いていられるか!」

 フィア同様、事前に知っていたとしか考えられない。

「はぁ〜、うるせえな。そうです知ってました。いつかこうなると知ってしました」

「ひ、開き直るなよ。でもいいのかよ? 百三十年前に悪魔がこの世界を滅ぼそうとしたんだろ?」

 ならば恨んでいたりしていてもおかしくはないはずだが領主だけでなくフィアさんもそんな様子はなかった。

 昔のことだからピンとこないのだろうか?

「あの女は特別なの。悪魔でありながらこの世界を救う力を持ってる。だからここの聖剣様は彼女に託すことにしたの。世界の命運を」

「世界を救う力? なんだそれ」

 本人も世界を救うように頼まれたと言っていたけど……。

「そんなの本人に聞きなよ。それよりその短剣大事に使えよ。アゾット剣っていって柄頭にある宝石に悪魔が封印されてる。どんな悪魔かは知らないけど、か〜なり極力な奴だとは聞いてる」

「は? 悪魔⁉︎ そんな危ないもん俺に渡すなよ」

 綺麗な宝石なのでジッと見ていたソウスケは失明するかもと目を背けて本気で怒鳴る。

 マウスの赤い光を向けられた気分だ。

「慌てんな。封印されてるって言っただろお前に触れることもできねーよ。あ、それとその悪魔は女らしいから」

「喜んでいただきます領主様!」

 肩肘をつき、深々と頭を下げるソウスケ。

「おまっ、切り替えはえーな。あ、それとこれ」

 指を鳴らし護衛兵に渡させたのは銀色の籠手。何故か中心に窪みがある。

「そのガントレットは保険だ。フィアがいるから問題ないと思うがもしもの時にその窪みに宝石を入れろ。封印されし悪魔が力を貸してくれるだろーよ」

「それって俺も戦わなくちゃいけないパターンっすか」

 もう俺を戦力として考えちゃってるじゃん。

「当たり前だろ。あの悪魔に死なれたら困る」

「もし俺が嫌だと言ってここから逃げ出したら?」

 というか既にそうしていても不思議ではない。王宮から出て必死になって穴を探すのが普通だ。例え見つからなかったとしても。

「そしたらお前は元の世界には戻れず、この世界は逃げ出した誰かさんのせいで悪魔が来るまでもなく滅びる」

 ヘラヘラしていた先程とは違い、真顔で答える。

「うっわ……。その言い方はないわ〜」

 ズルい。それは脅しに近い。

 元の世界に戻る方法が分からない以上選択肢は一つに絞られる。

「じゃあ、どうする?」

「不本意ながら参加するよ。その世界を救う戦いとやらに」

 美少女三人とな。

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