第5話 出会い
「え~と、ミキさん? 一つ質問してよいいすっか?」
刀を持っているといっても女子だ。それにいきなり斬りかかって来る訳がない。お兄ちゃん信じてる。
「うん」
どうやらお兄ちゃんの願いが通じたらしく、刀を振るう気配はない。
「平成って知ってる?」
初めてこんな質問した。多分というか二度としない質問を俺はした。忍者の末裔が何を言うとお思いだろうがこれは結構くるものがある。
「……」
ソウスケの意を決した問いに黒髪ポニーテールの彼女は不思議そうに首を傾げた。
「あああ~~、やっぱりだよ。やっぱり世界は同じでも時代が違いますよフィアさん!」
「いや、私に言われても。しかし、そうなると事は急を要するようだな。空間だけでなく時空をも操れるとなると複数の魔導師が結託しているかそれとも……」
「あの……」
何やら一人で悩み事をしている最中で申し訳ないが、こちらも限界だ。俺は実際に外国人と出会ったら混乱して一気に語彙力が低下するタイプなんだから。
「ん? すまない。そうだな。すぐに聖剣様に会わせてやる。必ず君たちを元の世界、元の時間へと導いてくれるだろう」
「そうじゃなくて…」
「なら急ぎましょう! エクスカリバー様に会いに」
「なんだソウスケ、急に元気になったな」
「ええ、なんかもう色々とどうでもよくなりました。例え生まれ育った時代が違っても可愛い女の子なら問題なし!」
彼女は可愛いというよりフィアさんのように綺麗が似合う感じだ。物静かでその姿からフィアさんにはない凛とした雰囲気を醸し出している。
こんな機会は普通に高校生活を送っていたら二度とこない。ならまず、こうして出会えたことを喜ぼう。
と開き直ったところで異世界に連れてこられた者同士の面会はおしまい。
「良く分からんが失礼のないように頼むぞ二人共」
***
「そういえばフィアさんは聖剣様のことよく知ってるようですけど、どうしてですか?」
また無駄に長い廊下を歩き、階段を降りながらソウスケは敬語でそう質問する。
そいえばこっちに来て質問してばっかだな。ま、仕方ないんだけどね。黙ってたら何も知らないままだから普通に聞くしかないよね。
「私は聖使者だからな」
「聖使者?」
「聖剣様を使うことが許された人間のことだ。血縁や身分が関係なくなれるからこれを目指している者は少なくない」
「だから聖剣に詳しいんですね」
聖剣の使い手。それは詳しいはずだ。
「詳しいといってもエクスカリバー様だけだ。他の聖剣様がどんな形でどんな力を有しているかなどは知らない」
国の象徴で最終兵器でもある聖剣は機密事項らしく各領主や聖使者が情報漏洩しないようにしているらしい。
なんか核みたいだ。聖なる剣に失礼だと思うけど国(この世界では領地)に大きな影響をもたらしているのが似ている。
「それと、フィアさんの言い方だと聖剣様ってまるで人みたいなんすけど」
「ああ、そう聞こえたか。聖剣様は喋れるからな。つい、そういう風に言い回しをしてしまった」
「え? 聖剣様喋るの?」
なんか想像できない。喋る剣ってシュール過ぎるだろ。でもここは魔法もありのファンタジー世界らしいからな〜。
「喋るというより脳に直接語りかけてくる感じだがな」
と話し合っている間に妙に威圧感のある扉の前にたどり着いた。
ミキさんはずっと何かを言いたそうにしてたけど聖剣がいつ活動不能になるか分からない。
「ここが聖剣様の部屋だ。しつこい様だが失礼がないようにな」
念を押すようにフィアがそう言うがそれは必要なかった。何故なら扉の先には聖剣様であろう黄金の剣を噛み砕くツインテールの少女がいたからだ。
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