第4話 同胞

「あの、聖剣様が英雄だってあのガキ……領主様が言ってたけどあれってどういう意味?」

 聖剣があるのは問題じゃない。ここは異世界なんだからそういったものがあってもおかしくはない。ただ、ソウスケはほとんど説明がないままの状態でこの世界の情報はまだ断片的にしか知らない。

「そのままの意味だ。百三十年前、この世界に悪魔たちが攻め込んで来た時に天から現れその比類なき力で撃退してくださった。それから聖剣様達を崇め、護っている」

「達ってことは複数あるってこと」

 剣に達を使うのはおかしいと思うけど。

 てか、悪魔という新単語が出てきたけどもう慣れてきた。聖剣があるなら悪魔がいても不思議じゃないしな。

「ああ、悪魔を退けた後は各地に散らばった。だから我々は聖剣様を中心として王宮を建て、自然とその周りに家や店が立ち並び今のような街ができた」

 ここからでもその街の様子が伺える。遠くて良くは見えないが平和そうな街だ。

「へえ〜、じゃあ聖剣が国の象徴なんだな」

「いや、今のこの世界には国という概念はない。戦争を引き起こす引き金になりかねんからな。国ではなく領地と呼んでいる。ちなみにここはエクスカリバー領だ」

「あ、それなら俺も聞いたことある」

 残念ながら俺は中二病ではないから聖剣とかには詳しくないがそれなら知っている。逆に知らない奴とかいるのかと聞いて回りたいほど有名なやつだ。

「エクスカリバー様は聖剣の中でも最強のお方。それにとても博識で幾度となく助けられている」

「なるほど、今回もその聖剣様の力を借りようってわけだ。でもなら何でもっと早く手を打たなかったんだ? そんな聖剣様なら断ったりはしないだろ」

 文句というわけではないがそうすれば俺がここに迷い込むこともなかったし、フィア達も対応に追われる必要なんてなかったはずだ。

「そういう訳にもいかない。エクスカリバー達は百三十年前の件で力を使い過ぎた。その後遺症で活動時間が限られている。そしてソウスケが来たこの日こそエクスカリバー様が目覚める時だったのだ」

 急いで事を進めていたのもその為だ。この機会を逃すわけにはいかないらしい。

「それはまたすごい偶然だな」

 タイミングとしてはバッチリだった訳だ。俺としては関係ないけどフィア側としては助かっただろうな。

 もし、エクスカリバーの活動時間外に俺が来たら待たなきゃいけないし。

「偶然だといいのだがな」

「え? 今何か言いました?」

「いや、何でもない。それよりもまずエクスカリバー様に会う前にもう一人異世界から来た者と合流するぞ」

 フィアの言う異世界だということは俺と同じ世界か。女児かな? 女の子かな? 女性かな?

「ここだ」

 とまだ見ぬ相手を想像しているとあっという間に目的地にたどり着いた。

 客用の部屋らしく、謁見の間よりも少し離れたところにあった。フィアが扉を開き露わになった相手の姿に目を疑った。

「彼女の名はミキ。ソウスケと同じで異世界からここに来てしまったようだ。ん? どうしたソウスケ」

「いや、その……世界は同じかもしれないけど時代が違うかも」

 だって俺の目の前にいるポニーテールの少女は袴姿で、手に刀を握っているんだもの。

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