第3話 子供領主
「い、異世界? 確かにあれを見る限り君が言うのは嘘じゃないのは分かるけど」
となると原因はあの穴か。でも仕方ないじゃん。気になったんだもん。岩にコンセントがあったら触っちゃうあれだよ。
それに来てしまったものは仕方ない。ここは男らしく、潔く受け止めよう。
別に赤髪のお姉さんと仲良くなりたいという不純な動機ではない。
「申し遅れた。私はこの領地を守る使命を受けている聖十字騎士団の団長、フィア・ランスロットだ」
「あ、これはどうも」
握手を求められたのでソウスケはそれに応える。異世界でもこちらの世界と共通する部分もあるらしい。これは朗報だ。変な挨拶をされたら俺が反応に困る。抱き着いてくるとかなら大歓迎だけど(異性に限る)。
「でもフィアさん、なんか手慣れた感じですね。普通異世界から誰か来たら驚くだろうに」
他の騎士も全く動揺していなかった。中は人間ではなく機械でも入っているのではないかと思ってしまった。
「実は最近君の様にこの世界に連れて来られる人がいるのだ。それも一人や二人ではない。各地で多くの報告が上がっている。かくいうここも君で二度目だ」
「となると、俺と同じ境遇の人が他にもいるのか」
不謹慎かもしれないがそれは心強い。異世界に来ていたのが俺だけじゃなかったのは不幸中の幸いだ。
「ああ、原因は各地の魔導師が総力を挙げて調べているが何の進展もない。なので次また来たら聖剣様の助力を借りると会議で決めていた」
「魔導師? 聖剣様?」
なんかいきなり異世界感溢れる単語が出てきた。説明もなしにそれを理解するのは成績がオール三の俺には難易度が高すぎる。それにこの対応の早さ、まるで俺が来るのを知っていたかのようだ。もしかして魔導士の仕業か?
「説明をしたいのは山々だがまずはソウスケには領主様に会ってもらう」
「え? もしかしてこれ帰れない流れっすか」
家出している身だけどそれはつまり家出期間が無期限になったと宣告されたようなものなんですけど。
「さっき言っただろ。何の進展もない、と」
***
「よお、お前が今回の被害者なんだってな。ま、運が悪かったと思って諦めてくれや。俺にもこれはどうしようもないんだわ」
「は、はあ……」
案内されて謁見の間という部屋に入ると両脇に大柄の騎士の間に置かれた高価そうな椅子に座った金髪の男の子がふんぞり返って軽い口調で話を始めた。
見た目が小学校高学年なので違和感が半端ではない。
「ミスト様、謝罪はそこまでにして本題に入ってください。聖剣様を待たせる訳にはいきません」
「分かってる分かってる、そう急かすな。さて、ソウスケ……だっけか。お前は今の状況を理解しているか?」
「まあ、ある程度は」
全てではないが異世界に来てしまったのは空にある二つの太陽、双天様によって否が応でも理解した。
「ならいい。これからお前には聖剣様に会わせる。一応この世界を救った英雄だ。無礼のないように頼むぜ」
爪を気にしながら言われても言葉に重みはないがここは大丈夫か?
「では失礼します。さあ、ソウスケ付いて来い」
こうして俺たちはやけに偉そうな(本当に偉い)領主様が居座っている謁見の間を後にした。
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