第7話 クリスマス、朝
「お兄ちゃん、起きて! クリスマスだよ」
ニックは妹、エミーに揺られてハッと目を醒まします。
そこは妹、エミーの部屋でした。
どこまでが夢だったのかはっきりとはわかりませんでした。
「メリー・クリスマス!」
エミーが言うと、
「メリー・クリスマス」
ニックもそう返しました。
「お兄ちゃん、早くプレゼント確認しにいこ?」
ニックは、起きてからずっと握っている左手を見て言いました。
「ああ、先に行ってて」
エミーは返事をして部屋を出ました。
そしてニックは、左手をゆっくりと開きました。
左手には赤いリボンに使われていた長い長い帯がありました。
ニックの家のクリスマスツリーの下は、数個のプレゼントボックスがおかれておりエミーは、マフラーにコートそしてテディベアでした。
ニックは、セーターと手袋でした。
そして、サンタクロースのクリスマスプレゼントは赤い帯です。
エミーは友達に自慢するためにはしゃぎながら慌ただしく出かけニックもクリスマス、やるべきことのために出かけます。
荊の道を抜けて農村に出ます。
農村の小さな公園には、ニックの友達三人が一緒にいました。
「やぁ、カルロ……それにみんなも珍しい」
ニックがカルロに声をかけると、三人は挨拶をしました。
「サンタクロースから小説をもらって、少し読んだら外に出たくなって」
カルロは、笑いました。
「あら、ニック! このブーツ似合うかしら?」
「とても似合うよ」
赤褐色のブーツを見せられてニックは、驚きつつも笑いました。
「サッカーしよう!」
「嫌よ、ブーツが汚れちゃう! そうだ、今度みんなでレンガの街より遠い、鐘の街へ遊びにいきましょう!」
「それいいね! 楽しそう」
カルロも笑って言います。
ニックは笑いながらも、先を急がなくてはならないので友達とここで別れました。
ニックには、行かなくてはならない場所があるのです。
『To.Keyty
ケイティー、本当のことを言うと君の歌を聞きたかった。
ケイティーが歌わなかった理由は、きっと僕にある。
僕が教会の席にいなかったことで悔しくて、そんな気持ちを抱えて讃美歌を歌うわけにはいかない、そう思って君は歌わなかった。
僕が悪かった、ごめん。
でも、僕にだって色んな気持ちがある。
だから今度、僕は君に全部教える。
ずっと待ってる。』
朝起きて、ドアに挟まれていた手紙を見た瞬間は、ケイティーは不思議とも思いませんでした。
ニックを帰らせたあと、ケイティーは今日の夜か明日には何かあると予感していたからです。
その予感は、赤いリボンで括られた手紙になったのです。
そして、ケイティーはレンガの街へと続く農村の出入口の風車の前で手紙の差出人を待っていました。
「やあ、その……こんにちは」
ケイティーは、ハッと気付くとそこにはニックが立っています。
「待ってないじゃん」
ケイティーの言葉にニックは、言い訳もせず苦笑いを浮かべました。
「いいわ。それより、ニックのこと全部教えるって?」
苦笑いが引き、真剣な表情になります。
「あー、ああ、まだ心の準備が」
ケイティーは、ポカンとなりました。
「なによそれ! 手紙で書いたくせに心の準備?」
「待ってる間に準備しようと思ってたから」
ニックはまた苦笑いで目を逸らします。
「まあいいわ……。それなら、クリスマスなんだし私の行きたいとこに付き合って」
ケイティーもニックを真っ直ぐ見つめることはできず、顔を赤くして言いました。
「クリスマスは本来、家族と一緒に過ごすんだけどな」
「んっ?」
ケイティーは、少し睨みます。
「まあ、ケイティーも家族か」
ニックは笑って言います。
「ちょっと、そんなこと言わないで!」
ケイティーは、慌てたように言いました。
二人は、些細な会話をしながらレンガの街へと繰り出しました。
二人のクリスマスは続きます。
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