第3話 その男、健康オタク
ハァハァ……一体どれくらい歩いたのだろうか。いや待て、そんなに経ってないか。腕時計を見る。あ、17分しか経ってなかったわ。まぁいい。そんなことより、一体どれだけ歩けば、そのゴッド関シャイニング先輩の家に着くんだ、まだ17分しか歩いてないけど。
「ほぼニートのドクター竹ちょん、その先輩とやらの家にはまだ着かないのか?」
『ちょ、おま、ほぼニートってなんで言ったの!? まぁそれはいいが、先輩の家はもうボチボチ着くだろう。タバコ屋の角を曲がった茶色いアパートだ』
アパート……? アパート暮らしなのか。あれ、ここ異世界じゃなかったっけ? そもそも、こんなド〇クエの草原みたいなところにタバコ屋なんてあるわけ……あったぁぁぁぁ!! めっちゃ不自然な感じでタバコ屋あるぅぅぅぅ。いろいろおかしだろコレ。RPG世界の景観条例とかに引っ掛からないのかコレ。
『そこだ、そこを曲がるんだイチオ君』
「オーケーわかったぜ、ほぼニートのドク」
『てめぇぇぇぇぇわざと言ってん――ピッ』
お、無線て途中で切ることができるのか。便利だなコレ。
とりあえずタバコ屋の角を曲がると、そこには思ってた以上にボロボロで汚い感じの茶色いアパートが建っていた。どうやらこの建物みたいだ。ざっと見た感じ、玄関前の草はぼうぼうに生えてるし、窓ガラスが割れてる部屋もあるし、たぶん家賃1万2000円とかじゃないだろうか。
『そこの104号室だ。私の名前を出せば、事情はだいたいわかってくれるだろう』
104号室のドアをノックしてみる。一体どんな男なのだろう。なんとなく緊迫した空気が流れている。掌が汗でビショビショになっている。男のオーラが部屋の外まで漏れ出しているのだろうか。あ、違うわ俺人見知りだからだわ。その時、ドアがガチャリと音を立て開いた。そこに立っていたのは、ピッチピチの黒の全身タイツを着た、赤いハチマキの男だった。
「アンタは誰だ?」
男は訝し気にこちらを見ている。無理もない。こんなサラリーマン風な男が戸口に立っていたら、誰だって訪問販売かなんかだと思うだろう。俺だったら「うちセールスお断りなんで」と言って即座にドアを閉めているところだ。
ところがこの男、そんな俺に向かって一応身分を聞いてきた。腹が座っている。なかなかできることじゃない。会って数秒で、既に器のデカさが垣間見える。流石ゴッドと言われるだけはあるぜ。
「俺は機動サラリーマンをやっているイチオってもんだ。ドクター竹ちょんの紹介でここへ来た……」
「あぁあのほぼニートの……。わかった入れ」
よし、通じた。ていうかやっぱりアイツ世間ではニートだと思われてるじゃねえか。俺は部屋の中へ通される。
「で、カネの無心か……?」
違うぅぅぅアイツどんだけニートだと思われてんだよ!!
「いや違うんだ。実は力を貸してほしい。仲間を探しているんだ。破壊神を倒すための」
「破壊神……そうか、ついに奴が、ムシロが降臨したんだな。いつかこんな日が来ると思っていた。いいだろう。力を貸してやる。俺はこの日のために常にバリーズブートキャンプは欠かさなかったからな」
確かに彼の身体は引き締まっていた。ほかにも彼の部屋の中には、ぶら下がり健康器具やアブフレックス、グルコサミンの瓶などが所狭しと置かれていた。俺は通販で買った健康グッズを、ここまでちゃんと使っている男には今まで会ったことがない。やはりこの男……ただ者ではない!
こうしてついに二人は出会ったのであった。機動サラリーマンのイチオ。真の健康オタク、ゴッド関シャイニング先輩。決戦に向け、着々とパズルのピースは揃い始めている。だが、彼らが知らぬところで、新たな厄災は生まれてようとしていた。二人の運命は如何に。
次回『機動サラリーマンICHIO』第四話。
「もう一つの厄災 デビル鈴木現る」
君は生き延びることができるか。
ジャンジャンジャカジャカジャン♪
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