第4話
その日は、2ヵ月近く続いた秩父最終日ということもあり、珍しく夜を外で済ませたが、帰りがけにふと立ち寄った秩父神社で、ばったり妙白と再開した。「まだ凶ばっか引き続けてんの」。前田がおどけて切り出すも、「別に」とどこかよそよそしい妙白。しばらくそんなやり取りが続いたが、「じゃあせっかくだし、一緒にあれやる」と前田が水占いくじの方を指さすと、妙白はうなずいた。人気のない境内で、クルクル巻きの占い紙を逆巻きにしたあと、ゆっくりと水面につける二人。しばらくして、小池に面する平な石の上に紙を並べたが、境内の光では文字が浮かんでいるかどうかも分からない。妙白はスマホを取り出そうとしたが、しゃがんだままの状態だったので、ポケットから思いきり引っ張った際に手を放してしまった。幸い小池は数センチほどの深さだったため、すぐさま前田がすくい上げるも、電源は入らなかった。「車に忘れちゃってさ…」と前田がばつの悪そうに答えると、妙白は嘆息まじりに「じゃしょうがないね」と小池に背を向け、白虎門の方へと歩き出した。
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