第9回 ナターシャとエルフの国~その2・異文化交流編

 あなたのハートに高級回復薬ハイ・ポーション

 やだこれ、癒し系女優みたい! どうも、癒し系代表ナターシャです、僧侶だけに!


 ……何故だか言ってて悲しくなってくるので、早速本題行きましょうか。


 エルフの国レポート・その2ですね。ドキッ☆エルフだらけの水泳大会、ポロリもあるよ! ですね。はい、後半は嘘です。期待した奴は腹筋100回な!


 前回は説明回でしたが、今回は潜入してからのお話です!

 なので、臨場感を味わってもらうためにも、私目線の小説形式で語ってみようかと思います。

 登場人物は私・僧侶ナターシャ(ゆとり)、勇者ユキムラ(バカ)、踊り子リセリア(美人でドS)、魔法使いユリシーズ(百合でドM)、そして美しい純血エルフさんです!



~~エルフの国潜入レポ~~


 魔法で封印されたゲートをくぐり抜けると、そこはガラスのようにキラキラと輝く不思議な樹木でできた街並み、そして行き交う純血エルフたちの姿があった。

 エルフ国東地方の都、チェフルーシル。街並みとエルフたちのあまりの美しさに、私たちはその場で立ち尽くした。

「すご……! 御伽の国みたい!」

 私が思わずそう言うと、勇者のユキムラくんも興奮した様子で口を開いた。

「ヤッバい! なんつーか、アレっすね、エルフの国、まじヤバい!」

「……もうちょい、語彙力ないの?」

「あ、サーセン。アレっす、マジ御伽の国みたいでマジヤバいっすよね!」

 私はあきらめて、ユリシーズとリセリアの方を見た。

 二人とも唖然とし、不思議な形の建物や、羽衣のような衣服をまとい亜麻色の髪をなびかせる純血エルフたちを見つめている。

 言葉が出ないようだが、よく見るとユリシーズの唇がかすかに震えている。

「……………………キ、キ、キキ」

「ユリシー?」


「キ、キキ…………キマシタワァァ」


 ユリシーズはそうつぶやくと、そのまま仰向けにばたりと倒れた。

 見ると、幸せそうな顔で鼻血をひとすじ垂らし、気を失っているではないか。

 正直、ドン引きである。

 こんなやつと一緒に冒険していていいのだろうか。と言うか、こいつを入国させてよかったのだろうか。ロリコン賢者のウィジェット君と風俗大好き商人のアイザックさんは、性犯罪を起こしかねないので、エルフの国には連れてこなかったが、ユリシーも一緒に置いてくるべきではなかったか。

 先が思いやられるなぁ、と思っていると、今度は踊り子のリセリアがため息をついてしゃがみ込んだ。

「はあぁぁぁぁ……」

「どしたの、リセ」

 よもや、あなたも興奮でキマシてるわけじゃないよね? さすがにパーティメンバーのうち二人が見境のない百合だったら、私本気で身の危険を感じて脱退を検討するよ?

「いや、私、自分で言うのもなんだけど、実は自分のことをかなりイケてる方だと思ってたんだけどね……。月とすっぽんもいいとこだね、こりゃ」

 なるほど、純血エルフを目の当たりにして自信を無くしているらしい。

 彼女自身が言う通り、リセリアは相当な美人だ。長く艶やかな髪、小さな顔に大きな瞳と肉感的な唇、そしてグラマラスなスタイルと褐色の肌。街を歩けば、男性だけでなく女性だって振り返るくらいのオーラがある。実際、冒険者たちの中で“美人が多い踊り子職の中でもトップクラス”と噂される有名人だ。

 しかし、そんな彼女でも、目の前を行き交う純血エルフたちには敵わないと感じるらしい。

 私なんかは十人並の容姿だから、純血エルフはもはや別次元の存在に見え、比べることすらおこがましいと思ってしまうが、なまじ美人の自信とプライドがあった分、リセリアはショックが大きいのかもしれない。

「でも、リセだってめっちゃ美人じゃん。エルフとはタイプが違うだけというかさ」

 慰めようと私が声をかけたところで、別の声が割って入った。

「いや~、なんつーか、今までリセリアさん綺麗だと思ってたけど、エルフはよりヤベえっつーか、ぶっちゃけもっと可愛いっすね! 守ってあげたい感がヤバいくらい違いますよね!」

 おい、バカ勇者、空気読めや!!

「っつーわけで、ちょっと俺、声かけてきますね!」

 そう言うと、ユキムラくんは近くを歩くエルフの女の子に駆け寄っていってしまった。

「あ! ちょっと、バカ勇者!? ユリシー、リセ、あいつが事案起こす前に捕まえなきゃ!」

 しかし、振り返るとユリシーは仰向けで倒れたまま、リセはしゃがみ込んで膝を抱えたまま。

「えへへ……ハーレム、……ハーレムにキマシタワー……」

「どうせ私は可愛いっつっても人間一般人レベルでの話だしー、どうせ守ってあげたい感ないしー、踊り子って所詮ビッチぽくってエルフみたいな清楚系には勝てないしー」

「めんどくせえな、おまえら!!」

 私は使い物にならない二人を置いて、ひとまずユキムラくんを追いかけた。

 幸い、すぐ近くの美人エルフ(と言ってもどこもかしこも美人エルフなのだが)のところだったので、すぐに追い付いた。


「ねえねえ、エルフのおねーさん、ちょっとお時間いっすか?」

「え……はい、何でしょう」

「俺と一緒にさ、冒険の旅に出ない? 外の世界見て回ろうよ!

 あ~、いい匂いするな~、シャンプー何使ってんの? サラッサラでマジやばくない、髪? これヤッバいわーマジ人間界にはいないわーこんな美人。最高だわー」

「え? 人間族の男性!? あの……ちょっと……やめ」

「え、いいじゃん。そんな怖がらなくてもさー、異文化交流、異文化交流。

 ホラ、最近起こりそうだった戦争が解決したでしょ? あれさ、俺のおかげなんだよね。だからさ、君が今こうして平和にしてるのも俺のおかげ? みたいな? ヤバくない?」

「あの、警察……呼びますよ?」


「はい!! ストォォォォォォップ!!!!!!」


 錫杖メイスで思いきり勇者バカの頭を殴りつけた。

 会心の一撃でバカを黙らせると、私は土下座する勢いで純血エルフさんに頭を下げた。

「ほんっとうにご迷惑をおかけしてすみませんでした!! この子バカなんです! どうか、国際問題に発展しないようにお願いします!!」

「え? あ、あなたも人間族の方ですか?」

「はい、人間族を代表して謝罪します! 大変申し訳なく思っております! おかみの耳に入るとうっかり種族間問題に発展しかねないので、今日のところは私に免じてっ……! どうかっ……どうかっ……!」

 そう言いながら、私はユキムラくんの頭を地面にめりこませ踏みつけ土下座させた。

「い、いえ……そこまでしていただかなくても!」

「なんならコイツの指、詰めさせますんで!」

「だから、そこまでしていただかなくてもー!」

 それからしばらく謝り倒し、エルフのお姉さんには許してもらった。その流れで、私たちが人間族の冒険者であること、特例で国に招かれたことなどを話すと、今度は彼女の方が興味を持ってくれた。

「そうだったんですね。私、人間族の方とお話するの、初めてです」

「東エルフ族のみなさんは、ほとんど国から出られないんですよね? いきなりうちの勇者バカが失礼をしてしまいましたし、人間に悪いイメージを持たれてしまったらすみません」

「ふふ、最初はびっくりしましたけど、色々お話をうかがってみたいです。エルフの中には人間族を避ける者もいますけど、私は昔から会ってみたいな、と思っていたので」

 そう言って笑う彼女は、女の私でもクラッとしてしまいそうな可憐さだった。ユリシーの気持ちが分かる……とは言わないが、確かにただ美しいだけではなく、人間には持ちえない不思議な魅力があるような気がした。

「申し遅れました。私、東エルフ族のカウニスと申します」

 そう言ってぺこりと頭を下げる仕草まで、花が咲くような可憐さだ。

「あ、こちらこそ。人間族、僧侶のナターシャです」

「ナターシャさん……。うふふ、人間族の言語も色々あるのだと思いますが、ちょっと女性みたいなお名前ですね」

「へ?」

「え?」

 私とエルフのカウニスさんは目を見合わせた。

「いや……、私、女なんですが……」

「えっ!? ごめんなさい! 失礼しました! 凛々しいお顔立ちをされていらっしゃいましたし、私たちよりも骨格もしっかりされていたので……、あの、その、それに胸も……」

 美しいカウニスさんの視線が私の法衣ローブで隠れた平らな部分に移った。

 一方、カウニスさんはめちゃくちゃ華奢なのに、出るべきところはしっかり主張していて、見回すとどうやら純血エルフはみんなそういうフィギュアみたいな体型をしているようだった。


 おい、神。この種族に二物も三物も与えすぎじゃね?


 私は心の中で、僧侶らしく神に文句を垂れたのだった。


~~~~~



 まだまだ続くよ、エルフの国編!

 それではまた来週! ナターシャでした!

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