第5回 ナターシャが語る勇者パーティ分裂の危機~その2
あなたのハートに攻撃魔法! って私、僧侶でした! いやあうっかりうっかり!
どうも! 先週「砂漠の国の風俗事件」について書いてから、アイザック商会の株が大暴落と聞いております。ペン1本で世界経済に影響を与える女・ナターシャです。経済誌のお仕事もお待ちしてますよ!
一緒に世界を救った仲間たちの醜聞を飯の種に変えることに、いささか遺憾を覚えなくもない今日この頃。みなさまいかがお過ごしでしょうか?
私は喉に刺さった小骨が取れたような、晴れやかな毎日を過ごしております。いやー、あの人格破綻者と特殊性癖持ちの集まりが世界の英雄として讃えられていることに、ずっと違和感がありましたからね!
世間に真実を知ってもらえてよかったよかった! めでたしめでたし!
やっぱり正直が一番ですよね。
聖職者ナターシャと一緒にあなたもアーメン☆ 懺悔室で待ってるね♪
では、前回に続いてここからはSS形式でお送りしましょう。
「砂漠の国の風俗事件」、後編です!
~~~~~~~~~~
【あらすじ】
パーティの有り金を全部使って風俗に行っていたバカ3人(正座)と、それを糾弾する4人の女(1名は戦闘不能の仮死状態)。
リセリア(踊り子)
「今までの話からすると――、君たち、明らかに初めから風俗行くつもりで出かけてるよね? 飲みに行くだけなら10万イェーン全部持ち出す必要ないと思うんだけど?」
ウィジェット(賢者・賢者タイムなう)
「……パ、パパパパパーティのお金に関しては僕じゃなく、やはり商人のアイザックさんが詳しいかと……」
ユリシーズ(魔法使い)
「自分の魔法で黙らせたくせに……」
ナターシャ(僧侶)
「この期に及んで責任転嫁とか、清々しいくらいのクズですね」
リセリア(ドS)
「
ユキムラ(勇者・ヘタレ)
「え!? お、俺は実はああいう店は初めてだったんだけど、ウィジェットとアイザックが色々教えてくれて、って言うか、いや、実際プレイ面で手取り足取り教えてくれたのは年上の綺麗なお姉さんだったんだけど」
ナターシャ(いや、ぶっちゃけ気になるけども)
「プレイ内容は聞いてないです」
ユキムラ(バカ勇者)
「あ、ごめん! えっと、むっちゃ気持ち良かったッス!」
ナターシャ(わりと中身おっさんです)
「いや、感想も聞いてないから。どうせ、“おお、勇者よ! イッてしまうとは情けない!”とか言われたんでしょ?」
ユキムラ(バカ)
「言われたけど、店のお姉さんはもっと色っぽくて可愛かったッスね!」
ナターシャ(僧侶ですが攻撃魔法もいけます)
「ねぇ、この馬鹿、僧侶の私が持ち得る最大火力で焼き尽くしていいかな?」
ユリシーズ(炎系攻撃魔法が得意な魔法使いです)
「気持ちは分かるけど落ち着いて。いざとなったら私が焼いてあげるから。
――とにかく、計画したのはウィジェット君とアイザックさんで、ユキムラ君もそれに乗っかったってわけだよね」
ユキムラ(本当、こういう奴なんですよ)
「そ、そういうこと! それでついでに店のお姉さんにも乗っかった、なんつって、ね……へへ」
ユリシーズ(決断は早いタイプ)
「よし、焼こうか」
ナターシャ(中まで火を通したい派)
「ウェルダンでお願い」
ユキムラ(一応、勇者です)
「サーセンしたぁっ!!!!!!!」
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記録魔法の音声では、この後男性メンバーを的にアサシンダガーでダーツをしたくだりと、ユリシーの魔法でこんがり焼いたくだりが入っているんですが、その辺はほぼ阿鼻叫喚なので割愛しますね。
最終的には男性陣の装備品を売り払って、そのお金でセスを教会で甦らせ、女性陣だけ宿屋に泊まりました。彼らにはその後1週間、全裸で野営してもらいました。
宿屋では「さすがにもうあいつらとは旅していられない、パーティ解散する?」という話まで出たのですが、結局許すことになりました。
理由としては、復活したセスが彼らを許したことが大きいですね。
セスは元々騎士団出身で真面目なんですけど、ただのチンピラ冒険者だったユキムラくんを見出して勇者に育てた人なんです。言うなれば、師匠と弟子、姉と弟みたいな関係で。
改めて男性陣が私たちに土下座しに来た時にですね、セスがユキムラくんと小一時間ほど話したんですよ。
その後にセスが、「今回は許すことにします。でも、次は無いですよ」って言って。
今回最も被害をこうむったセスが許すなら、私たちも許そう、と私とリセリアちゃんとユリシーも納得したんです。あと、ダーツとこんがりでだいぶ溜飲が下がっていたというものあります。
一応付け加えておくと、風俗行ったこと自体はそこまで怒ってないというか、一番の問題ではなかったんですよね。
私をはじめ、他の女性メンバーもみんな下ネタ耐性あるし、「ま、しゃーないよねー」くらいなもんです。せいぜいが「うっわ……あいつらのさわったアイテム使いたくねーな」って思うくらいで。実際、誰一人清純派ではなかったですからね。
問題はパーティのお金を勝手に使い込んで行ったことですよね。
そこに一番引いたというか、ないわー、ってなりましたよね。
結婚したご夫婦でも、旦那さんがキャバクラや風俗に行くの、めっちゃ嫌だけど、まあ自分のお小遣いの範囲で上手く隠れて遊んでくれたらギリ許そう……みたいなところあるじゃないですか。でも、生活費を使い込んでまで行かれたらキレますよね。
しかもその結果セスが戦闘不能になったので、私たちの怒りもピークに達した、と。
ただ、セスはどうしてユキムラくんたちを許したのかな? というのは気になっていたので、後でこっそり聞いたんです。
今や時効というか、こんだけぶっちゃけておいてそこを隠す必要もないと思うので、今回のオチとしてその時の会話を載せておきますね。
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ナターシャ(僧侶)
「あの時、ユキムラ君と何話してたの?」
セス(女戦士)
「私、あの子の保護者的な気持ちもあるので、色々把握しておきたいなと思いまして……。それで色々聞いたんです。なんていうか、赤裸々に言ってしまうとですね……プレイ内容を根掘り葉掘り」
ナターシャ
「プレイ内容を根掘り葉掘り」
セス
「それで、どうやら結局卒業できてないらしんですよ。緊張のあまり、大事な時に刃こぼれしたみたいで」
ナターシャ
「刃こぼれ」
セス
「その辺聞いてるとなんだか可愛く思えてきちゃったんです。それで、今回は許してあげようかな、と」
ナターシャ
「……前から聞きたかったというか、気になってたんだけど、セスは……ユキムラくんのこと好きなの?」
セス
「いいえ。まったくそういう訳ではないです。……ただ、萌えとしてはあの子、点数高くて」
ナターシャ
「萌えとしては」
セス
「はい。私、昔から年下の、それも10代なかばから後半の男の子に激しく興奮」
ナターシャ
「オーケー。その辺にしておこうか」
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というわけで「砂漠の国の風俗事件」、バカ勇者とロリ賢者と豚商人と、ドSの踊り子と百合でMっぽい魔法使いと、ショタ女戦士に囲まれて世界を救った僧侶ナターシャがお送りしました。
ぶっちゃけ、冒険中色々気苦労絶えなかったわ!
じゃあ、また来週!
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