第20話初クエスト受注

 お酒の匂いが充満する冒険者ギルドの中不安だったギルド登録も終わり、オレたち四人は人間として冒険者になることができた。

 これをきっかけに人間と魔族が共存できる架け橋になればいいと思う。


「どうする? クエストとかやってみるか?」


「そうだなー…………。」


 ミラが迷って顎に手を当てて考えているとリーズはそっとミラに耳打ちする。

 ミラは一瞬諦めたような顔をしたがすぐに表情が変わる。


「どうした?」


「なっなんでもない」


 ミラは一瞬慌て目を泳がせる、リーズがミラと耳打ちで相談? オレに言えないことってことだよな、ん? まてよ………そういえばリーズが訓練がどうのって話はどうなったのだろう。


 もしかして!!!


「リクト様には早く自分のステイタスに慣れていただきませんと。フフフ」


 リーズの表情が一瞬悪魔のようなものに幻視する、ミラもよく無茶をするがあのミラが心配する程の訓練だよな………ヤバイ! オレ死ぬかも!!!


「徐々に、でお願いします!」


「いえいえ、私が教えるからには短期間で強くなれますからご安心ください」


 話が通じねぇー! 逃げ………られるわけないか。

 冒険者ランクにどれだけ差があるのかわからないが自分より2つもランクが上のリーズから逃げられる程甘くはないだろう。

 それに初めて会った時のリーズの早さからすると逃げられるとは思えない………潔く死ぬか。


「それでは、クエストを選びましょうか。

 どのランクのクエストにしますか?」


「そうだなーじゃーアイリスと同じランクがいいんじゃないか?あんまり強いとアイリスが危ないし」


「却下です。アイリスさんはミラ様が守りながら指導することになってますから。Bクラスのクエストにしますか」


 リーズはオレに何も言わせない雰囲気で言っていく、決まってんじゃねぇーかよ! 最初から聞くなよ! 期待しちゃったよ! 訓練を受けなくて済むかとな!! ………はぁ~、終わったかも。


「じゃーそうしますか」


 もはや訓練は避けられない運命なのかもしれないな。

 まぁー思ったより辛くないかもしれないし頑張るか!………ポジティブに考えないとキツい。


「ではリクト様、どれになさいますか?

 アイアンゴーレムの討伐×3

 ロックバードの捕獲×10

 グレムガンシープの討伐×5

 サンダーウルフの調教ですね」


 ミラはBランクと書かれた紙を数枚とり1枚1枚読み上げる。

 全部知らない魔物だから分からないんだが! なんか名前からして強そうだな。


「分からないから任せるよ」


「左様ですかでは私が選ばせて頂きますね」


 リーズはぶつぶつと言いながら紙を1枚1枚しっかりと見ているどれになるか楽しみだな。

 オレの能力でコピー出来るならコピーしておいたいし。


「では最初にアイアンゴーレムにしましょうか」


「それは………キツくないか?」


「ミラ様………リクトさんのためです!」


 何やらミラとリーズはアイアンゴーレムのことを知っているのみたいだな大丈夫だろうか、まぁーどうせ何を言おうが結果は変わらないだろうけど。


「じゃーそれでいいんじゃないかな」


「なんじゃ? お主。えらく素直じゃな」


「あぁー遅かれ早かれこうなるなら早い方がいいだろう?」


 そう言ったが実際はリーズの雰囲気は何も言わせない雰囲気だからだ、まぁー自分で自分の言い訳を言わないとやってられないな

 自分を騙し騙しやらないと………。


「そうですね、ではクエストを受けてきますから待っててくださいね」


 リーズはアイアンゴーレムのクエストの受注書を持って受付まで走って行く、オレたちはリーズを見送ると一旦ギルドから出ようとする。

 アイリスがそろそろ限界のようだ顔が真っ青になってフラフラしている。


「大丈夫かアイリス?」


「だ…大丈夫で………す」


 声があからさまに大丈夫ではなかった、声は震え、小さな体は項垂れ必死に鼻を押さえている。


「おい! お前ら新入りかい? オレたちはCランク冒険者のバースだ。

 お前らクエストは受けたか? なんならオレたちが手伝ってやってもいいんだぜ。もちろん女共は可愛がらせて貰うがな」


 バースと名乗る冒険者はミラとアイリスを汚ならしい目で見ている、オレは激しい怒りに囚われそうになるが胸につけていたペンダントによって怒りは沈静化していく。


「失せろ。目障りだ」


「なんだと! このガキ!! 下手にでてりゃ調子のんじゃねぇーぞ」


 ミラは見たこともないような恐ろしい雰囲気を冒険者達に向けるが当の冒険者はミラの力量に気付いていないのだろう逆に怒っている、見るからにミラの周りに魔力がミラの周りを漂い始める。


「もう一度だけ言ってやる。消えろ」


 ミラは我慢の限界と言わんばかりに小さな拳を握る、いっけんすると可愛いがその拳には大量の魔力が込められていく。


「もう我慢の限界だ」


 バースと言う冒険者は腰に装備していたショートソードを抜きミラに斬りかかる。


「リーズ」


 ミラはリーズの名前だけ呼びショートソードを無視し後ろへ向く

 斬りかかった剣筋はギリギリまで迫りミラにあたる寸前リーズの刀に阻まれる。


「このゲスの処分しましょうか? ミラ様」


「うむ、任せる」


「ふ…ふざけんじゃねぇー、一回止められたからって調子にのんじゃねぇー」


 バースは何度もリーズに斬りかかるがリーズ簡単に避けていき、いなす、バースのすべての攻撃はリーズによって無力化される。

 リーズの剣技を見るとバースがやっていることは振る回すだけの幼稚な遊びにしか見えない。


「くそ、くそ、くそ! くそぉーーー!!」


「もう終わりです。あなたの実力は見切りました」


 リーズはそういうとバースの剣をかわしながら近寄るそれはとても自然で無駄がなく綺麗なものだった、リーズは一気に最近距離まで近付きバースの腹を殴る。

 バースの意識は1発で意識が刈り取られる、バースはギルドの床に崩れ落ちる。


「では、ミラ様を不快にさせた罪、万死に値する

 死ね」


 リーズの声はどこまでも深く暗く、感情が読み取れない。


「やめろ、殺すな! せっかく無犯罪なのにわざわざそんなカス殺す価値すらねぇーよ」


「ぐっ!そ…そうですね」


 リーズはさっきまで刺そうとしていた剣を鞘に納め忌々しげにバースをみるのであった。


「こいつは無視して早くクエストに行こうぜ」


「そうじゃな。リーズ。アイアンゴーレムは何処に居るかかいてあるかの?」


 ミラは既にバースのことを見ておらず早々とギルド外へと歩き出していた


「す……すいません、リクトさん寄りかかっていいですか?」


「あぁーごめんなこんなところに連れてきて」


 アイリスも限界を超えて自分で立つことも出来ないほどに疲弊している。

 早く外に出してあげないと。


「フロックス荒野のダンジョン近くに生息してるそうです」


「では行くぞ」


 オレたち四人はギルドの外へと向かい歩く、先程のバースのような奴も居ずそのままギルドの外へと向かえた。

 まぁーバースがあれだけ見事にやられたんだリーズにケンカを売ろうとは思わんだろう、オレたち四人はギルドの外へ難なく出ることができた。


「大丈夫か? アイリス」


「は…はい。大丈夫で……す」


 アイリスの顔はまだ青ざめており目は虚ろになっている、だが先程よりは良くはなっていることは間違いないだろう。

 アイリスは自分で立つことができていた。


「ではアイリスの体調が治り次第向かうとするか」


「ここからですとフロックス荒野まで3日はかかりますよ」


 3日だって!!? それはちょっときついな。

 オレは驚いてしまうがミラも同様に驚いていた。


「じゃー転移するしかないの」


 オレはミラの言葉を聞いて安心した、3日も歩き続けなんて考えるだけでぞっとする。


「分かりました。では裏道へ行きましょうか」


「そうじゃな」


 人が一杯いるところでいきなり転移なんて行ったら騒ぎになってしまう。

 オレはアイリスに肩を貸しつつ裏道へと向かう、数分するとアイリスの体調も戻り元気になる。


「もう大丈夫か? アイリス」


「はい!」


 アイリスの返事を聞くとミラは転移の準備を始めていく、次第にミラの体は光に包まれ。

 光のドームはオレたち3人も包み込んでいく、光のドームがひび割れ崩れ去るといた場所は限りなく広く風が爽やかに吹く場所だった。

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