第21話魔力循環
土埃巻き上げ吹く風が吹く荒野所々に草は生えているのがいっそう惨めに見えた。
「アイアンゴーレムは何処にいるんだ?」
「フロックス迷宮の入り口近くに生息していると書いてありますね」
うーん迷宮か………正直入りたくはない、もうでっかい蜘蛛とかガチムチ牛とか豚人間には出会いたくないし見たくもない。
もしかしたら、ダンジョンによっている魔物は違うかもしれないけど………魔物自体に遭遇したくない。
「入り口の近くに行くだけだよな?」
「えぇ……そうですよ。ですけど、魔物に遭遇しないのならダンジョンに入る可能性はありますね」
一応、確認を取っておかないと心配で仕方ない。
ってか、ダンジョンに入る可能性があるのかよ!………帰ろうかな。
帰らせてくれるわけがないけど。
リーズの表情はなぜそんなことを聞いているのだろうと疑問を感じてる表情になっている。
「じゃー早くアイアンゴーレム倒しちゃおうぜ」
「そうですね! 私じゃ力不足ですけどサポート頑張ります。」
アイリスは両手を上下に動かし張り切っている、その行動の結果見た目に不釣り合いな大きな胸が揺れてしまう………。
それをリーズとミラは忌々しげに見つめている、二人とも自己主張が慎ましいからな。
アイリスはなぜ睨まれているのか理解していないのが、またさらに睨まれる原因になっている。
「あの? なんでしょか?」
「ふん! なんでもないわ」
ミラはアイリスから視線をそらし心配そうにオレの方を見る。
「お主は気にしないじゃろ?」
やべぇーなんかスゲー質問されちゃった、どう答えるべきだろう? 間違った答えを言っちゃうと後々遺恨が残りそうだな。
ここは貧乳の方がいいと言うか、または貧乳も好きだとフォローすべきか。う~ん……どうしよう、ミラの表情は次第に険しくなりオレを焦らせた。
「落ち着けミラ。オレは好きになったら関係ないと思うぞ。大きいとか小さいとか…な」
「そ…そうか」
ミラは下を向き頬を赤くさせる、久しぶりに見せたミラの恥ずかしそうなミラの表情にドキッとしてしまった。
見た目が年下にしか見えないが実際はかなり年上だし、だがミラは長く生きている割には男慣れしていない。
「んっん~、ではアイアンゴーレムを探しましょうか」
オレとミラの雰囲気を見て助け船を出してくれるリーズにはマジ感謝だな。
アイリスは何を言っているのか分かっていないのだろう、不思議そうな表情をしている。
「そ、そうじゃな。では探すとするかの」
「そ、そうだな」
オレたち四人は動きだした、どこへ向かえばいいのか分かっていないから適当に進んでいるのだろう右へ行ったと思えば左へ行き完全に迷っている。
「どうした? ミラ」
「どこにフロックス迷宮があるのか忘れて」
忘れるってどうなんだ? まぁでも何年も生きていたら仕方ないか。
「マジかよ! リーズも覚えてないのか?」
「すいませんリクト様、私は元々知らないのです。ここら辺の出身ではないので」
リーズは申し訳なさそうに頭を下げる、ヤバイ二人とも知らないとなると本当に会えるまで歩き続けるかもしれない。
そう思うとゾッとする、ここは最後の望みに託すしかないか。
「じゃぁーアイリス、アイアンゴーレムの匂いが分かるか?」
「す、すいません。魔獣の匂いを知らないと何とも。それに先程のお酒の匂いであまり使い物にはなりませんし」
これでミラ、リーズ、アイリスが魔獣の場所を知らないことが確定した、はぁーこれは時間がかかるかもな。
「しょうがない。探すか」
「それがいいでしょう。ではリクト様はステイタスを全力で使い私たちと同じスピードで動いてください」
リーズは顎に手を当て斜め上を見て言う、これが訓練の内容なのだろう。
だが全力でステイタスを使ってスピードを遅くする? 本来ステイタスを全力で使うと凄まじく速く動くために使うものだろう? それを逆? 出来ることなのか。
「それって出来ること?」
「はい。実は私もミラ様も常にやっています。
何かあったときにすぐに動き出せるようにしないといけないので、一瞬で全力を出すと筋肉組織が壊れますので。
そうですね、簡単に言いますと爆発寸前の火山を思い浮かべてください。
噴火する直前を意識し保つことが出来れば完璧です
この技術を使う利点は己のステイタスを完璧にコントロールする力と臨機応変にステイタスを全力で使えることになります」
スッゲー難しいこと言っているのに凄く分かりやすいな、簡単に説明してくれるし、やる利点を教えてくれるし。
ミラがリーズはヤバイみたいな雰囲気だったから心配したけどかなりいい先生みたいだ。
「まずはやってみましょうか」
「分かった」
オレは今まで使わないようにしていたステイタスを全力で使うように体に力を込める。
「そうそう。いいですよ、それをキープしたまま歩いて下さい」
オレは集中して返事もせず自分の力加減をコントロールすることで精一杯だった、肩辺りの筋肉が痙攣してきた気がするが大丈夫だろう。
「頑張れ!」
「頑張ってください」
ミラとアイリスの応援の声が聞こえるが反応することは出来ない程集中しないと体が壊れそうだ、肩につづきいろいろなところが痙攣を始める。
次第に体に痛みが大きくなり耐えられない程に変わる、集中力が切れてしまい膝から崩れ落ちる。
「どうした? 何が起きた?」
「どういうことです? なぜステイタスを使うのに魔力を循環させる必要があるのです?」
魔力? なんのことだ? オレはステイタスを全力で使おうとしただけなんだが
「身体中が痛くなってな」
「痛く?………。もしかして魔力循環が出来ていないのでは?」
「そうかもしれないのじゃ。元々リクトはあっちの人間じゃし。わからんのも無理はないじゃろう」
魔力循環? なんだそれ、めっちゃ重要そうじゃないか!なぜもっと早く教えてくれない!!………リーズとミラは二人で話し合っている。
アイリスはオレが膝から崩れ落ちたから支えになろうと必死になっていた。
アイリスは優しいな………お前だけだよ心配してくれるのは。
オレは一応痛みがある部分に回復魔法を使っておく。
「リクト、確かお主魔法が使えたはずじゃろ?
使ってみてくれないか?」
「あ、あぁ。分かった………ファイアーボール」
オレは魔法名を唱えると野球ボールくらいのサイズの火の玉が放物線を描くように飛んでいく、ミラとリーズはじっくりとオレを見ている。
見られると少し恥ずかしいな、小さいし。
「やはり魔力の循環が雑なようじゃな。魔法に込める魔力が多すぎる」
「多い? どういうことなんだ?」
使っている魔力はファイアーボールは最低限の魔力しか使っていないはずだ、オレは1人で立ち上がりもう一度魔法を使ってみる。
「ファイアーボール!」
先程よりはさらに込める魔力を減らし威力もサイズも小さくなり飛んでいく、野球ボールくらいの大きさからゴルフボールくらいの大きさになっている。
「その魔法には本来の手順で使えるようになったのですか?」
「い、いいや。オレの魔眼と上位能力で覚えたものだけど……。」
オレはリーズに責められるような口調で言われてしまい口調がおかしくなってしまった。
リーズはオレの言葉を聞くと納得したように頷き顎に手を当てて考えている。
本来の手順? オレのはしっかりと理解して能力をコピーしたんだがな。
「お主の魔法は魔力を集結させ垂れ流しにしてるだけだぞ。
ほれ、こーやってやるんだ。
まずは魔力を手から放出し魔力を操りその場で待機させる。
次に放出した魔力を練り属性を持たせる
私の場合は闇と雷、爆炎、水………くらいだ。
あとは魔法名を唱えてもいいし、唱えなくてもよい。
まぁー最初は魔力を安定させるために魔法名を言った方がいいかもしれん」
ミラは丁寧に実演しながら説明してくれた、属性を持たせる説明をするときは凄まじかった。
ミラの手から闇の玉、雷の玉いろいろと変わる光景は目を奪われた。
「お見事です。ミラ様
私は1つの属性しか使えないので羨ましいです」
リーズはミラを尊敬の目で見ている、複数の属性を使うとはそんなにそんなにすごいことなのだろうか。
リーズでさえ1つの属性しか使えないのだからかなりすごいことなんだろう。………たぶん
「じゃーやって見るからダメなところがあれば教えてくれ」
オレは今までとは違うやり方で魔力を集める、体全体から少しずつ魔力を集める。
今までは漠然とした意識でしか魔力を集めていなかった、魔力をしっかりと意識し操り手から放出しその場で待機させるて置く。
よし! ここまでは大丈夫だ。
「頑張ってください! リクトさん」
次は魔力を練る……らしいがどうやるのだろうか。
属性を持たせるってことだからこの魔力を炎に変換すればいいんだろうけど、どうしたらいいんだ?
「こ…こからどう…したら……いいんだ?」
オレは留めておいている魔力がなくならないように集中しながら、集中してる最中、汗が額を流れるのが分かる。
「私は最初からできてしまったから分からん」
「私は少し変わっていますけど風を想像しました。
風は時に背中おし、時に猛威を振るい災害として暴れ、爽やかに吹き抜けるような風
という具合に想像すると魔力が風に変わります」
ミラは教えるのが下手だがリーズは教えるのが上手いから助かるよ、マジで。
オレは目を閉じ炎をイメージする……激しく燃える炎、時に人を温めそっと燃える炎、何物をも己の業火で燃やし尽くす荒々しい炎………手に温かい温度を感じ目を開けると手には小さな炎がゆらゆらと揺らめいていた。
よっしゃーできたぁーーー、つか全然魔力を使った感覚がない! それに小さな炎に込められている熱量は前の数倍はある。
「これで魔力の循環はまぁ~いいでしょう。では先程のことをやってみましょう」
先程のこと? あーステイタスを全力で使ってゆっくり動くってやつか。
さっきとは違い魔力の使い方を分かったからさっきよりはうまくいくはずだ。
オレは魔法がうまくいきテンションが上がる。
「よし! やってみるか!!!」
オレはもう一度ステイタスを使うイメージをする、体は常に全力で動かすが決して早く動かない。
オレは一歩ずつ歩いていく、いつでも最高スピードが出せるようにしておく、なかなか難しかったが何とか出来る。
あとはこの、感覚をクセにすれば…。
「出来てますね。ミラ様」
「そうじゃな。覚えが早くて助かるの」
「すごいです。リクトさん」
よかったこれで今日の訓練は終わりだ、最初はアイアンゴーレムを探すはずだったがなぜかオレの訓練タイムに変わっていたし。
いつの間にか夕方になっており今からアイアンゴーレムを探すとなるといろいろと面倒らしい。
「ありがとう、みんな」
そのまま四人はミラの亜空間から出した布にくるまりその場で寝た。
オレは訓練の疲れも残っていたのか体は倦怠感が抜けず眠りに落ちるまでにかかるまで時間を必要とはしなかった。
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