第2話コンプレックス女子大生

今年も、綺麗な花吹雪。

私は、満開の桜より、散り際の夜の花吹雪が好き。

一瞬に最高の美しさを凝縮しているみたいだから。

潔いよね、私もこうありたい。

夜の上野公園のお花見宴会の人をよそめに、ひとり、桜の散り際を満喫している。

青森県八戸市から上京して、女子大生3年目の春。

東京での一人暮らしにも慣れた。

上京当時は、訛りや田舎臭さを出すまいと、無口になったり、毎日の洋服選びに時間をかけたりと、周りの目を気にする毎日だった。

でも、大学で地方出身者の友達が出来たり、クリーニング店の受付のアルバイトをして、お客さんと「八戸市」の話をする機会が少しずつ増えていく中で、私の中での「田舎コンプレックス」は薄らいでいった。

けれど、相変わらず、これと言って特徴のない自分への「コンプレックス」は持ち続けている。

 心の中で、「お花見」と「コンプレックス」の行き来をしていたら、足元に何かが当たった。

「ん?免許証?」

黒のカードケースを開いて見たら、車の免許証だった。

落とした人、近くにいるかな?困っているだろうなあ?どうする?交番?

幸い、近くに交番があるから行ってみたら、「巡回中」の札。

んー、このまま待つ?でも、いつ戻ってくるかわからないよね。

住所を見ると、ここからすぐの有名な高級マンション。管理人さんに渡せば大丈夫よね、きっと。

 生真面目な私のおかしな親切心からの行動が、私の人生を大きく変えることになるなんて、その時は、全く思いもしなかった。

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