第21話ガレス(2)
一気に駆け巡った、突然の奇襲に敵の兵はうろたえているようだ。
ここぞ、っという所で私は大魔法を繰り出した。
私は右手を天にかざして叫んだ。
「エターナル・フォース・ブリザード!」
轟音と共に吹雪と雷が混じり、敵兵は吹き飛ばされるか雷にうたれた。
阿鼻叫喚とはこの事であろうか?
血と鉄の匂い埃っぽい空気が辺りを包む。
★
私は目的の村にたどり着いた、戦場とは違ってとても静かだ。
馬上でその村を歩いていると樹の下に栗色の髪と同じ瞳も栗色の若い女性が座っている。
膝には負傷した敵の兵がいる。
やはりこの村は敵と内通していたのか……。
私は少し落ち着いてその女性に敬礼をした。
後ろの髪を三つ編みにし、肩にたらしている。
敵兵の傷を包帯で巻いている。
「そいつはここの国の敵だぞ」
女性は包帯を巻く手を止めなかった。
「女、言うことを聞かないと斬るぞ」
女性はいきなりガバッと私の腕を掴んだ。
「腕、怪我してますね」
透き通るような声だ。
言われるまで分からなかったが、私の鎧の隙間から血が流れていた。
女性は別の包帯を救急箱から取り出す。
「お馬さんから降りて下さい、治療します」
私は困惑した表情を見せたが女性は地面を指差して繰り返した。
「お馬さんから降りて」
私はそのまま女性を見ていたが彼女は語気を強くして言った。
「座って!」
はいっと思わず返事をした私は転がるように馬から降りると、その女性に手当てをしてもらった。
私の兵も怪我してた者は彼女によって手当てされた。
「敵も味方も治すんだな」
女性はえへへと頬を赤らめた。
その姿を見て、私は素直にその女性が可愛いと思った。
「怪我してる人がいたら助ける、当然ですよ」
怪我をしてる人を助けるのは当然……。
私はその言葉に胸を痛めた。
私はそれとは反対の事をしてきた、人に傷をつけ、さらには殺していた。いくら戦争でもだ。
「私はこの戦い、いやすべての戦争で人を傷つけ、命も奪ってきたこの剣をもう血で汚したくない」
それを聞いた女性は、私の手を握った。
おーっと兵士が歓声をあげた。
「剣を埋めましょう」
え? 剣を埋める?
その瞬間に私を殺すのか?
やはりこの村の住人は敵なのか?
すると村の入り口が騒がしくなった。
「おー、ガレス将軍こんな所でおなごといちゃついて王の命令を無視しておるのぅ」
リアーネだった。後ろには王の玉座の横にいた騎士が二人。
鎧をきっちり取り付けている。
リアーネは笑いをこらえられないような表情をしていた。
私の弱みを見つけたのが嬉しいのであろう。
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