第20話ガレス(1)

 ジャラミス城。

 大きな四つの柱がこの部屋を支えている。

 金色に凝った彫刻をあしらった玉座に座っているのはガイラス王。

 私は彼の前にひざまづいている。

 少し古びた鎧を身にまとい。

 兜は、はずして右腕に抱えている。

 ガイラス王の左右には、新品の鎧で完全武装した騎士。

 左の騎士の前に小さな女の子がいた、(見た目は12歳ぐらいだ)

 ただの女の子ではないと薄々気付いてはいた、現に今も王の横に立って私を見下している。

 ツインテールで何故かブルーベリーの匂いがした。

 ガイラス王は闇に染められている、私はそう思っている、その理由にツインテールの少女が関係しているとにらんでいる。

 「戦いが長引いている、こちらの食料が無くなってきておる。なのに何故か敵の軍は糧が無くなっている気配さえない、おかしいと思わんか?」

 私はひざまづいたまま頭を深く下げた。

 王は長く伸ばしたあご髭を撫でた。

 白いのが混じっている髭。

 私の兄で一緒に父王から剣を教わった。家庭教師に教わり魔法も使える様になった。

 剣と魔法では私が上だ。

 兄はそれを妬んでいる。

兄の王の座を私が狙っているっと何者かに吹き込まれたらしい。

 誰だかは大体検討がつく。

 「小さな村が戦場の最前線にある、その村が敵と通じている可能性がある、ガレス、兵を用意してやるからその村を見てこい」

 私は「かしこまりました」っと言うとサッと立ち上がり、王に一礼してその場から立ち去った。

 

 灰色のレンガにおおわれた廊下をカツカツと小さな火花を散らし歩いていると後ろの方から声が聞こえてきた。

 「ガレス将軍」

 走りながらこちらに近づいてくる。

 黒い髪、整った顔立ち、まだ私より歳は若い。

 私の前に来るとゼエゼエ息をはいている。

 彼も騎士だ。

 「私も行きます」

 20代にもなっていない、髭も生えていない、こんな若者だが剣の腕は確かである、しかしこの戦争で失うのは非常に残念である。

 彼の名はウェイン。

 「気持ちは嬉しいが命は大事にするんだ、王は私を殺そうとしている、戦いの戦況を見てくるように言ったのは私を殺す口実だ」

 ウェインは私のマントを掴んだ。

 「行かせて下さい。将軍のためなら、私は命など惜しくはありません」

 私はマントをひるがえし、ウェインを冷たく突き放した。

 ウェインを残したままカツカツと廊下を歩いて行った。

 ★

 草原の崖の上にいた。

 その下にはたくさんの敵軍の野営地のテントがわんさかと建てられている。

 鉄壁の守りでも何処かに弱点がある城壁のひびに小さな蟻がおびただしく入っていくとその城は崩れる。

 そのひびを見つければなんとかなるであろう。

 向かい風。

 私の赤いマントをパタパタと中に上げている。

 「確かに、あの村に敵軍が入っている」

 私はゆっくりと振り向くと、兵は不安そうな顔をしていたので、私はこう言った。

 「あの村には実は食料が無くならないという妖精の牧場があるらしい」

 兵はぼーぜんとしている。

 滑ったか? 気恥ずかしさに下をむく、それとも状況が悪かったか?

 すると一人の兵が私を指差して叫んだ。

 「それは有名なペソップ童話に出てくる牧場じゃないですか」

 「そう、その牧場があそこにあるのだ」

 さっきの兵がペシリと自分のおでこを叩いた。

 「そりゃなんとしてでも奪還しないといけないっすね」

 ワッハハと他の兵が笑った。

 私は場が和んだので仲間の兵がいる所につかつか歩みよった。

 「そうだな、まずはあの村を奪還する」

 私は鞘におさめていた剣を天にかざした。

 オーっと地面がわくような歓声。

馬に飛び乗ると私の軍は崖を下っていった。

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