第14話カボチャ

 10月の収穫祭で様々な村からカボチャが出品され、村長によって審査が行われる。

一位になったらみんなにリスペクトされる。

 わっちははりきって、巨大カボチャを作った。

 こんな、大きなカボチャは初めてだ。

 なんとかドーム二個分はあるっと言っても過言ではないじゃろう。

 カエルさんが畑に出て来てぎょっとした。

 「なんだ、このでかいお化けカボチャは?」

 わっちは鼻高々に言った。

 「これは収穫祭に出品するカボチャじゃ、この日のために大切に育てたのじゃ」

 カエルさんはツカツカとわっちの自慢のカボチャの前に立ち止まると(ふん)っというかけ声とともに正拳付きをカボチャにくらわせた。

 ペチ、っと音がして、カボチャはびくともしなかった。

 わっちが、大切に育てたカボチャに何て事を。

 「あぁ、そんな事したらカボチャが、いたい、いたいって言って泣いちゃうじゃん」

 カエルさんはわっちの言葉を無視して次はカボチャに蹴りをいれた。

 「地獄に落ちろ、地獄に落ちろ」

 っと言って蹴り続けている。

 「なんで、そんな、事するのじゃ?」

 わっちはさすがに怒って叫んだ。

 「俺はカボチャが大嫌いなのさ」

 「えっ? カボチャ、美味しいのに?」

 カエルさんはべぇーっと長い舌をつきだした。

 「美味しくないわ、さながらウニを固めたような味だ」

 食べた事あるの?っと聞いたら誰がこんなもの食べるかっと言った。

 想像でウニを固めた味と揶揄したらしい。

 カエルさんがカボチャを蹴り続けているので、わっちは、

 「えーん、えーん」

 っと言って泣いた、正確に言えば泣き真似だが。

 「泣き真似だろ?」

 カエルさんの容赦のない言葉にわっちは不思議そうにカエルさんを見た。

 どうして分かったのじゃ?っと言うと。

 「えーん、えーんっと言いながら泣く奴がどこにいる」

 どうやらわっちは女優にはなれないようだ。

 困ったわっちは村長さんに相談しに行った。

 村長さんは質素な東洋風な家に住んでいる。

 畳と言うものを敷いてちゃぶ台というテーブルの上に東の国でしか飲めない緑茶というお茶を飲んでいる。

 わっちは緑茶は苦いと聞いたので村長さんがすすめても飲まなかった。

 すると、村長さんは「それだ」っと言った。 

 「君もカエル君も一口も口にせずにして不味いと決めつけておる。これを食べてみな」

 取り出したのは緑のアイスクリームだった。

 食べてみるとほんのり苦かったがそれが癖になる。

 「どうだ? 美味しいだろう? これで分かったろ? 君達は食わず嫌いだったんだよ」

 そしてカボチャを使ったいいレシピを村長さんに教わった。

 わっちは黙ってテーブルにプリンを置いていた。

 タンスの影に隠れカエルさんの様子を伺っているとカエルさんがプリンに気付いた。

 「なんだ、このプリンは? 妙に黄色いな、どうせエミが卵を入れすぎたんだろう。まっ食べてやろう」

 滅茶苦茶な事を言いおって。

 カエルさんはそのプリンを食べると「うめぇ」っと叫んだ。

 「あはは、それ、カボチャ入りのプリンだよ」  

 カエルさんは嵌められたっと言ったが、今後、カボチャを食べるようになり、収穫祭に出品するカボチャにもハグしてくれた。

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