第13話グリモワール

 禁断の部屋なのか?

 真っ暗だが一筋の光がポツンと置かれた小さな丸テーブルを照らしていた、そこに置かれていたのは古びた書物、なんの文字も装飾も施されていない。

 しかし、その書物からは物凄い魔力を感じる。

 俺はそれがあの禁断の書、グリモワールだと確信した。

 ★

 1ヶ月前

 ここは魔法使いを育成させ、国のために働かせる学校、ブリュノーザ。

 俺は埃っぽく、書物が散乱し、ついには本を積み上げすぎて天井まで達している、部屋にいる。

 テーブルを挟んで椅子に座っている、老教授に話をしていた。

 「教授、本当の事を教えて下さい、グリモワールはこの学校の何処かに隠されているんですよね?」

 教授はうーむっと唸って下を向いたままこう言った。

 「グリモワールなどただの伝説じゃ、そのようなお伽噺を信じるより早く提出物を出したらどうかね?」

 信じていた教授、もしや教授はすでにグリモワールのありかを知っていて自分だけの物にしようとしているのか? 教授になったのもグリモワールの力かもしれない。

 「分かりました!」

 俺は教授の部屋を後にすると怒ってつかつか廊下を歩いていた。

 なぁ、聞いたか? 最近知らねえ奴がどんどんこの学校に侵入しているらしいぜ。

 学校の生徒が話していた。

 俺の部屋の扉の前で。

 「そこにいると邪魔だ、どけ!」

 生徒達はぶつぶつ言いながら向こうに行った。

 ★

 それから数日がたった、グリモワールは本当にある、図書室にとじこもってブリュノーザの歴史などを読みあさっていると、暗くなっていたので部屋に戻る事にした。

 すると突然頭から誰かが呼びかける声が聞こえた。

 『こっちだ』

 なんだ?

 声がする方へ向かっていくと地下室についた。

 灰色のレンガに冷たい空気が充満している。

 そしてカビ臭い。

 あっと小さく叫んだ俺は、光っているレンガを見つけた。

 『光り輝くレンガにふれると汝の求める書はそこにある』

 恐る恐る光っているレンガに触れた。

 ピカーっと体全体が震え始めた。

 ★

 質素なテーブルの上に分厚い本がポツンと置かれていた。

 『ゴルディールよ』

 俺は振り向いた、何故俺の名を?

 『ゴルディールよ』

 頭の中から声が聞こえる。

 俺の名を呼ぶのは誰だ!?

 『私を開け、もし、汝の力を認め私を使いこなせるか試してくれる』

 「お前は誰だ?」

 姿が見えない、この本が喋っているのか?

 『私が汝を認めれば汝に誰にも負けない魔力を授ける。私は汝が探し求めていたグリモワール』

 グリモワール、何故こうも容易く見つける事ができたのか?

『私を望む者は私の場所にたどり着く、さぁ開け、汝が大魔法使いになれるやもしれぬぞ』

 俺は唾をゴクリと飲み込んだ。

 『開け! 開け!』

 これで教授も俺を認めてくれる。

 俺はそっとグリモワールを持ち上げて、中を開いた。

 するとどす黒い影のような物が本から飛びでた。

 黒い影が俺を包む。

 『愚かな自惚れた男、貴様の魔力を全て吸い付くしてやるわ! お前には1日たつと自らの存在を忘れられる呪いをくれてやろう』

 ちっ力が吸いとられていく!

 次の日、何事も無かった様に俺は魔法学校の寮の自分の部屋のベッドに寝ていた。

 タッと走って、教授の元に駆け寄ると教授は目を見開いた。

 「だっ誰じゃ、お主は?」

 え?

 「私ですよゴルディールですよ、教授にはお世話になっていた」

 「なにを申す、ではここでわしが教えた魔法を使って見せろ」

 火の魔法をつかってみようとしたが無理だった、どうして? 魔法が使えない!

 グリモワールの呪いだ。

 「誰かいぬか? 知らない者がこの神聖なブリュノーザに侵入しておる」

 俺は歩いた、道という道を疲れはて何も食べていないので空腹であった。

 小さな村が見つかりそこの村長に頼んでその村の山奥でひっそり暮らしていた。

 数日後、忘れても忘れても挨拶してくる奇妙なしゃべり方の女がやってきた、牧場主らしい。

 またあいつ、こないかな?

 毎日会うたびそう思うよになった、しかし彼女は初めての人だと思っているらしいが。

 ★

 そして今にいたる、俺はカエルにされ忘れても忘れても俺の元に来ていたのはエミだ。

 俺は昔を思い出しながら夕食を作っている。

 カエルになった事により、グリモワールの呪いが解けたのか、エミはずっとカエルになった俺を覚えている。

 「カエルさん、食事作ってくれた?」

 牧場の仕事が一段落したのかエミは麦わら帽を被ったまま家に帰ると突然、大声を発した。

 「あーーーー! ミニチュアサイズじゃ!!」

 「しかたねーだろ、カエルなんだから」

 こういう馬鹿げた話をエミとするのも悪くない。




 

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