第8話エレイスさんとミリさん

 カラーン、カラーン。

 教会の鐘が鳴る。

 わっちは悪魔だからあまりいい音ではないがいつものオーバーオールのわっちが綺麗な一張羅のドレスを着て教会の席に座っている。

 (これは女の子として嬉しいものじゃ)

 カエルさんもタキシードに身をつつみわっちの肩に座っている。

 席のすみっちょにエレイスさんが座っている。

 わっちは急に寂しくなった。

 エレイスさんからお話しを聞いたからだ、みんなには内緒と、言われているが何故かわっちにだけ教えてくれた、エレイスさんの過去。

 エレイスさんは今日結婚する女性、ミリさんと幼馴染らしい。

 小さい頃いつも庭でおままごとをしたり、木登りしたりしていた。

 花の冠を二人で作っていた時、エレイスさんとミリさんは誓ったそうじゃ。

 「大人になったら僕達、結婚しようね」

 エレイスさんは花の冠を被って言った。

 ミリさんはにっこり笑って「うん」っと元気よく答えたそうじゃ。

 そしてギュとそこでハグしたそうじゃ。

 じゃが大きくなると、ミリさんは彼氏ができたらしい。

 エレイスさんはそりゃもう怒って、ミリさんに暴言をはいてその場で大声で泣いたそうじゃ。

 村の中でも人通りの多い広場で泣いたから通る人はみんな驚いたそうじゃ。

 「でも私達じゃ無理よ、分かるでしょ?」

 ミリさんはそう訴えた。

 「分かんないよ!!」

 二人の大声でユアリさんが近づいてきて、落ち着くまでエレイスさんを診療所のベッドで寝かして貰ったらしいんじゃ。

 落ち着いたエレイスさんは、旅に出たがこの村に帰ってきた、なんと、わっちがこの村に来たからだと言う、なんでじゃろう?

 そして今、ミリさんと彼氏だった男の人が入場してきた。

 ウェディングドレスのミリさん、とても眩しくて幸せそう、みんなが花びらを地面にしきつめていった。

 わっちもエレイスさんがいるのを忘れてしまい、笑顔で花をしきつめた。

 カエルさんも小さい花をしきつめる。

 わっちの隣にエレイスさんが来た。

 (あっ、ついミリさんが綺麗だったからエレイスさんの事を考えもせずはしゃいでしもうた)

 わっちはシュンと大人しくなったがエレイスさんはわっちの手をそっと握った。

 「えっ!?」

 わっちはエレイスさんの顔を見た。

 エレイスさんの整った顔立ち。

 ミリさんとエレイスさん、結ばれる事は難しい。

 だって二人とも女の子だもん。

 結婚式が終わって帰り道にカエルさんは言った。

 「惚れられたな」

 えっ? そうなのか?

 「じゃあ、わっちもあんな綺麗なウェディングドレス着れる」

 カエルさんがこけた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る