第6話アニグスさん

 牧場の仕事をカエルさんと一緒に畑でトマトを収穫していたら誰かがこっちにきた。

 ととのった顔立ち、金色の髪が眩しい。

 あぁ、あの人は家具屋のアニグスさん。

 女の子にすごく人気なんだよね。

 こっちにくる、どうしたんだろう?

 「やぁ、君の牧場が壊されたと聞いて手伝いに来たよ」

 輝く笑顔でアニグスさんが笑うと真っ白な歯がキラリと光った。

 「あっかたじけない」

 わっちはアニグスさんに頭を下げると持っていたかごに入ったトマトがポロポロとこぼれた。

 アハハとアニグスさんが笑ってエミさん(すでにみんなにこの名前は教えている)あわてんぼだなぁ、っと言ってこぼれたトマトを拾ってくれて、わっちもトマトを拾おうとしたらアニグスさんと手と手が触れたので、わっちはビックっと反射的に手を離した。

 アグニスさんはアハハと周りに薔薇が咲くような笑顔をみせた。

 この笑顔で何人の女の子がやられたことか……。

 あれ? カエルさんは?

 畑の片隅の方に座っていた。

 なんだか不機嫌そう。 

 「どうしたのじゃ? カエルさん?」

 カエルさんはふんと鼻をならした。

「フッフッフッ、カエルよ」

 ワッ! 村長さん、いつの間にいたんじゃ?

 カエルさんはぷくっとほっぺを膨らませている。

 頭がハテナでいっぱいじゃ。

 「アハハやめなよ」

 あれ? アグニスさん、どうしたんだろう?

 牛小屋から声が聞こえる。

 走って行ってみると雌牛のメルちゃんがアグニスさんの顔を舐めていた。

 あーーーーー!!

 「ごめんなさい、ごめんなさい」

 そう言いながらわちはハンカチでアニグスさんの顔を拭いた。

 あぁアニグスさんの顔が臭くなってしもうた。

 女の子達に殺されそうじゃ。

 アニグスさんは大丈夫、大丈夫と笑いながら言った。

 「ざまぁみろ!」

 カエルさんの言葉にわっちは驚いてカエルさんを見た。

「カエルさん、どうしてそんな事言うの?」

 カエルさんはそっぽを向いた。

 「エミさん、どうしたの? カエル?」

 アニグスさんはカエルさんを見つけて目を輝かせている。

 そうかアニグスさんのカエルさんの事知らないんだ。

 「可愛いカエルだね」

 アニグスさんがカエルさんに手を触れようとしたらカエルさんは、アニグスさんの手を舌で跳ね返した。

 「あっカエルさん」

 なんでアニグスさんにそんな事するんだろう?

 困って村長さんに助けを求めると村長さんはうなづいた。

 「若いなぁ」

 声で推測すると村長さんも若い気がするけど……。

 今日は分からない事ばっかりじゃ。

アニグスさんは「あっ! もうすぐだ」

っと叫ぶと私の腕を掴んだ。

 「あのやろう!!」

 カエルさん、身体中真っ赤にさせている、熱でもあるのかのぅ?

 「こっちに来て」

 アニグスさんがわっちを引っ張る、なんじゃろう?

 牧場から離れた小高い丘に連れてこられたわっちは、驚いた。

 村の人が全員集合している、いや、全員じゃない、あと一人いたような。

 ともかくわっちはその光景を見て戸惑いながらアニグスさんの顔をのぞきこんだ。

 「みんな手伝ってくれるそうだよ」

 わっちはみんなの優しさに胸がジーンとなった。

 村長さんがカエルさんを見て言った。

 「どうやら杞憂だったようだね」

 カエルさんは小石にドカッと腰を降ろした。

 「まだわかんねぇ」

 「そんな事を言う事はやはりね」

 「そっ村長さん!」カエルさんはそう言ったあとピョンピョンとんで逃げて行った。

 はて? なんの事じゃろう?

 


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