俺 1 続き

その猫は、俺がタバコ吸ってるのが羨ましいのか、珍しいのか、はたまたお地蔵さんの横でタバコ吸ってる事にこの罰当たりが!とでも思ってるのか、ずーっと俺を見ている。


「何だよおめぇ、構って欲しいのか?あ?にゃー?」


俺が猫に声をかけると、猫は「ふぅー」と空気を出して下を向いた。

まるで、お前、気づいてねぇなぁ、とでも言いたそうに。


「猫のくせに溜息かよ、生意気だな」

俺は猫に悪態つくと、猫は顔を上げて俺を見上げた。

「おめぇ、名前、何て言うの?野良か?」

俺はタバコを足元に投げ捨てて、踏みつけて火を消しながら猫に近づく。

猫は逃げないで俺が近づくのをただ、じーっと見つめている。


「俺、今ここに着いたんだけど、家も金もないんだわ。おまけに犯罪者っていう曰く付きの愚かな人間。おめぇは?ちゃんと家あるのか?」

話しながら猫に近づいて、猫の前にしゃがんで手を出してみた。

猫は俺の手をじーっと見て、匂いをかいで手に顎をすりつけた。

「なんだ、おめぇ、可愛いな」

猫の顎から頭を撫でてみると、「みゃぁ」と可愛くない声で猫は鳴いた。


「さぁて、もう夕暮れになってくっからな。俺な、今からちょっと行くとこあんだ、おめぇも家さ帰ってメシ食って寝ろ、な?」

そう言って猫から手を離した時だった。


「うぉぉぉぉぉぁぁぁーーー」

と言う、男の人の叫び声が聞こえて振り返ると俺の真後ろに軽トラと、必死の形相の初老のお爺さんと、、


そこで、テレビ消したみたいに突然ぶつっと視界は切れて真っ暗になって、まるで海にいきなり投げ落とされたような感覚というか、俺が仮に競馬選手だとして馬に乗ってて振り落とされたらこんな感じなのかなという衝撃を受けた。


早い話、車にぶつかられて、俺は10メートル程吹っ飛んだ、らしい。

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