猫と俺と
柳 きよい
俺 1
とんでもねぇ田舎に来ちまった。
あたり1面田んぼ、家は日本家屋ばかりで、道ゆく先々にお地蔵さんがいる。
俺は全国的に指名手配されている俗に言う犯罪者。
罪名は、殺人。
殺したのは俺の家族、なんだろうな。
実の父親と、義理の母親と、腹違いの妹。
俺は暖かい家庭を知らないまま生きてきた。
とりあえず全国的に顔が知れ渡ってしまった今、俺を知らない場所へ行くのが無難だと思い、北海道からここ北陸地方へ来てみたんだが。
まーったく何もねぇ。
俺も何もねぇけどな。家も金も、家族も、もうない。
とりあえずここで日雇い労働で日銭を稼いで何とかしようと考えたんだが、俺はもう犯罪者なんだから、空き巣でもして金を作る事を考えていた。もう三人も殺めたんだから、怖いものはない。
とりあえずこの同じような家が立ち並んだ家を散歩してるフリをして、顔がバレないように帽子を目深に被り一件一件物色していく。
幸いなのか、誰1人散歩もしていない田んぼだらけの道路。
大体家の目星をつけて決行は夕方、と決めて、休憩しようとお地蔵さんの隣で立ち止まりタバコに火をつけた時だった。
目の前にある、古びた工場の入り口でまるまるとした茶色と白のハチワレ猫がこっちを見ていた。
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