【祖父の遺品】
【祖父の遺品】
それは日増しに暑さが増していっていた初夏のある日だった。僕は大学1年生で、祖父は幸せそうな顔で朝に目を覚まさなかった。老衰だった。葬儀は滞りなく終わり、大きな屋敷に独りで暮らしていた祖父の遺品を家族総出で整理しだした頃には少し動くだけでも汗ばむような暑さになっていた。
そんな祖父が僕に遺品として残してくれたのは古めかしいフィルムカメラでだった。
僕はそのフィルムカメラを夏合宿に持って行き、色々な写真を撮ってみた。36枚撮りフィルムを使い切って写真屋で現像して貰った頃には少し暑さがやわらいできていた。
さっそく現像した写真をみていくと、それなりに良い出来だった。
しかし、数枚目から違和感を感じるようになった。違和感というよりもありえないものが写っていた。写真にはカッパが写り込んでいた。しかもそのカッパは最初は遠くに写っていたのに枚数が後ろになるほど近付いて、枚数があと数枚という時なんて、ほぼ顔面どアップで水かきの付いた指でピースサインをしている。
けれど、最後の写真の中にはカッパは何処にも写っていなかった。友人にも見せたが、怪奇現象としか言えず、フィルムに元々描いてあったのではないかと思うくらい不可思議なことで、昔はそんなフィルムもあったという話も友人が教えてくれた。その後もこのカメラで何かをとるとそこのどこかにはカッパが楽しげに写っている。そんなカメラだから祖父はこのカメラを僕に残してくれたのかもしれない――
――と、思っていたがそのカメラを使わなくても、僕自身が写真に写っても背後やどこかにカッパが写り込んでいる事が判明したため、もしかするとこのカッパ自体が祖父の遺品なのかもしれないと最近は考えている。
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