14:11~15:02 本当に賑やかな運動場
★体育祭午後の部 14:11
「やあやあ我こそは! 1組の騎士、赤松である!」
「やあやあ我こそは! 3組の騎士、荻谷である!」
誉ある女騎士たちが、勇ましく名乗りを上げた。
ひゅう、とひとつ小さな突風が、砂埃を小さく巻きたてる。
固く組んだ騎馬の上で、我らが3組の荻谷さんは、敵の赤松さんをじいっと睨みつけている。目線と目線、火花が散っているようだ。
荻谷さんが、被った帽子をもう一度深く被り直した瞬間、
「始め!」
ピストルが、決闘の始まりを高らかに告げた。
双方の騎馬が立ち上がり、敵へ向かって猛スピードで前進する。騎士を支える馬たちの、ゴム製の蹄が、パカラパカラと大地を揺らす。
荻谷さんが放った右手を、赤松さんが軽くいなす。
チョロい、これで勝った――そんなニュアンスを含むだろう笑みを浮かべた赤松さんは、ガラ空きになった荻谷さんの頭に手を伸ばした。
だが、甘い。
荻谷さんはこれを見越していたのだ。手のガードに頼らず、頭の動きで攻撃を避けると、油断しきった赤松さんの帽子をパシッと剥ぎ取った。
そのまま後ろに投げ落とし、赤松さんの帽子は、グラウンドの砂の上に堕ちた。
「一本! 3組の勝利!」
ピーッ、と笛が鳴り、大歓声が巻き起こった。
騎馬から降りた両者が笑いあって握手して、今度は大きな拍手が起きる。
「たしかに今のは名勝負だな」
「私たちも負けてらんないね」
騎馬戦。
クラス対抗、正真正銘の一騎打ち。
泣いても笑ってもやり直せない、一度限り、一本限り、一体一、一所懸命、一瞬の勝負。
平均より背が高く、帽子取りに有利な私は、騎馬の上に乗る『騎士』として戦う。普段はけっこう黒い格好をしているので、被る帽子はショッキングピンクのものを選んでみた。
……似合わないかな。ちらっと観客席の柿坂先輩を見てみたけど、先輩は当然試合の方を見ていて、視線が合わない。
「やーやー、我こそは、1組の騎士、海蔵寺神音である」
「やあやあ! 我こそはぁぁ! 空前絶後のぉ、超絶怒涛の女騎士! 騎馬を愛し、騎馬に愛された女!!」
……カミネのあとに続いて、去年の年末番組でブレイクした芸人のネタをやりだしたのは。
「……黒部ぇー! ボフッ、そ、ら、の……」
……………。
『イエェェェーーーーイ!!』
空乃だ。
事前にネタ合わせしていたらしく、下を支える騎馬の女子たちも合わせてイェーイを叫んだ。
ギャラリーがどっと湧く。私も、堪えきれずに吹き出した。あんな、女を捨てたような変顔で叫ぶのは反則だろ。
「一本! 1組の勝利!」
しかも、始まったら一瞬でやられてるし。
しかし本人はだいぶ満足らしく、珍しく笑っているカミネとにこやかに握手を交わすと、騎馬を組んでいた女子らにイジられつつ、笑顔でギャラリーに手を振りながら戻って来た。
横目で私に聞いてくる。
「どうだった?」
「バッチリ満点大笑い」
「ふふん、このままお笑い養成所にでも入っちゃおうかな?」
「それは調子乗りすぎ」
ひとしきり笑ったら、切り替えて、顔を引き締める。
……さて、私の番だ。
私を乗せた騎馬が、所定の位置に移動する。
移動を完了すると、一旦騎馬はしゃがみこんで、体勢を整える。その間で、騎手の二人が名乗りを上げるのだ。
1組の騎手……私の相手は。
「やあやあ我こそは! 1組の騎士、源忍である!!」
忍か……。
たしか、中学2年生まで空手をやっていたらしい。こういう格闘的な分野では強敵かもしれない。
私は、忍の名乗りを聞き、ニヤリと笑って指を鳴らした。背後で、うちのクラスの騎馬が全て立ち上がる。
どこからともなくテクノなBGMが流れ、リズムに合わせて騎士たちが手を上げ下げする中、今回怪我で出場できなかった大谷くんが、特技のラップを披露する。
『オーオーオーオーオー!!』
「
『声上げーろ! 帽子取ーれ!』
「その帽子と騎馬を、今! ささーげろー!」
予めポケットに入れていたおもちゃのサングラスをかけて。
頭を横にカクンと傾ける。
「I'm A PARFECT WOMAN」
ヤーヤー、と大谷くんが踊り、会場が爆笑の渦に包まれるのを真顔で眺めながら、私は思った。
……これ、名乗ってないじゃん。
このパフォーマンスの考案者であるキヨに精一杯の怨念を送りつつ、私はしばらくの間、愉快なピエロを演じたのだった。
さて、いよいよ対戦が始まる。
名乗りのパフォーマンスが終わって、割れんばかりの拍手が終わると、審判の多井中先生(趣味なのかは知らないが、気合満々の武者装備だ)が、半笑いのままピストルを掲げる。
私としては、さっきのパフォーマンスがスベらずに終わった時点で峠は越えたようなものなんだが、勝負ごとに手を抜くと男が廃るというものだ。……こういうことばかり言っているから、イケメンとか男前とかネタにされるんだろうけれど。
忍も、友達だからと手を抜くつもりはないらしく、女王の風格で騎馬を従え、私を迎え撃つ準備を万端にしている。
先生の指が、引き金を引いた。
「始め!」
決戦の火ぶたが切って落とされる。
特攻……は、しない。
正直、あまり騎馬戦の帽子取りには自信がないのだ。
「ナカンジョ(中橋さん)、タブッチー(田淵さん)、ホンズラー(本間さん)! 右側から攻めるぞ!」
『アラホラサッサーィ!』
今まで正面からぶつかって、力づくでの帽子の取り合いというパターンばかりだったので、この戦略展開にギャラリーは「おおっ」と大きくざわついた。
対して忍は、堂々と、ゆっくり正面へ進み出てくるのみ。小手先だけの姑息な戦い方で我を倒すことは出来ぬ……といった、もはや神格めいたものすら感じる。
「どうしたどうしたーっ」
「うぇーいっ」
「真っ向からかかってこんかーいっ」
忍の騎馬3人がヤジを飛ばす。
……なんだか、私の出る競技って、全部ネタ化してる気がする。私って、もっと陰気なヤツだったはずなんだけどなぁ。
まあ、楽しいからいいんだけど。
ナカンジョとタブッチーとホンズラーが、ヤジにヤジで対抗する。
「騎馬ビビってるー!」
「へいへいへーい!」
「タマついとんのかー!」
『ついてないわ!』
こんなバカな会話をしている間にも対象との距離は着々と近付いてきている。
私の優秀な騎馬の機動力で、忍の周りをぐるぐると回り、裏を取ろうとする。が、忍の騎馬も信じがたい旋回力で動きについてきて、なかなかバックアタックを仕掛けることができない。
「わっ、ちょっと待って、目回る、目回る!」
……騎士は大丈夫じゃなさそうだが。
「騎士は自滅で満身創痍だ! このまま円を描きながら接近しろ!」
『ヤッター!』
さっきは悪役の掛け声してたのに、早くもキャラがブレてきているが、気にしない。
このまま目を回している忍から、帽子を叩き落とせば全て終わりだ。
「忍ぅーっ!」
「くっ……咲ぃぃーッ!!」
両騎馬の動きがピタリと止まり、反動で少し揺れながら、私と忍は組み合った。
右手左手、恋人繋ぎのように手を組み合い、必死の形相で力を比べ合う。オオオ、と地面が揺れるように、全ての魂が騒ぐ。
右手を大きく振って放し、解放された右手で帽子にアプローチをかけるが、そこは空手経験者といったところか、スウェーで軽く躱してきた。
私が手を放したということは、当然忍の手も自由になる。私の攻撃をかわしてすかさず帽子を取りに来るが、間一髪で左手を解放、右手の攻撃を薙ぎ払う。予想通り続けて出してきた左手も、首の動きで避けて、また両手を掴む。
忍は、ぐっと私の両手を掴んだまま、両腕をぶんぶんと押し振り回す。腕を帽子のつばにぶつけて飛ばそうという目論見か。
私の帽子のつばに腕が当たって、少し頭からズレた。
「退避!」
『イェス・ユア・マジェスティ!』
両手を外し、どうにか追撃を振り払いながら、距離を取る。
冷汗をかいたが、どうにか一旦退避できた。すぐに帽子を深くかぶり直す。
「逃げるなっ!」
なんとか脱げかけた帽子を回復できたはいいものの、忍の騎馬がさらに追いかけてくる。逃げているだけではジリ貧だ。
「迎え撃つべぇ!」
『アラホラサッサーッ!』
似てない物まねで命令し、こちらからも迎撃。
お互いの騎馬の勢いがぶつかり合い、手のひらと手のひらが高い音を鳴らす。
再び忍と組み合って、いがみ合う。
「おおりゃぁーっ!」
「とぅおぉぉーっ!」
右、弾かれる。左を防ぐ。
避ける。掴まれる、振り払う。
帽子に手を当てて守る、右でフェイクからの左で取りに行く。
攻撃が全て防がれて、右も左も、両方の手をクロスした状態で掴まれる。
激しい格闘戦に、観客のボルテージがマックスになる。
そろそろ騎馬も体力の限界だろう、私は勝負を決めるために、一気に身を前に乗り出して、手を伸ばす。
私のモーションに気付いた忍は、防御ではなく、がら空きになった帽子を奪うことを選んだ。
攻撃と攻撃。つまり、速い方の勝ち。
『いけぇぇぇぇぇぇ!!』
騎馬、仲間、生徒、ギャラリー、会場すべてが一体となって叫ぶ。
この3分にも及ぶ死闘を制するのは……!
私の手が忍の帽子のつばを叩き上げたのと同時に、忍の手も、私の帽子のつばをつかんだ。
騎馬戦のルールは、相手の帽子に先に土をつけた方の勝ち。
私の帽子は頭を離れ、忍に奪い取られる。
舞い上がって落ちていく忍の帽子。忍が容赦なく地面に向かって投げ落とす、私の帽子。
どちらが速いか。
もはや勝つも負けるも、2人の手から離れて行った。
落ちていく2つの帽子。無音になる世界。
勝ったのは――
ホイッスルが鳴り響く。
「一本! ……1組の勝利!!」
……負けちゃった、か。
歓声の中、すぐに騎馬を崩して、忍と、忍を支えた騎馬役の女子たちが抱き合う。
私たちも騎馬を崩す。
「負けちゃったかー」
「ごめん、みんな頑張って支えてくれてたのに」
「いやいや、大健闘っしょ!」
「めっちゃ盛り上がってたしね。ぶっちゃけ両方勝ち?」
4人で笑いあって、4人で笑いあって。
8人は、それぞれ笑って握手した。
試合中は鋭い眼光で私を睨んでいた忍も、柔らかな表情になっている。
「えっと……いい試合だった、っていうのかな?」
「ふふ、そうね。今回は勝たせてもらったけれど、ほとんど引き分けみたいなものだったし……いい試合だったわ」
「また騎馬戦やる機会……なんて、ないかもしれないけど。ま、次こそ負けないぞ」
汗をかいて健闘を称え合うこの構図は、少年漫画のワンシーンみたいだ。
微熱を帯びたようなコールを浴び、私たちはハイタッチしながらみんなの控える陣へと戻っていった。
「続きまして1年男子の部、4組対3組……」
さて、私の晴れ舞台は終わった。今度は、応援する番だ。
『4組アキヒロのーーーー! ちょっといいとこ見てみたーーーーい!!』
「俺にぃーッ、任しとけぇぇーっ!!」
『ふぅーーーっ!』
4組のパフォーマンスはシンプルだな。
わざわざBGMまで用意してもらったこっちが申し訳ない気持ちになる。
「3組ーーーーッ!」
『おおおおおおおおっ!』
「田丸はバカだがーーーー!?」
『腕は立つぅぅーーーーっ!!』
「ミュージックスタートぉ!」
去年の年末にかけて流行ったドラマのサビが流れ、おおっ、とギャラリーがどよめく。
3組全員が一斉に立ち上がり、合唱しながらダンスする。
やるなら本気だ。練習を重ねたキレキレのダンスで、我らが3組の愛すべきバカ、田丸を応援した。
『4組を超えてゆけ!!』
#
★体育祭午後の部 14:47
全クラスの騎馬戦が終わったら、次は借り物競走だ。
事件の調査もひと段落ついたし、私はのんびりと座って、理不尽な借り物要求に翻弄される選手たちを眺めていた。
「グミいる?」
「いるー」
「あい」
「サンキュー」
リンゴ味のやつだ。美味しい。
……それにしても、この借り物指令は、実行委員長である曽布川さんをはじめとした実行委員が考えたものだというが……。実行委員にはサディストしかいないのだろうか。
運動場の中心で、男子生徒が理不尽を叫ぶ。
「ドライヤーなんかあるわけねぇだろぉ!!」
……これはひどい。
何やら、1つのレースに1つ、『ハズレ指令』という、とんでもなく理不尽極まりない借り物が書かれた指令書が用意されているらしい。
結局その生徒は、他の選手らがゴールするまでドライヤーを用意できず、最下位が確定した。おのれ曽布川さんめ、酷なことをする。
続くレースでは、女子が悲鳴を上げた。
「『好きな人の筆記用具』って何よぉぉーっ!」
……ひどい。もはや何かのハラスメントだろ、これ。
しかし、なんと驚くことに、それはまだハズレではなかった。次に指令書カードを引いた男子が、絶望して半狂乱になる。
「はぁぁーーっ!? 『10人から髪の毛1本ずつ』って何だよ、畜生ぉ!」
頭おかしい。
髪の毛って……なんかの儀式かよ。
結局そのレースは、『好きな人の筆記用具』を引いた女子が、LIKEという意味で好きである女友達のペンを借りて、2着でゴールインした。『好き』の定義の裏をかいた頭脳プレー……と言うには大袈裟か。
髪の毛とかいうオカルティックな借り物を指令された男子生徒は、どうにか健闘し自分含め4人の髪の毛を集めたところで、他の選手がゴールインして最下位となってしまった。せっかくもらった髪の毛を捨てて、足で運動場の砂に紛れさせているときの彼の姿は、哀愁を漂わせていた。
さて次は……お、下邨がいる。5組の連中がヤジを飛ばす。
「翼ぁぁー! 負けんなやぁー!」
「最下位とったら坊主じゃオラー!!」
ちがう、あれはヤジじゃなくて脅迫だ。
そのヤジに対して下邨も「お手柔らかにー!!」と控えめに返す。たぶんあいつらは、やると言ったらマジで丸刈りくらいやってしまうのだろう。
ホイッスルが鳴り、選手総員一斉に、50メートル地点のテーブルへと向かう。
このテーブルに何枚かのカードが置かれており、そこに書かれた『借り物』を借りて、実行委員の机まで持って来れば、それでゴールとなる。
あまり陸上は得意じゃないと言っていた水泳部の下邨だが、なんとか5人中3位という良いペースでテーブルに到着する。
はてさて。せいぜいハズレカードを引いて、リアクション芸で楽しませてほしいものだが……。
「……あんじゃこりゃあぁぁ!?」
下邨はカードを見ると、そのまま頭を抱えた。
一体どんな指令を引いたのやら……と、ニヤニヤしながら下邨を見ていると、ふと顔を上げた下邨と目が合ってしまった。
今更目線を逸らしても後の祭り、下邨は猛ダッシュでこっちにやってきた。
私の周りの女子が軽くドン引きするのも気にせず、ものすごい剣幕で言ってくる。
「小池! お前の推理力で何とかしてけろ!」
「いや、推理するだけで借り物がラクになるかよ」
「うわぁぁん、薄情者! 俺が水の抵抗受けにくいアタマになってもいいってのかよ!?」
「お、落ち着けって。指令は何なんだ?」
「それが……」
しょんぼりと肩を垂れる下邨が示したカードには、『女子のタオル』との指令が書かれていた。
なんだ、そんなことか。私は腕を組み足を組んで吐き捨てた。
「下邨、あんた女友達もいっぱいいるし、こんなのお茶の子さいさいだろ?」
「いや無理だよ、そこらへんアイツら、ガード固いし……」
「なんだそれ……」
「じゃあ小池が貸してくれるってのか!?」
「え、嫌だけど……」
「畜生! 俺が水泳キャップを付けなくてもよさそうなアタマになってもいいってのかよ!?」
「さっきから何なんだよ、その微妙な例え!」
私の周りの女子にも、おねげぇしますだ、おねげぇしますだとお願いするが、ことごとく拒否される。
下邨はがっくりと項垂れた。
「もうおしまいだぁ……アテネの松田みたいなアタマにされちまう……」
「ホント馬鹿だなぁ。あんた、もうすでに借りてるだろうが」
「へ? ……なに?」
ここまで言っても分からないか。
私は頭を掻いて、下邨の額に人指し指を突き付けた。
「よく思い出してみろ。昨日、水泳の後に新聞部の部室に来たお前は、誰に、何をされた?」
「……忍に、プリンをもらった……」
「はぁ!?」
「ひぃっ!」
「あんたの頭は濡れてたんだろうが!」
「…………あ、ああっ、そっか!」
一転、晴れやかな表情になった下邨は、
「ありがとなーっ!!」
と叫んで、手を振りながら走って行った。
一部始終を見ていたらしい、カミネと数人のクラスメートが、不思議そうに話しかけてきた。
「……どうしたの、急にすっ飛んで行って」
「え、意味不明。頭が濡れてたから、何なの……?」
「あー、えっと……要するに。
昨日、あいつが新聞部の部室に来た時、頭が濡れてたから、女子の先輩からタオルを借りてたんだよ。だから、それをもう一回借りれば解決ってわけ」
「へえ」
「さすがは名探偵」
「……それにしても」
カミネが、実行委員の机の方へ視線を向ける。
1位を取ってニンマリと笑い、昭和の芸人みたいな踊りを見せる下邨の姿が、そこにあった。
「……うるさいヤツね」
「…………」
「いい意味でも、悪い意味でも……」
非常に同感だ。
さて、と私は立ち上がって、カミネに目くばせする。
待機場所から離れたところで、私とカミネは顔を近づけて話す。できるだけひそひそ、聞かれては困る話を。
「工作、できたか?」
「巻物を入れ替えるだけだし……簡単だったわ」
「見られたりはしてないよな?」
「できるだけ気は配ったし、見られたとは思えない」
「よし……これで、解決か」
私とカミネは、ふっと力を抜いて緩めに笑い、ハイタッチを交わした。
書道部に置かれた、2つの巻物。
それを入れ替えただけで、今回の事件は完璧に解決だと。
――私もカミネも、この時までは、そう思っていた。
「そろそろ部活対抗レースね」
「ああ。カミネも走るのか?」
「第2走者でね」
私たちの立てた作戦も、調査も推理も……全てある人物の手のひらの上だとは、この時はまだ気づいていなかった。
ついぞ、私とカミネは、告発の計画が滞りなく進行しているという事実を知らないままに……。
★体育祭午後の部 15:02
「続いてのプログラムは、部活動対抗レースです。部活動対抗レースに出場する部活動団体の皆様は、各自衣装やバトンなどを準備の上、所定の位置に待機してください。
繰り返します……」
告発の時限装置、そのタイムリミットを迎えようとしていた……。
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