2#三番瀬の風船

 ばっ!


 「風船みっけ!!」



 突如横から現れたコサギのベイリは、緑色の風船を見付けたとたん、目にも止まらぬ速さで尖った黄色い嘴で風船の紐をぱくっとくわえて飛んでいってしまった。


 「なんだよ!俺達の風船だぞ?!」


 アオサギのアオタは、緑色の風船をくわえてウキウキしながら飛んでいくコサギのベイリに怒った。


 「るんるんるーん♪風船拾った♪どっしよーかなーーー!!翼でポンポン突いちゃおうかなー♪栓を抜いて息でもっも大きく吹いちゃおうかなー♪るんるんるーん♪」


 「おーーい!!まてーーーー!!」


 カワウのクロエとアオサギのアオタは、翼をはためかせ、倉庫街の運河沿いを鼻唄まじりに飛んでいくコサギのベイリを追いかけていった。


 やがて大きな港を抜け、海岸が見えてきた。




 ぴゅるるるーーー


 ぴゅるるるーーー


 ぴゅるるるーーー


 ぴゅるるるーーー




 ここは、三番瀬。


 沢山のシギ達やチドリ達が浜辺で餌を長細い嘴でほじくって、チョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコと歩いていた。


 「あっ!!やべえ!!」


 コサギのベイリは、うっかり嘴から風船を離してしまった。




 ふうわり。




 半ば浮力の失った緑色の風船は、三番瀬にたむろすシギ達とチドリ達のど真ん中に向かって降りていった。


 「うわっ!やべえのが向かってくる!!」

 「風船だ!風船だ!」


 「触るなよ!触るなよ!触ると爆発するぞ!」


 ぴゅるるるーーー!!


 ぴゅるるるーーー!!


 ぴゅるるるーーー!!


 ぴゅるるるーーー!!




 シギ達やチドリ達は、フワフワと降りてくる緑色の風船を避けようと一斉に飛び立った。



 ぴゅるるるーーー!!


 ぴゅるるるーーー!!


 ぴゅるるるーーー!!


 ぴゅるるるーーー!!



 「やっべえ!!『シギチ』の群れのせいで、風船見失っちゃった!!」


 カワウのクロエとアオサギのアオタとコサギのベイリは、舞い飛ぶシギやチドリの群れに隠れてしまった緑色の風船を目を凝らして探し回った。


 すると・・・


 「あっ!!」


 一羽のダイゼンが半ば縮みかけた、緑色の風船を長細い嘴にくわえて飛んでいくのを見付けた。


 「おーい!!ダイゼンさーん!風船・・・」


 「やっばっ!!」


 振り向いたダイゼンのコッスは、後ろからカワウとアオサギとコサギが追いかけてくるのを見て翼をはためかせてスピードを早めた。


 「まてーーーー!!」


 「俺の風船ーー!!」


 「いや、僕の!!」


 


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