第173話 さようならA先生

 二ヶ月ぶりぐらいに糖尿病の病院に行ったところ、私が糖尿病外来で来ていると分かったら採血中に看護師さんが変な事を言った。


「A先生は12月末で終わりになって、もう来ません。次の先生も来ません」


 はい?どういう事?

 先生に何も聞いていないよ?


 この病院は内科の中でも糖尿病外来のように専門の分野の場合は、外部の大学病院などから1週間に一度くる先生で診てもらえるようになっている。

 A先生もそういった先生だった。


 A先生は私が抗がん剤の副作用で糖尿病になった時からお世話になっている先生で一番信頼していて大好きだった先生だ。


 この病院は半年ごとにその専門外来の先生が変わるのだが、上半期はA先生、下半期はB先生という感じで本来は今は下半期だからB先生の番なんだけど、何故か今年はA先生のままで私としては嬉しかったのだ。

 なのにいきなり先生からの話もなくいなくなってしまうなんて……。



 先生がもう来ないと看護師さんはいきなり言ったけれど、意味が分からない。

 それはA先生がもう来ないのか、それともこの病院で糖尿病外来という物自体が無くなるのかどっち?


 この看護師さんとは前にも栄養指導の予約の件や、診察待ちの件などでよく分からない嫌なやり取りをした経験があったので、他の看護師さんに詳しくを聞いてみるとこにした。

 そうしたら……どうやら外部から専門の先生を呼ぶ事を辞めたけれど、この病院にも内科の中で糖尿病を診れる先生はちゃんといるらしいという事が分かった。


 ならそう言ってよ。

 最初の看護師さんに話を聞いた時点では、転院しようかと思ったよ。


 で、相変わらずこの病院は採血は下手というかあまり上手くなくて、1時間ぐらいかかった。

 ここ3回くらいは毎回1時間コースだ。

 普通に3本の採血するだけで1時間だよ?9割方の看護師さんは上手くはないけれど、とても優しいから時間かかっても嫌な気はしないんだけど、でもかかり過ぎだよね。


 確かに私は採血しにくい体質だよ。

 けど他の病院ではそんなにかからないよ。



 でね、A先生から変わった新しい先生は女性の先生だった。

 女性の先生ってキツイ方が多いから苦手なんだけど、糖尿病の事はちゃんとしている先生みたいで安心した。


 そしてね、やっと、やっと念願の減薬をしてもらえた。


 ずっと数値は良かったけれど、「次ね」と言われ続けていた減薬。

 今回も更に数値が良くなっていたから、おさらば出来たよ、あの高い注射から。


 この新しい先生が前の処方の通り、何も変えずそのまま今回も処方してくださる、という事になったら


「前回、A先生は数値が良くなっていたら薬減らしてくれると仰ってました」


 と言おうと思っていたけれど、私が言うまでもなく減らしてくれた。

 そういう点でもこの新しい先生を信用出来たし、安心した。


 というわけで、大好きなA先生に会えなくなっちゃったけど、ちゃんとこの病院のまま(自宅から一番近い総合病院なので通いやすい)通院出来そうな上に、身体にもお財布にも痛かった注射が無くなって、結果的に今回の通院では良かったなと思えた。

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