第4話 家その2
夕方だ。
そろそろ弟が帰ってくる。
私は親友宅をあとにした。
親友には心から感謝した。命すら救われたような神妙深い気持ちになっていた。
自宅に着くと、やはり弟が帰ってきていたようで家に明かりが着いていた。
ドアを開けた。不審者と思われないように、
「お姉ちゃんだよ。」
と発声しながら家に入った。
しかし、年が八つ離れた弟は私の帰宅に無関心のようだった。
私も私の弟であるという愛着のような気持ちはあまりもっていなかった。
中学、高校と勉強と部活に打ち込み、大学では専ら一人暮らしをしていた私にとって、この八つ離れた弟とは過ごした時間も密度も少ない。仕方のないことだ。
「お母さんは何時に帰ってくるの?」
「18時頃かな。」
この家は借家である。元々とある老夫婦の家だったらしいが今は不動産が管理しているようだ。
一般に実家と呼べる場所は親の離婚と共に自分の中で消滅している。本籍地は更地。
違和感は払拭できないが、一年間この家を実家として拠点にし、人間として必要な生理的欲求を満たすだけの生活が始まる。
憂鬱。
そう思った。
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