2話

ある雨の晩、畑仕事を終えた僕は帰り道の途中にあるごみ捨て場で、小さくて赤いおもちゃのピアノを見つけた。赤くて小さな箱は、あの人が弾いていたものとは色も大きさも全てが違った。しかし、わたしはそれを大事に抱えて家に持ち帰った。慎重に赤い箱を開け、中身に溜まっていた水を拭き取り、鍵盤を叩いてみた。


「・・・」


 音にもならない音がした。弾いた鍵盤通りの音を出さないピアノはピアノと呼ぶことができるのだろうか。

 時々、自分は人の形をしている器に閉じ込められた、何か他の存在であると感じる時がある。赤い箱はわたしに、そのことを思い起こさせた。

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