第30話 さようならを言った日1
家に帰ったクーたんは、すぐにグッスリと眠った。
冷たい風が吹く中、自転車をとにかくこいで、フツウサを探し回った。
身体も冷えてすごく疲れてしまっていたが、ワンダーガチャから出た腹巻をしたまま寝たお陰もあってか、風邪はひかずにすんだようだった。
クーたん「・・・。」
まだ暗い朝。静かに目を覚ますクーたん。布団の上で小さくなって寝ているハトのマメを起こさないように、そっと立ち上がり、机に向かい、手紙を書きだす。
~フツウサへの手紙~
フツウサへ、急にお別れだなんて言ってごめんなさい。びっくりしてしまったよね。お昼におにぎり山で待っています。自分の話を聞いてほしいんだ。誰よりも先にフツウサに。
クーたんより。
マメ「書き終わったかい?」
クーたん「あ、マメちゃん起こしちゃったかな?」
マメ「届けなきゃいけない手紙があるのなら、寝てなんかいられないさ。」
クーたん「ありがとう、マメちゃん。」
マメ「届け先を聞こう。」
クーたん「うん。・・・フツウサに、大事な友達に、この手紙を届けてほしい。」
マメ「了解した。」
クーたんから受け取った手紙をくちばしに加え、ビシッと敬礼をしたマメは、窓からバサバサッと飛び去っていった。
クーたん「ふぅ・・・。もうひと眠り、しようかな・・・。」
手紙をマメに任せたクーたんは、ちょっとホッとして、もう少し眠って外が明るくなるのを待つことにした。
再び目を覚ますクーたん。窓から外を見ると、お日様が昇り始めていた。
クーたん「よし、元気だ!」
クーたんはいつものようにおにぎりを二つ握って、布袋に入れ、いつものようにたくさんの他の物と一緒にリュックに詰めた。
クーたん「さて、遅くならないうちに出かけよう。」
クーたんは、リュックを背負い、おにぎり山へと出かけて行った。
おにぎり山の頂上。いつものように座ってフツウサを待つクーたん。次第にお日様が頭の上にまで昇ってきた。
バキッ!
後ろから聞きなれた、枝の折れる音が聞こえた。
フツウサ「やあ!」
クーたんが振り返ると、そこにはいつもの笑顔のフツウサがいた。
クーたん「やあ!フツウサ。」
フツウサはクーたんの隣にスッと座った。
フツウサ「ごめんね、クーたん。」
クーたん「ごめんね、フツウサ。」
フツウサ「フツウサは、お別れっていう言葉に悲しくなって、逃げ出しちゃったんだ。クーたんにバカって言っちゃった。クーたんはバカじゃないのに。」
涙ぐみながら話すフツウサ。
クーたん「うん。お別れっていう言葉に悲しくなって逃げ出しちゃったんだね。バカっていう言葉も言っちゃったんだね。」
フツウサ「クーたんは、バカじゃないのに・・・。」
クーたん「クーたんは、バカじゃないのにね・・・。」
フツウサ「ごめんね・・・。」
クーたん「ごねんね、ねっ。」
フツウサ「昨日はロップさんと一緒にフツウサの秘密基地で大泣きしてたんだ。そしたらいつの間にか寝ちゃってて・・・。」
クーたん「ロップさんと一緒に秘密基地で大泣きして、いつの間にか寝ちゃってたんだね。」
フツウサ「そう。そして目が覚めたら、どこからか気合いの入ったハトが入ってきていてね、手紙をくれたの。」
クーたん「目が覚めたら、気合の入ったハトがいて、手紙をくれたんだね。」
フツウサ「クーたん、手紙ありがとうね。」
クーたん「うん・・・。また会えて、良かった。」
少しの間、言葉を失う二羽のウサギ・・・。
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