第29話 とても長い一日7
フツウサは、とにかく誰かに話を聞いてもらいたくて、ロップを自分の家へと招いた。
ロップ((ドキドキ、友達の家に来るのなんて初めて・・・。))
フツウサ「ロップさん、フツウサにはね、嫌なことがあると隠れる秘密基地があるんだ。クーたんも知らないんだ。クーたんといると、嫌なことが起こらないからね。ロップさんにだけ教えてあげるね。」
ロップ((秘密基地、私だけに教えてくれる、秘密の共有、し、親友!?))
ロップは鼻息を荒くしていた。
フツウサの家の近くにある大きな木、その気の根元の草をちょっとかき分けると、木で出来た蓋が出てきた。
フツウサ「このフタを開けると、地下洞穴があるんだよ。」
フツウサがパカッと木の蓋を開けると、その先には、小さな洞窟が広がっていた。
ロップ「す・・・すごい。本当に秘密基地みたいだ。」
フツウサ「うふふ。さぁ、中に入って。ちょっとフツウサと一緒におしゃべりしてほしいんだ。」
二羽は小さな洞窟に入っていった。
ロップ「なんかあったの?フツウサ・・・。」
フツウサ「うん・・・。クーたんがね、クーたんがね・・・。」
また、大粒の涙を流しだすフツウサ。
ロップ「あわわ、あわわ。」
そのフツウサの姿を見てちょっと慌ててしまう。ロップ。
ロップ「そうだ!」
ガサゴソと自分のカバンの中を探すロップ。
ロップ「ほら!」
ロップの手には大きなドーナツがあった。
フツウサ「ドーナツ・・・。」
涙と鼻水を流しながら、フツウサが反応する。
ロップ「今日は、駄菓子屋さんにドーナツを買いに行った帰りだったんだ。半分あげるね。」
ロップは大きなドーナツを半分に割ろうとする。
ロップ「あっ。」
ドーナツは綺麗に半分には割れず、大きなドーナツと、小さなドーナツにわかれてしまった。
ロップ「・・・はいっ。」
一瞬の躊躇の後、大きい方のドーナツをフツウサに渡すロップ。
フツウサ「ありがと。」
フツウサは涙をぬぐった後、ドーナツを受け取り、
フツウサ「はいっ。」
大きめに割れたドーナツをキレイに半分に割って、その半分をロップに返した。
ロップ「あ、ありがと。」
素直に嬉しそうにするロップ。
二羽は幸せそうにドーナツを食べ、フツウサが持っていたお茶を分け合って飲んだ。
フツウサ「ふぅ。」
ロップ「お腹いっぱいになって、ちょっと落ち着いたかな。」
フツウサ「そういえば、昼のおにぎり食べかけのまま、置いてきちゃった。」
ロップ「それじゃ、お腹も空いてたのかもね。」
少しのんびりしていた二羽。フツウサが、ポツポツと話し出す。
フツウサ「あのね、クーたんがね・・・。」
ロップ「うん・・・。」
フツウサ「お別れだっていうんだ・・・。」
ロップ「!?」
フツウサ「・・・ロップさん?」
ロップ「うぇぇぇん・・・。」
泣き出してしまうロップ。
フツウサ「大丈夫、ロップさん、ロップさん!」
ロップ「お別れは、お別れは、悲しいよ・・・。」
フツウサ「・・・お別れは、悲しい・・・。グスン。」
落ち着いて話始めたフツウサも、また大粒の涙を流して泣き出してしまう。
ロップ「うぇぇぇえん。」
フツウサ「わぁぁぁぁぁん。」
小さな洞穴の中で泣きじゃくる二羽のウサギ。
足元にはたくさんの涙コインが落ちていた。
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