第25話 とても長い一日3
道に迷うのではないかとすぐに心配になってしまうクーたんは、普段、一羽で散歩をするときは、あまり新しい道を探索しない。だから自分だけで通ったことのある道はとても少ない。
また、一度走った道を感覚で覚えてしまうフツウサとは違って、一つの道を覚えるのには、何度もそこを通る必要のあるタイプである。
だから、目印の沢山あるエキとは違い、一度行ったきりのフツウサの家を探すのがあまりうまくいかなかった。
自転車でグルグルフツウサの家を探し回っていると、バイクに乗ったさいこうさに出くわす。
さいこうさ「いやークーたん。今日も最高の日・・・、ではなさそうだね?」
バイクを止めて、クーたんに話しかけるさいこうさ。
クーたん「ぜは、ぜは、さいこうさ・・・。フツウサの家を知っているかい?」
さいこうさ「おお。藪から棒だね、クーたん。どうかしたのかい?」
クーたんは、さいこうさに自分がお別れしなくてはならないこと、それを聞いたフツウサが泣きながらどこかに行ってしまったことを伝えた。
さいこうさ「お別れ・・・。本当なのかい?クーたん・・・。」
クーたん「ごめん、さいこうさ、それで急いでいるんだ。フツウサの家の場所を知っているかい?」
さいこうさ「うーん。ごめんよ、クーたん。僕は最高だけどね。フツウサの家の場所は知らないんだ。この間、ウバウサがフツウサの家に遊びに行った話を嬉しそうにしていたから、ウバウサならフツウサの家の場所を知っているかもしれないよ。」
クーたん「本当かい!?ありがとう、さいこうさ。キノコ椅子の森なら、ちゃんと道は覚えている。ウバウサにあってくるね!それじゃ!」
クーたんは、さいこうさにお礼を言った後、また一生懸命自転車をこいでキノコ椅子の森に向かっていった。
さいこうさ「別れには王冠が・・・王冠が必要だ。あげなきゃ、クーたんに…今まで以上に最高の王冠を・・・。」
珍しく冴えない表情でブツブツ言いながら、さいこうさは再びバイクにまたがり、去っていった。
クーたん「ぜは、ぜは・・・。ぜは、ぜは・・・。」
夢中で自転車をこいでいるクーたん。いつもはすぐにバテてしまうクーたんだが、今日は疲れを感じる余裕すらないようだった。
キノコ椅子の森に到着。世話しなく自転車をとめ、キノコ椅子に座って落ち着きなくウバウサを待つ。
程なくして、遠くからすごい砂煙と共に、信じられないスピードで小さなウサギが走ってくる。
ダダダダダダダダダッ
ピタっ!
ウバウサ「あたしのだもの。」
クーたんの前でピタッと止まるウバウサ。
ウバウサ「クー、どうした。元気ないもの。」
クーたんの表情を見てちょっと心配になるウバウサ。
クーたん「ウバウサ、フツウサの家の場所を知っているかい?」
ウバウサ「知ってる。この前遊びに行ったんだもの。ドア壊しちゃったけど。」
クーたん「教えてくれウバウサ!フツウサの家にどうしても行きたいんだ。」
ウバウサ「いいぞ。クー。」
クーたん「ありがとう!」
タタタッと自転車にまたがり、ウバウサの前に来るクーたん。
クーたん「それで、どっちの道を行ったらいいんだい?」
ウバウサ「よし、いくぞ、よーい、ドン!」
ウバウサはススッと後ろに回りこみ、クラウチングスタートの体勢をとるやいなや、自転車に乗ったクーたんの背中に、ものすごい勢いで体当たりした。
ドゴーン!
クーたん「う、う、うわっわわわわ!?」
ものすごい衝撃を背中に受けたクーたんは、森の木々をかき分け、枝を折りながら、信じられないスピードで走って(飛ばされて)いった。
ウバウサ「か・・・加減は・・・したもの。」
ウバウサはちょっとやりすぎたような気がしていたが、口笛を吹いて誤魔化した。
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