第16話 執念というものを知った日
次の日の朝。
フツウサはお手製のキノコの椅子をもって、あの森に出かけて行った。
森のキノコ椅子のところにそろりそろりと近づいて、キョロキョロと周りを見回すが、まだあの小さなウサギは来ていないようだ。
フツウサ「よし!」
さっそくフツウサは森のキノコ椅子のそばに、お手製のキノコ椅子を設置した。
フツウサ「うん、そっくりだ。」
これなら、あの小さなウサギとおしゃべりできるかもしれない。
そう思ってフツウサは草の陰に隠れて小さなウサギが来るのを待った。
フツウサが、草の陰に隠れたまま、虫を観察したり、地面にお絵描きをしたりして待っていると、あの小さなウサギが現れた。
?「ビクッ」
小さなウサギは、いつものキノコ椅子のとなりに、新しいキノコ椅子があることに気づき、とても驚く。
ワクワクして見守るフツウサ。
ピョコン!
フツウサ「あ。」
しばらく二つのキノコ椅子の前でオロオロしていた小さなウサギは、なんと上半身は森のキノコ椅子につかまり、下半身はフツウサお手製のキノコ椅子に引っ掛けるというようにして、小さな身体を投げ出すように、両方のキノコ椅子を占領した。
ガサガサッ
びっくりしたフツウサは、見つからないように草の陰を後にし、そのまま森の入り口へと逃げるように走っていった。
?「あたしのだもの。」
小さな身体を大きく使い、二つのキノコ椅子を占領したウサギさんが、ポツリとつぶやいた。
その日のお昼。
クーたんと一緒に、おりぎりを食べながらお話をしているフツウサ。
クーたん「そっかぁ。キノコ椅子増加作戦はうまくいかなかったんだね。」
フツウサ「むぅ。」
フツウサは、残念そうな表情をしながら、おにぎりを頬張っている。
クーたん「しかし、その小さなウサギさんから、そのキノコ椅子への執念みたいなものを感じるね。」
フツウサ「執念か・・・。」
フツウサは残ったおにぎりをパパっと食べ、一気にお茶を飲みほす。
フツウサ「またやってみるよ。」
クーたんに別れをつげて、タカタカと走っていくフツウサ。
クーたん「うまくいくといいね、フツウサ。」
クーたんは、少し寂しそうに笑って、フツウサの後姿を見送りながら、ヒラヒラと手を振った。
家に帰ったフツウサは、二度目のキノコ椅子作成に取り掛かる。
フツウサ「むふふ、椅子が三つになったらどうなるかな。」
フツウサは、ワクワクしながら、器用にキノコ椅子を作り上げた。
そしてその日の夜はドキドキソワソワしてしまって、おふとんに入っても、なかなか眠れなかった。
クーたんにもらった塗り薬が良かったのか、小さなウサギの強烈な体当たりで傷ついた身体は、すでに大分良くなっているようだった。
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