第三章 奪兎

第14話 初めてあの小さなウサギを見た日



「クーたん、行かないで。」




第三章 『奪兎』



 ある日も、フツウサはタカタカと走っていた。


 季節は移り、フツウサが思いっきり走ってもそんなに汗をかかないような気候になっていた。


 いつものように目的地を決めずに走っていたフツウサ。今日は、なんだか初めての森の中に入ってきた。


 キョロキョロ周りを見渡しながら、グルグルと走っていく。


フツウサ「大分走ってきたな。」


 フツウサの顔の先、木々のちょっと開けたところに、腰かけるのに丁度よさそうなキノコが生えてるのが見えた。


フツウサ「ちょっと休憩しよう。」

 

 フツウサが、キノコに座って休憩しようと近づいていくと、ヒュンと何かがフツウサの前を横切る。


?「あたしのだもの。」


フツウサ「あれれ?」


 フツウサが座って休憩しようとしていたキノコに一羽のウサギがいつの間にか座っている。


 大きくクリクリした目、カワイイ花の飾りを頭につけた白い毛の小さなウサギ。初めて会うウサギだ。


 フツウサは、話しかけようかと思ったが、なんだかちょっとこわくなって、そのままタカタカと森の入り口の方に逃げるように走っていってしまった。




 夕暮れ時、クータンと歩いているフツウサ。


フツウサ「クーたんあのね・・・。」


 ちょっと下を向いて話をするフツウサ。


クーたん「どうしたの?」


フツウサ「今日、森で新しいウサギさんを見たんだ。」


クーたん「へぇ、新しいウサギさんね・・・。友達になれるといいね。」


 ニコッと笑うクーたん。


フツウサ「う、うん・・・。うん、そうだね。」


 少し何かを言いかけたフツウサだったが、すぐにニコッと笑って、また明日、あの森へ行ってみようと思うのだった。

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