第13話 クーたんに大好きって言えた日
またとある日。今日もフツウサはクータンと夕暮れ時を歩いている。
今日のフツウサはちょっと浮かない表情。いつもは、ピンと立っている耳もダラーンと下がってしまっている。気になったクーたんがたずねる。
クーたん「フツウサ元気ない?」
フツウサ「ふむぅ・・・。」
フツウサはため息をついた。
フツウサ「明日デンシャに乗ってオオミヤコに行かなきゃいけないんだ。」
クーたん「オオミヤコ・・ここからはちょっと遠いところにある大きな町だね。地図では見たことあるけど、行ったことはないな。」
二羽はテクテクと歩きながらお話をしている。
フツウサ「オオミヤコにお花を描く先生がいてね。たまにフツウサが描いたお花の絵を見せに行くんだ。」
クーたん「ふむふむ。」
フツウサ「なんかね・・その先生、お花の絵の描き方を教えてくれる時にね、雷を落とすんだよね。ピカッピカッドカンッ!って。」
クーたん「あぁ、癇癪を起こす先生なのね・・・」。
フツウサ「なんか怖いんだ。急に雷落ちるから。」
クーたん「なんか怖いんだね・・急に雷落ちるから。」
フツウサ「ちょっと行きたくないなぁ。」
クーたん「ちょっと・・・行きたくないんだね。」
フツウサ「うん・・・。」
クーたん「・・・。」
フツウサ「・・・そうだ、クーたんにフツウサのお花見せてあげるね。」
ゴソゴソと手提げから1枚の絵を出してクーたんに見せるフツウサ。
クーたん「わー。上手だね。」
フツウサ「うふふ。」
得意げな顔をしているフツウサ。
フツウサ「クーたん、聞いてくれてありがとう。明日頑張ってくるよ。フツウサ、お花の絵がもっと上手になりたいから。」
クーたん「ふふ。頑張ってね。」
二羽はその後は楽しくお喋りしながら、いつものところまで一緒に歩いて、お互いの家に帰っていった。
オオミヤコに行く日の朝は早い。
フツウサ「頑張らなくちゃ!」
フツウサは必要最低限の荷物だけを持って、外に出た。
オオミヤコのお花の絵の先生のところに行くにはデンシャに乗っていかなくてはならない。
デンシャに乗るには、エキに行かなくてはならない。
エキはフツウサの家からは遠いところにある。
フツウサ「さぁ、出発だ!」
フツウサは、いつものようにタカタカと走り出した。
まだお日様は出始めたばかりだけど、もう十分に気温は高く、走るフツウサは汗をいっぱいかいた。
しばらく走って、やっとエキが見えてきた。
フツウサ「あれ?」
エキの前に何かがいる。
クーたん「やあ。」
いつもの挨拶だ。
そこには、いつもより膨れ上がったリュックを背負い、オシャレなオレンジの帽子をかぶり、そして、手には大きな地図を持ったクーたんが笑っていた。
クーたん「一緒にいくよ。ちゃんとおにぎりも持ってきたよ!」
フツウサ「クーたん!」
全速力で走るフツウサがクーたんに飛びつく。
フツウサ「クーたん大好き!」
クーたん「わわっ!」
フツウサが飛びついた勢いのまま、クーたんの大きなリュックの重さも相まって、二羽はゴロゴロ、ゴロゴロと転がってしまった。
クーたん「ふぅっ。やっと起き上がれた。」
大きなリュックとフツウサにサンドイッチされていたクーたんが、やっと体制を立て直す。
クーたん「しかしあらためて、大好き!って、力いっぱい言えるのって、とっても素敵なことだねぇ、フツウサ。」
キラキラニコニコしているフツウサもスクッと起き上がる。
フツウサ「うふふ。とっても素敵なことだねぇ、クーたん。」
早朝のエキには他には誰もおらず、ただ二羽の話す言葉と、セミの鳴き声だけが響いていた。まだまだ今日もとても暑い日になりそうだった。
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