第12話 クーたんと水鳥を見た日
またとある日、夕暮れにはちょっと早い時間に川沿いを散歩しているクーたんとフツウサ。
クーたん「鳥さんがいっぱいいるね。」
フツウサ「カモカモ、カモーン!」
クーたん「カモさんは、どこから来て、どこに行くんだろうね。」
フツウサ「みんな、初めて見る顔だね。」
クーたん「フツウサには、カモの顔の違いがわかるのかい?」
フツウサ「なんとなく!」
クーたん「うふふふ。」
フツウサ「うふふふ。」
太陽の光がキラキラと反射された川を横目に二羽のウサギは幸せそうに歩いていた。
クーたん「お。」
ふと前を見ると、向こうから二羽のウサギが歩いてきていた。
クーたん「やあ、メロウサさん、こんにちは。」
フツウサ「やあ。」
メロウサ「ごきげんよう、クーたんに、フツウサ。今日も暑い日だったわね。」
大きな真っ赤なリボンで二つの長い耳を束ねているエレガントなこのウサギはメロウサ。毛の色は白で、目の色が赤い。クーたんも、フツウサも、まだこのウサギとは知り合ったばかりでよくわからないが、‟女性らしさ”というものをとても強く意識しているウサギのようだ。
クーたん「あれ、そちらは?」
メロウサの隣を歩いているウサギは、クーたんも、フツウサも見たことのないウサギだった。
両耳は長く垂れていて、黄色いリボンがついている。毛の色はゴシックな白と黒で、まるでスーツを着ているかのようにも見える模様。手には自分の身体と同じくらいの大きさのぬいぐるみを持っていて、大きく下僕と書いてある。
メロウサ「うふふ、かわいいでしょ。この子は・・・」
?「のろうさです。」
メロウサの言葉をさえぎるように名乗るのろうさ。
クーたん「のろうささんっていうんだね。はじめまして、のろうささん。自分はクーたんです。」
フツウサ「こんにちは、のろうささん。フツウサだよ。」
のろうさ「どうも。」
メロウサ「うふふ、この黄色いリボン、私がつけてあげているのよ。かわいいでしょ。」
フツウサ「うん、かわいいね。」
フツウサはのろうさに近寄り、リボンをまじまじと見つめた。
のろうさ「ちっ、取れないんだよこのリボン。」
のろうさの表情が曇る。
フツウサ「えっ!?」
メロウサ「今後、私の妹をよろしくね。」
のろうさ「妹じゃないです。」
クーたん「えっ!?」
メロウサ「おほほ、さ、行きましょう。私のカワイイのろうさちゃん。」
のろうさ「僕は僕・・・。」
クーたん「・・・。」
フツウサ「・・・。」
メロウサはクーたんとフツウサに会釈をして、のろうさを連れて通り過ぎていった。
クーたん「なんかのろうささん不機嫌だったのかな?」
フツウサ「うーん…。ちぐはぐな二人だったねぇ。」
バサササッ!
その時、川辺にいた水鳥が一斉に飛び立つ。
フツウサ「わー綺麗だー!」
クーたん「どこかに・・・旅立っていくんだね。」
クーたんと、フツウサが見上げた先には、少しずつ夏の終わりを感じさせるような、夕暮れの空があった。
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