第4話 初めておにぎりを食べた日
晴れたある日、ウサギは今日も走っていた。いつだって気ままに行き先を決めずに走っていたウサギだが、今日は初めて、あの何かに会いたいという期待をもって昨日と同じくらいの時間に、昨日と同じ道を歩いていた。
ウサギ「あの何か、いるかな。」
ウサギが走っていくと、山の頂上の道の先に、昨日遭遇した何かがまた座っていた。
ウサギは何かと接触するために、今日も丁度良い大きさの枝が落ちていないかと一生懸命探した。
何か「やあ!」
ウサギ「ビクッ!」
なかなか丁度良い枝が見つからなかったので、今日はウサギの方が先に何かに見つかってしまった。
ウサギはスタスタと歩き、何かの隣のちょっと離れたところに座る。
ウサギ「あの・・・。今日もおにぎりですか?」
何か「うん。今日もおにぎりを持っているよ。」
ウサギ「おにぎりはなんですか?」
何か「おにぎりはなんですか・・・か。うん。おにぎりはね・・・おいしい食べ物だね。」
ウサギ「おいしい食べ物・・・。」
何か「ふふっ。自分はいつも二つ持っているんだ。ひとつあげるよ。」
ウサギは思いがけぬ何かの発言にとてもびっくりして、逃げ出したくなったが、優しくおにぎりを手渡されると、なぜか幸せな気持ちになった。
何かはさっきよりほんの少しだけ、ウサギの近くに座り、おいしそうに幸せそうに自分のおにぎりをほおばっていた。
ウサギはそんな何かを横目で見ながら、意を決して、パクリとおにぎりをほおばる。
ウサギ「・・・。」
思ったよりもおにぎりは地味な味だった。だけど、どこか優しくて元気が出るような味だった。
ウサギ「・・・!」
その時、ウサギの身体をピリッとした刺激が突き抜ける。
ウサギ「す・・・すっぱ!」
何か「あ、ごめん。梅干しだめだったかい?」
ウサギは初めて食べる梅干しの刺激に、表情を歪め、立ち上がる。
ウサギ「すっぱ!すっぱ!」
何か「あわわ、あわわ。」
ウサギの反応に何かもとても慌ててしまう。
ウサギ「ココア、ココアー!」
ウサギは梅干しのすっぱさにどうしても甘いものがほしくなって、食べかけのおにぎりを大事に抱えたまま、その場をグルグル回ったあと、タカタカと走り出してしまう。
だけど、ちょっと走ったところでピタッと止まり、何かの方にクルっと振り返る。
ウサギ「ありがとう。」
何か「・・・!・・・ありがとう。またね。」
ウサギは梅干しのすっぱさに涙を流しながらニッコリしたあと、また一目散に走り出した。
何か「友達に・・・なれるかな・・・。」
何かはニッコリ笑って小さくつぶやき、走り去るウサギの背中を見送り、ヒラヒラと手を振った。
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