第4話

「頭が痛い……」

そのころ、太郎は秋葉原の町をさまよい歩いていた。

イベント会場を逃げ出した後も頭痛は続き、耐え難い苦痛が襲ってくる。

ふらふらと歩いていると、やんちゃそうな少年たちにぶつかってしまった。

「てめえ!何するんだよ!」

少年たちに突き飛ばされる太郎。

「ご、ごめんなさい」

「ごめんじゃすまねえんだよ。こっちにこい」

太郎は少年たちに路地に引きずり込まれてしまった。

「今日の最初の獲物はこいつだな。へへ、やっちまおうぜ」

太郎を何人かで集団暴行した後、胸倉をつかんでゆさぶる。

しかし、全身を覆う激痛と、理不尽な暴力を受けたことにより、太郎の中に怒りが膨れ上がる。

「こいつらを……倒す力がほしい」

そう思ったとき、いきなり体の奥から力がわいてくる。

彼は気がつかなかったが、太郎の額に、白い下地に絵が描かれているカードが浮かんでいた。

『アンゴルモア覚醒。タレントカード『魔術師』発動」

カードの表面に文字が浮かび、魔法使いの格好をした怪人の姿が浮かぶ。

同時に、肉体そのものも変化していった。

「お、おい。なんだよこいつ。気味が悪い……」

太郎の体が膨れ上がっていくので、驚いた少年たちはつかんでいてた胸倉を話して、後ずさる。

彼らの前に、黄色いローブをまとい、ステッキを持った怪人が立っていた。

「ゲームゲームゲーム……」

不気味なつぶやき声を出しながら、少年たちに迫っていく。少年たちに向かって、警戒にステッキを振り下ろした。

「な、なんだこいつ!」

「あっ!見たことがある。タロットカードの「魔術師」だ」

少年たちの一人が、思い出したかのように叫んだ。

「ば、ばか。なんでそんなやつが出てくるんだよ……いたっ!」

少年の一人が飛び上がる。下を見ると、緑色をした粘液のようなものに噛み付かれていた。

「う、うわぁぁぁぁぁぁぁぁ!スライムだ!」

少年たちは必死に足で踏みつけようとするが、スカッと通り抜けて地面を踏んでしまう。

「こ、こいつら、手ごたえがない」

「だけど、かまれたら痛いぞ!」

そんなことを言っている間にも、半透明の魔物たちが現れてくる。

それは、怪人がささげているステッキから出ていた。

「に、逃げろ!」

少年たちは一目散に逃げ出していく。

後に残された怪人は、ニヤリとした笑みを浮かべるのだった。


「うわぁぁぁぁぁぁ!ドラゴンだ!」

秋葉原の路上に、半透明の恐竜のようなものが現れて、炎を吐いている。

「熱い!……あれ?」

炎に炙られた人は、すさまじい熱さを感じたが、実際には怪我ひとつ負わなかった。

その足元では、緑色のゴブリンたちが、逃げ惑う人々にナイフを突き刺している」

「痛い。痛い!」

さされた少女が泣き叫ぶが、実際には血が出ておらず、服も傷ついていなかった。

少し離れた場所では、ほうきに乗った美少女が、オタクたちを追い回している。

「えい!美少女戦隊スターキュア。スターフラッシュ!」

美少女から放たれた光のシャワーが、オタクたちに降り注ぐ。

「ぎゃああああ。痛い。しびれる。でも気持ちいい。もっと!」

なぜかオタクたちは魔法少女にお仕置きされて喜んでいた。

「どうやら、ダークサイドに堕ちたアンゴルモアの子が、力を暴走させているみたいだね。やっかいなことになったわ」

その様子を、ビン底メガネで黒ジャージの女がいまいましそうに見ていた。

「はやく保護してやらないと。あいつらに取られてしまう。お前たち、行くよ!」

「ニート!ニートぉ!」

ジャージの女。フジョーシは、手下の黒タイツたちとともに、ゲームのキャラクターたちが暴れている秋葉原の町に乗り込んだ。

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