第8話 教師への復讐
正志のテレパシーを受けて、怒りくるって一年A組に生徒が詰め掛ける。
正志は教室の前で生徒たちと相対した。
「おい、お前が吾平って奴か?」
今どきリーゼントにしている、ちょっと柄の悪い三年生が横柄に話しかけてきた
「そうだが?」
「はっ!変なことをしやがって!さっさと俺たちを外に……ぐあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
威勢よく詰め寄った三年生だったが、次の瞬間激痛を感じて床を転げまわった。
「おいおい。お前達の支配者に対して、口の利き方がなっていないな。こいつは罰として最初の犠牲者になってもらおうか。どうせ、こんなやつ生きていてもたいした価値はねえだろう」
三年生を引きずって教室に戻る。恐怖に震える視線を向けてくるクラスメイトを尻目に、近くにいた光利と啓馬に命令した。
「おい。こいつを窓から放り出せ」
実に残酷な命令をする。1-Aの教室は三階の高さにあった。
「「ふ、ふざけるな!俺たちに人殺しをしろっていうのか!」」
当然ながら、彼らは拒否するが、正志はせせらわらった。
「ふん。俺を自殺寸前にまでいじめていたくせに、今更何を言っている。お仕置きだ。死んでろ」
さらに50発ずつ自傷パンチを追加すると、クラスメイトたちは血まみれになって悶絶した。
「さて、自発的に手伝おうとする奴はいないのかね?すこしは罪が軽くなるかも知れないぞ」
正志が周囲を見回すと、あわてて何人かのクラスメイトの男子生徒が昏倒している三年生を持ち上げ、泣きながら窓の外に放り出す。
「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
三階から放り出されて、地面に激突したその三年生は壊れた人形のように動かなくなった。
「きゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
「本当に落としたぞ!」
それを見て、集まっていた生徒達は逃げ出していく。
「面白くなってきた。次は警察とマスコミが来るまで、次の準備を始めるとしようか」
正志はそれを見ると、満足してニヤリと笑い、教室から出て行く。
クラスメイトたちは安堵と不安で震えていた。
生徒たちが去ると、つぎに教師たちが押し寄せてくる。
「吾平君。馬鹿なことは止めなさい。君は何をしているのかわかっているのかね?」
頭が禿げた校長が正志に詰め寄ってきた。彼はいつもは教育者然とした紳士だったが、この異常事態に余裕が無くなり、目が血走っている。
「もちろんわかっているとも。お前達も現状を理解するがいい」
偉そうな教師たちに責められても正志は恐れ入らない。
権威が通じず、校長は頭に血を上らせた。
「き、君は退学だ!」
「馬鹿かお前は。もうそんな次元の話じゃないんだよ」
正志は鼻で笑うと、校長の首をつかんで持ち上げた。
「く、苦しい!話せ!」
「ふんっ!」
正志はそのまま力を入れ続ける。しばらくすると、校長は涎を垂らして舌を垂らした。
「人間って、簡単に死ぬもんだな」
正志はあざ笑いながら、校長の体を投げ捨てる。あわてて駆け寄った教師たちは、校長が呼吸をしてないことを知って真っ青になった。
「ほ、本当に殺した……」
「ああ、殺したさ。それがどうした?」
全く罪の意識を感じてない正志に、教師たちは心底恐怖を感じる。
「吾平くん、ど、どうしてこんな事を……まじめな生徒だったのに」
英語の担当だった、今年教師になったばかりの女教師が震える声で聞く。桃井杏という名前で、生徒と間違われるほど小柄で可愛らしい。
「桃井先生か。あんたも不運だな。よりによってこんな学校に来るなんて。まあ、こんなことになったのは、すべての原因は俺を苛めたクラスの奴等と、それを止めるどころか助長していた岡田のクズ教師のせいだよ。恨むならそいつらにしな」
そっくりかえって正志は言う。
「岡田先生は立派な教師だわ。苛めの助長なんてしない!私の事も誠実に指導してくれてるし、生徒たちからも慕われているわ」
ムキになって言う桃井教師だったが、正志はそれを聞いてあざ笑った。
「ふーん、どれどれ……」
桃井の脳にアクセスして、情報を探る。すると、ある感情が伝わってきた。
「そうか。アンタは岡田に惚れていたのか。アンタの情報もビンビン伝わってくるからすぐわかるぜ」
「なっ!」
いきなり自分の心を指摘され、桃井は真っ赤になる。
「馬鹿な女だ。あんたの惚れている教師が、どれだけ醜い人間かも知らずに」
「そんなことはないわ!」
きっとなる桃井に、ますます笑みを濃くする正志。
「なら、そいつが今まで何をしてきたか、本人に聞いてみようか。そこでこそこそ隠れている岡田。こっちにこい!」
正志は教師達の一番後ろにいた岡田に命令した。
「だ、誰がお前などに……くっ、また!」
あわててその場を離れようとするが、足が勝手に動いて正志の前にくる。
「よし、そのまま正座して、自分の指を前にだせ」
岡田の意思は正志の命令に逆らおうとするが、体は勝手に正座して、指を前にだす。
「では、質問だ。お前は本当に俺がこんな事をする理由に心当たりがないか? 」
正志が冷徹に質問すると、岡田は顔を真っ赤にして否定した。
「な、ない。お前が異常な殺人者なだけだ!」
「そうか……なら今から質問する。嘘を言うたびに、お前は自分で自分の指をおることになる」
正志の言葉に従って、岡田の右手が左手の指にかかる。
「なぜ俺が入院している間に、机の上に花瓶が飾られていたのを放置した? 」
「そ、そんな事は私はしらない……はぎゃ! 」
否定した瞬間に岡田の右手が動き、左手の小指が折られる。
すさまじい痛みがカラダに走り、岡田の目から涙がこぼれた。
「なぜ放置した? 」
「き、気がつかなかったんだ……ぐっ!」
左手の薬指もおられた。
「お、岡田先生、やめたまえ……くっ!体が動かない」
この異常な拷問を止めようとした教師達だったが、彼らの体も硬直する。
「邪魔をするな。質問を続ける。なぜ放置した? 」
「わ、悪ふざけだと思っていたんだ。冗談だと思っていた。悪かった!! ぐっ!」
とうとう正座したまま謝罪する岡田だったが、中指も折られた。
「花瓶を飾る意味は? なぜ俺がそんな事をされたんだ? 」
「だ、だから罪のない冗談で……いた!も、もう止めてくれ。悪かった!」
涙を流して謝罪するが、ついに人差し指も折られた。
「花瓶を飾る意味は? 」
「い、苛めだ!お前をクラスの連中が苛めて楽しんでいたんだ! 」
泣きながら苛めがあった事を認める岡田。初めて親指にかかっていた右手が離れていった。
「そんな……岡田先生が、苛めを知ってて放っていたなんて!」
桃井が真実を知って驚き、同時に蔑みの視線を向けた。
「なんでお前はそれを黙認していた? 」
「……」
「言え!さもないと……」
「仕方なかったんだ!今どきの餓鬼どもをまとめるには、苛めを利用してクラスを一丸にするしかなかった!そうしないと誰も勝手なことばかりするようになる!」
泣きながら勝手な事をいう岡田だった。
「ふん。だがな、苛めの対象にされる俺にとっては迷惑な話だ」
「すまない……許してくれ。俺が悪かった!」
土下座して謝る岡田だが、正志の怒りは収まらない。
「まあ、今までその方法で世の中を上手く渡ってきたんだろう。誰かを悪者にして苛めの対象にする事で、自分は上手く立ち回れる。だが、今度ばかりはそうもいかなかったな。周りをみてみろ。お前のせいで巻き込まれた人間がどう思うか……」
その言葉にはっとなって周囲を見渡すと、自分をみつめる冷たい目と合った。
誰もが侮蔑するような目を向けてくる。
「くくく……当分誰もここから出られない。今の会話は全校生徒にテレパシーで伝わっている。お前と1-Aの連中がこれからどう扱われるか、楽しみだ」
そう言い放つと、その場を去ろうとする正志だったが、呼び止められた。
「待って!」
振り返ると、涙を目にためている桃井と目が合った。
「なにか用か?」
「あの、岡田先生は確かに最低の教師だったわ。同じ教師として、あなたの苛めを気がつかなかったことを謝ります。彼にはキチンと責任を取ってもらうわ。だからもうこんな事は……」
「止めろとでもいいたいのかい?」
正志は桃井の言葉を途中で遮った。
「ええ。貴方の傷ついた心を私が癒してあげたいの。それが教師としての勤めだとおもうから」
そう言う桃井からは、確かに誠意が伝わってきた。
しかし、正志の中に湧き上がってきた感情は同情された嬉しさではなく、むしろ滑稽さだった。
「ぷっ……アッハッハッハ!やめてくれよ。俺を笑い死にさせたいのかい」
腹を抱えて笑う正志に、桃井は怒る。
「何がおかしいの!」
「さっきまで岡田の事を立派な教師だとほざいていた無能なアンタごときに、人の心をどうにかできるのか?どこまで思い上がっているんだ」
「くっ……」
そういわれて、桃井は何もいえなくなる。
沈黙した桃井に向けて、正志はさらに続けた。
「残念だが、俺には目的がある。復讐など個人的な楽しみにすぎん。アンタみたいなちっぽけな人間に出来る事なんて、何もないんだよ。それでも俺の助けになりたいというなら……」
「いうなら?」
「俺に魂を売ることぐらいだな」
正志は思い切り顔をゆがませて、傲慢に言い放った。
「魂って?」
「要するに、俺に従うってことだ。俺に一生服従して、全ての言葉に従え」
「なっ……」
それを聞いた桃井は絶句した。
『お前たちにも言っておく。俺に魂を売れば、救いの手を差し伸べてやろう』
その言葉はテレパシーとなり、全校生徒の脳に直接伝わった。
「ふざけんな!お前なんかに従うか!」
「そうよ!」
学校のあちこちから反抗する声が聞こえてくる。
『ふふふ……無駄な抵抗をすればするほど苦しむことになる。服従か死かだ。まあ、これからじっくりお前たちを苦しめてやろう。まあ、魂を売りたい奴は校長室にこい』
そういうと、正志は高笑いするのだった。
「さて、俺を崇める信者を集めるとするか」
そのまま教師達を置き去りにして、正志は放送室に向かうのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます