第3話 序章「蒼い来訪者」
私の霊力が弱いから、早々に強いケモノ巫女を作るため、子供に神を受け継がせる神移しの儀、つまり霊力が強くなる男と子作りして烈火狼のケモノ巫女いふさわしい適格者を作ると言う話だが。
世界を滅ぼす魔王復活を阻止するための使命と言うか、世界の常識よりも大切な事ではあると、少しは分かるが、やはりこの年で子供を生むのはどう考えても許容出来る物では無い。
だからケモノ巫女、異能力者としての今の生活を辞める事を決めた。
それで一人で自活出来るようにと、得意の小説で一発当てて、
自分が強くなって、
それは完全に無理。
たまに稽古で下巫女の序列1位とは何度か戦った事があるが、私は一回も勝った事が無いのだ。
それくらい私の霊力は弱い。
それは長巫女様が千年修行しても無理と言われた通り、元の霊力も潜在的な能力も、本当に何も無いダメ巫女なのだ。
熱血少年漫画ならこんな時、あっと驚く修行かトレーニングをして、試合当日に回りをビックリさせたりする物だが。
毎日修行しても、同じ修行量で回りのみんなが100強くなる事に対し私は1。
母親が強かったから、何か血統的な強さや覚醒があっていいと思うけど、老巫女様に調べて貰った結果、霊力的な力の潜在能力は皆無と断言されている。
そう私は全く持って、ケモノ巫女、異能力者として、強くなる見込みが無いのだ。
唯一ある力は私の守護神である、
それしか無いのです。
そして烈火狼様がいなければ、私は恐らく下巫女、それも序列最下位の下巫女より霊力が無いと言われている。
つまり何が言いたいかと言うと、戦う方向に持っていっても、序列1位の下巫女と戦って私に勝ち目は無いと言う事だ。
戦って勝つのは100%無理! だから小説でお金稼いで龍ヶ崎市を出ていこうと考えた訳ですが…無理でした。
現実の異能力者の生活なんてこんな物です。
「こんな田舎の風習みたいな事で、私の初めて無くさなきゃいけないなんて……」
「憎い…貧乏が…そして…死にたい」
「くうーん…」
「…! 烈火狼様…?」
塞ぎこんでいると、突然耳元に犬の心配するような声が聞こえるので顔を上げると、緋色の狼が心配するような視線をこちらを向けていた。
それは私の守護ケモノ神、烈火狼様だった。
その視線に何か居たたまれない物を感じた私は、烈火狼様から何となく視線を外す。
そして呟くように言う。
「ごめんね烈火狼様、弱い巫女でごめんね…」
「………わふっ!」
「え…?」
烈火狼様は視線を外した先に、回り込むように立つと、まるでそんな事は全く思ってい無い事を示すように、頭を大きくかぶり振る。
「ほんと…? 怒ってない?」
「わんっ!」
今度はイエスを示すように元気よく鳴く。
「じゃあ私がケモノ巫女の使命を投げ出して、小説家になって龍ヶ崎市から出ていっても烈火狼様は付いてきてくれる…?」
「あんっ! わふわふ…」
「え? きゃ…くすぐったいですよ烈火狼様…!」
今度のイエスは、そんな事は関係ない、自分はどこまでも付いていく事を示したいかのように、烈火狼様は私の頬をしきり舐めてくれた。
「や! くすぐったいですよ烈火狼様…もう…うふふ…」
「わんっ!」
「…でもありがとうございます、私もう少し頑張って見ようと思います!」
「あおーんっ!」
「…! わわわダメですよ、烈火狼様大きな声を出しては、またお隣さんが…!」
「くーん…」
私の言葉に少し耳を垂らしてしょげる烈火狼様。
そんな烈火狼様を見て私は、分かれば良いと頭を撫でる。
「…うふふ」
「…! わんっ! くううん…」
気持ち良さそうに薄めになる烈火狼様。
火を冠するケモノ神だけあって、その毛並みの手触りは暖かく、そして柔らかいとても気持ちの良い手触りだった。
私は生まれた時から、烈火狼様と一緒にいたせいか、その手触りにとても安心した物を覚える。
そしてもし負けて子供を作る事になってしまったら、この手触りともお別れなんだ。
そう思うと、とても…何だかとても何とかしたくなる、そんな想いが胸のそこから溢れ出てくるのを私は感じた。
それを感じた
「まだ下巫女と戦う期日まで時間があるんだ、最後の最後まで頑張って見よう!」
「わんっ!」
そう思った私は、再び新しい小説を書くために、パソコンのキーボードに手を置く。
この生まれてからずっと相棒だった、烈火狼様のためにも。
そのために私は最後まで出来る事をやるのだ。
…? あれ異能力者を辞めるなら、烈火狼様と一緒にいるのも辞めなきゃいけないのかな? えーと…まあそこら辺はご都合主義でいいか、うん。
そう気持ちを切り替えた私は、新たな小説を書き始めようと、文字入力キーに力を込めようとしたその時だった。
そこで私はある事に気付く。
それは小説サイトの、感想コメントがいくつ来ているか分かる数字の場所。
「あれ…感想が4つになっている…?」
「わふ?」
「…おかしいな確か3つだと思ってたけど…まあいっか」
少し変に感じつつも、これから新たな小説を書く景気づけにと、その感想を見るためにクリックする。
「あ…もしもまた悪口みたいのだったら…」
一瞬脳裏を横切った言葉が、感想を見るのを躊躇ってしまうが、既にカチリとボタンを押してしまった後だった。
『これが私の最初のカードか』
「………え? 何これ? え? 感想?」
ディスプレイに映し出されたのは、小説の感想にしては、あまりに不可解なコメント。
「縦読みって奴…? でも一行しか無いし」
以前茶乃に聞いた事があったが、ネットの世界では、横書きの文章を縦に読むと、別の意味が隠されている場合があると聞いた事があって、それかと思ったがどうやら違いそうだ。
「何だろうこれ…私の最初のカードって…あれ? また感想が増えてる…」
意味不明な感想に頭を悩ましていると、いつの間にか感想の数がまた増えている。
「…おかしいな…私更新ボタン押したっけ?」
確かこの小説サイトは自動更新では無いので、本来は更新ボタンを押さないと、新しいページにはいかない筈だったと記憶していたが。
「いつの間にかバージョンアップでもしてたのかな」
少し不思議に思いつつも、新たに増えた感想にカチリ。
『弱そうな奴だな…ハズレか』
「なっ…」
何これと言いたかったが、あまりの内容で言葉に詰まり絶句する。
何? 何なのだこの感想は? 私の小説が弱い? 私の小説の戦闘力を数値化でもしているのか? 確かに面白く無いのかも知れないけど、わざわざハズレなんて書かなくても良いのに。
「もう嫌なら見ないでよ! あれ? また感想が来ている…」
『まあ公平なルールの結果だ、仕方無いこれで我慢するか』
「我慢…? は…!」
これで我慢すると言う文章は、つまり私の小説で我慢すると言う意味に繋がる、これはもしかしてまさか…。
何処かの出版の編集者に、私の小説が目に止まって、私の作品をラノベ化しようと考えていると言う事?
我慢って言うのがちょっと気になるけど、きっと新しいラノベ作品の企画を考えてたけど、適当に良いのが見つからなかったところに、私の作品が目に止まったと言う感じなのかも知れない。
となれば。
「…! いけないすぐ返信を返さなきゃ!」
ここでチャンスを掴めば、中学生小説家も夢じゃない筈。
ここは編集者様のご機嫌を損ねないように、慎重に返信しなくてはいけない。
さて何と書くか…。
「えーと…拝啓編集者様…うーんとえーと……あれ? また感想が増えてる…」
『今から行くから』
「……えええ!?」
今から!? 今からってどう言う事!? ここに来るって事!?
突然の言葉に、何をどうすれば良いのか、その場でバタバタするしか出来ない。
すると。
「また来た!」
『上を見ろ』
「上…? …!」
書かれていた通り上を見ると、そこには驚くべき光景が広がっていた。
「何…これ」
何と見上げた先の天井一面が、青白い不思議な発光現象が起きていたのだ。
「まさか…
弱いとは言え、それなりに普通とは違う、ケモノ巫女として生活を送ってきたのだ。
この程度の超常現象くらいで、驚いたりはしない。
「烈火狼様!」
「わふっ!」
敵である半魔だと思った私は、烈火狼様に呼び掛けて私の中に入ってもらい、その神の力を得て戦うケモノ巫女へと姿を変える、神降ろしを行う。
瞬く間に狼の耳と尻尾を生やした巫女の姿へと変わる。
そして烈火狼のケモノ巫女だけが持つ、破邪の神刀【烈火浄砕牙(れっかじょうさいが)】を呼び出し携えると、剣を光っている天井に向け、来るであろう敵に備える。
霊力が弱いとは言え、烈火狼のケモノ巫女として、生まれた時から日夜訓練をして、烈火狼のケモノ巫女が代々伝えてきた古代刀術、烈火破邪刀術(れっかはじゃとうじゅつ)は一応極めているのだ。
だから半魔と戦う気構えくらいはある。
…自分でトドメを刺した事は無いけど。
「さ、さあ来なさい半魔! …ってあれ? この部屋で戦ったら不味いよね」
そうだ、こんな狭い部屋で半魔何かと戦ったら、お隣さんにまた怒られちゃう…! じゃなくて私の部屋が壊れちゃう。
ここを失ったら私の生きていく場所ががが。
とは言え、とりあえず半魔が出てきてくれないと何も出来ない。
ここはあの光から、半魔が出てくるまで待つしかない。
そう思った瞬間だった。
まるで自分の意思に反応したかのように、天井の光が戦慄くように震える。
そして何かが光の中から飛び出て来るかのように、光の中心が膨れ上がる。
来る───。
いよいよ出てくると思われる敵にゴクリ、と固唾を飲む。
そして握る剣の柄に一層力を込め、さらに自身の警戒レベルを高める。
『わんっ! ぐるる』
自分の中にいる烈火狼様も、完全に戦闘モードだ。
戦う覚悟はもう万全。
来るなら来い───。
意識の一点は完全に天井だけに集中していた。
そしてその時は来た。
敵が現れるその時が。
下からだったが。
「下から来たりするのよね」
「え? 下…きゃ!」
声がする方に視線を向けると、自分の足と足の間から、挟むような形で人間の頭が飛び出ているのに気づく。
「ひ………あ?」
異能力者生活が長い私でも、流石にこの現状に大声をあげそうになってしまったが。
しかし眼下に映る、自身の足の間から出ている頭、顔は、北海の蒼い海を思わせるコバルトブルー色の長めの碧髪、そして御子奈様にも劣るとも勝らない白い肌、そしてこちらを覗いている金色の目、その全てが女の私でもはっ、と息を飲むほど美しい少女だった。
まあそんな美少女が私の股下から頭を出しているのは、かなり変な光景だが。
「白か…」
その美しさに圧倒され呆けていると、その碧髪金眼の少女は、いつの間にか視線を外しある一点を見ていた。
何を見ているのか、私はその視線の先を追ってみると、それは自分の腰の中心、両足の付け根の部分、それを下から覗いているから…。
「…! わわわ見ないでくださいっ!!!」
何を見ているのか気付いた私は、とっさにその場所を手で覆い隠す。
「…? 何故隠す? 私はお前の主人なんだぞ、許可なく隠すな」
「隠すなって…そんな事出来る訳無いじゃ無いですか! と言うか見ないでください!」
主人? な、なんだろうこの半魔、さっきから意味が分からない事を。
それよりこの少女は何処から出てきたのか。
それを確認しようと後ろを確認すると、どうやらベッドの隙間から出てきたらしい。
じゃああの天井の光は何なのか。
疑問に思った私は、意を決してその半魔に問いかける。
「あ、貴方どっから来たの!? それにあの天井の光は何!?」
「ん? 天井の光はトラップだ」
「トラップ…やはりあの光は何かあるんですね!」
「ああ…お前あそこから何か出てくると思っただろう?」
「え? まあ…」
「だからトラップだ、私はお前の予想と反して下から出てきてお前はびっくりしたからトラップ大成功」
「? それ…何の意味があるんですか?」
「突然天井が光って美少女が降ってきた! なんてお決まりなパターンで登場するのが私は嫌なんだ、だから上にダミーの登場演出を作ってベッドの下から出てきた。それだけだ」
「はあ?」
この半魔が何を言ってるのかさっぱり分からない。
これも油断を誘うためなのか。
それなら合点もいくが、しかし私の虚を突くためのトラップと言うなら、何故攻撃をしてこないのだろうか。
変な半魔だ、いや天井の光には他に何か仕掛けがあるのに違いない。
「う、嘘よ! 天井の光には他に何かあるんでしょう!」
「…? 別に何も無いが」
「嘘!」
「無いって、ほら」
「あ、消えた…」
碧髪の少女が親指をパチリと鳴らすと、光が消え元の天井に戻る。
あれだけ意味ありげに天井を光らせてたのに、普通に消してしまうとは、一体どういう意図があったのか。
「だからお前が考えているような意図は無いって」
「え?」
あれ? 今口に出して喋っていたっけ。
「喋って無いな」
「…!」
また…! まさかこれって…。
「そうお前が考えている事」
「こ、心が読めるの!?」
「そう言ってる」
しれっとした感じに言う半魔の少女。
しかし心を読むとは凄い強敵じゃないか、今までこんな能力を持った半魔など見た事がない。
もしかしなくても、私なんかが勝てる相手じゃないのは明白だ。
ともあれここで戦いになるのは不味い、場所を変えて他のケモノ巫女に知らせないと…。
「…心読がまれてるって分かってるのに…頭悪いのか、やれやれ」
「あ…く!」
そうだった、心を読まれるなら、頭の中でいくら考えても筒抜けになってしまうのだ。
そんな簡単な事に気づけなかった事に、少々の恥ずかしさと焦燥を感じる。
とは言え、今は考えた事以外、他にやれる事は無い。
そう思った私は、アパートの窓の方まで飛び退る。
「ほお…弱い割に思い切りはいいようだな」
「く…私の考えが分かるならついてきなさい!」
私が窓に飛ぶ前に、思い切りがいいと言う台詞を言う事は、やはり私のやる事は先刻お見通しらしい。
これはどう考えても、私の手に負える相手じゃない。
ならば弱い私が取る選択一つ。
それは逃げる事。
とにかくこのアパートから、脱出する事を優先するしかない。
そう思った私は形振り構わず、窓の鍵を開けようとする。
しかし───。
? 開かない…? か、固いっ! 窓の鍵が恐ろしく固くなっていた。
どんなに力を込めても鍵が開くことは無かった。
もしかしたら鍵が錆び付いた可能性もあるが、もしもそれで開かないのなら、ケモノ巫女の状態の時は、人間以上の力が出ている筈だから、鍵の方がもげて壊れる筈だ。
しかし今の窓の鍵は全くそんな事にはならず、文字どおりびくともしない状態だ。
「…! …! そんな…何で鍵が外れないのよ!」
それでもグッグッと鍵を回そうと依然努力を続けるが、やはり全く動かない。
「空間を凍結した、お前の技術じゃ無理」
「は…!」
解錠に手間取っていると、いつの間にか碧髪の少女は、眼前までに迫っていた。
もうこれは本当に形振り構っていられない。
そう思った私は、窓を壊してしまう覚悟で、今も手に握りしめている、神刀烈火浄砕牙を窓に叩きつける。
しかし───。
「…! 嘘…く、えい、えい!」
烈火浄砕牙をいくら叩きつけても、窓ガラスにヒビ一つ入らない。
「はあはあ…どうなってるの…結界?」
「そんな原始的な技術じゃないよ」
「…!」
気付くと碧髪の少女は、ほぼ体に密着するくらいまで傍にいた。
その現状に気付いた私は、大きく目を見開くと、「ああああ!!」と叫び、烈火浄砕牙を少女の頭に向かって降り下ろそうとした。
こんなところで死んでたまるか───。
脳裏を支配していたのは、ただそれだけだった。
「とりあえず使い物になるようにするか」
烈火浄砕牙が降り下ろされるよりも早く、碧髪の少女は私の目の前に手を翳すとそう言った。
使い物にする? またも意味不明な言葉を言う碧髪の少女、しかしそれを深く考える前に視界が真っ暗になった。
真っ暗に。
死んだ、私はすぐにそう感じた。
死んだから目の前が真っ暗になったのだと。
だが違った。
暗くなったのは一瞬の事で、すぐに視界は元に戻り、碧髪の少女は変わらず目の前にいた。
先ほどと全く同じ光景。
だけど何かが違う違和感を感じられる。
その違和感の原因は分かった、手に持っていた烈火浄砕牙が消えていたのだ。
姿勢も、視界が消える前とは、何かが違うような気がする。
「これだけポイント使ってこれだけしか…雑魚は雑魚と言う事か…」
現状に戸惑っていると、唐突に碧髪の少女はそんな事を言う。
そして───。
「寝る…」
またも唐突にそう言うと、碧髪の少女は私のベッドに潜り込み寝ようとする。
「ちょ、ちょっと…あ、貴女私に何したの!?」
こんな状態でほっておかれても困ると思った私は、せめて現状だけ説明するように求めてみるが。
しかし返ってくる答えは。
「やりすぎるなよ…」
「はあ?」
やりすぎるなと言う、またも意味不明な台詞を残して、静かに寝息を立て本当に眠ってしまうのだった。
「だから私に分かるように言ってよ!?」
「すうすう…」
「ちょっと起きてよ!」
「だから寝てーんだよっ!」
ガン、とまた怒りの壁ドンが隣からやってくる。
「ごごごめんなさい!」
碧髪の少女を起こそうとして、またうるさくしてしまったらしい。
だけど先ほどまで碧髪の少女と対峙していた時に、既にかなりうるさかったと思ったが、何故あの時は壁ドンが来なかったのだろうか? 碧髪の少女に気をとられ過ぎて壁ドンに気付かなかったのか、まあそんなところだろうか。
とは言え、どうやらこれ以上、碧髪の少女に対して、追及を続けることは難しそうだ。
しかし───。
「どうするのこの半魔…」
まさか部屋にこのままと言う訳には行かないだろう。
だけど寝込みを襲うのも、人として気が引ける。
「やっぱりここは、他のケモノ巫女に報告して、何とかして貰うしかないか…」
自分ではまるで倒せる気がしないのだから、とりあえずこの半魔は他のケモノ巫女に倒して貰うとして。
しかしそれにしても…。
「私のベッドで寝ないでよ…」
自分の今日寝るところ、それをどうするかと言う目先の心配。
こんな恐ろしい半魔と、一緒の部屋で寝れる訳が無い。
一体どうすれば良いのか。
そんな事で悩んでいる時だった。
突然スマホの呼び出し音がなる。
スマホに映し出された名前は茶乃(ちゃの)と記されていた。
「茶乃ちゃん…? 一体何かしら…もしもし」
『知子ちゃん…!? 良かった繋がった』
電話に出ると、茶乃の声はどこかしら余裕が無いように聞こえた。
「ど、どうしたの茶乃ちゃんこんな時間に…」
『半魔が出たの!』
「え!?」
『すぐに知子ちゃんにも来て欲しいの、場所は商店街通りの公園近くだから!』
「ちょ、ちょっと待って私のところにも」
『じゃあ直ぐに来てね! それじゃ ブツ』
「半魔が…いるんですけど」
最後まで言葉を言う前に、友からの電話は切れてしまう。
本当に一体この状況はどうすればいいのか。
ともあれ弱い私にすら招集がかかると言う事は、あちらも凄い半魔が出たと言う事なのかも知れない。
こちらの半魔も気になるところだが、とりあえず合流して、後でどうにかしてもらうのが得策だろう。
そう結論付けた私は部屋を後にして、茶乃に言われた通り、商店街通り近くの公園に向かうのだった。
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