第16話 人と剣は叩いて伸ばす

「怨罪の楔、我が手で断ち切る!」


建物から飛び降りた文明少女は

頭の上に刀を構えながら

エクナに向かって降下する。

その目は獲物を捕捉した狼のように鋭く、淡い緑色に光っていた。

エクナは咄嗟に、地面に刺さった刀を引き抜き、自ら構える。


重なり合う2つの金属は垂直に交わり、衝撃により剥がれた金属膜が火花のように飛び散る。

互いの顔も見ぬまま幾度となくぶつかり合う刀と刀。その時ーー


「麗華!やめなさい。その方は来客様です!」


謎の建物の向かい。その戸の影から出てきたのは一人の男性だった


「恵奈様、ご無礼をお許しください。私は祠堂家65代御影、末末末末(かさねすえ すえまつ)と申します。どうぞこちらへ」


現れた男はこの家の住人らしい。男は自己紹介の後、エクナ達を屋敷の中へと案内した。

……御影?なにか名前の前に聞いた気がするが、エクナ達は気にせず屋敷へ入って行った。

大きな屋敷の中は見た目以上の広さで

案内された客間も明らかに規格外の広さである。刀や甲冑、上には古い写真が多く飾られている。


「先程は大変なご無礼を....ほら麗華!」


男のとなりには先程の少女が正座していた。

よく見ると緑色の瞳をしている。

相変わらずその長い髪と調和して美少女ではあるが、白い着物とその

鋭い表情が威圧感を与えてくる。


「......先程は....申し訳ない....私は祠堂家65代妖狐(イズナ)継承、祠堂麗華です。齢16歳の我が身ですが、どうぞよろしくお願いいたします。」


少女は深くお礼をして立ち上がる。

そしておもむろに帯刀してあった長刀を抜刀し、恵奈に渡した。

消し炭も残さぬような殺意を感じる麗華の目は恵奈の瞳を一点にみつめる。渡す刀に意味はあるのか。


よく見ると焼きが入っていない。

つまり模造刀である。


「一つ、測りたい心が御座いまして……」


麗華はいまにも恵奈を刺殺しかねない表情を浮かべながら

庭にある岩を指差した。

岩には一点、穴が空いている。

それは刀がギリギリ刺さるか刺さらないかというような小さな穴。


「あの岩に空く穴は”結穴”と呼ばれるもの。あの穴に確実に刀を刺すことが出来れば....貴女方を怨罪の敵では無いと信じましょう。しかし、穴から少しでもずれ、あるいはハズそうものなら.....今すぐ貴様達を殺す。」

「....!!!??」


恵奈達はあの穴に刀を刺さなければ殺される。

そう言われたのだ。

至近距離ですら正確に貫くにはかなりの技量を要する。が、

刀を受け取った恵奈はゆっくりと立ち上がり....


「覚悟は....できているわ。受けましょう」


そのまま庭へと出た恵奈は

そっと刀を構え、岩の穴一点を見つめ...そして


「あの構えは!?」

「姉さん!やめて!」

「エクナ!」


一閃の突きで全てを穿つが如く

岩へと刀を突き刺した。

-to be continue.....

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