Story02 《創世神の技量》
まだ手紙に続きがあった。思ったよりも長い。
“しかし、何も知らない貴方をこの世界に放り出すのも無責任。という事で、勇者になる方々全員に、いわゆる〈チートスキル〉を一つ配布しています。”
なに、チートスキルだと!?内容にもよるが、これは俺の生存率は跳ね上がったのではないか!?
“貴方の所持するスキルは【創世神の技量】。効果は自分でお確かめください。”
ああ、さっきも言ってたな。……その後に付け足された言葉のせいで殆ど聞いてなかったけど。
あれ、自分で確認って……どうやるんだ?
“なお自分のステータス、スキル等は〈左腕に装着された腕輪に触れる〉ことで閲覧できます。この世界に魔王を倒せる勇者は貴方だけ。健闘を祈ります。”
……本当に心を読まれているようで気持ち悪い。まあいいや、これで手紙の全てに目を通した。
それにしても左腕?あ、あった。二の腕に、ファンタジー世界の観念とマッチしていない銀色の機械が装着……いや、埋め込まれてる。だって無理に剥がそうとすると痛いし。まるで自分の皮膚みたいに。いつ着けられたんだよ。
とりあえず俺は腕に装着された(埋め込まれた)機械の中心にある水色のモニターに触れた。
その途端視界の左右に、PCモニタを見ているかのような白いウィンドウが表示される。左がステータス、右がスキルのようだ。
俺は順に左から目を通していく。
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名前:ツバサ・キサラギ
性別:男
戦闘レベル: 1
戦闘経験値: 0
創作レベル: 1
創作経験値: 0
HP 64/ 80
MP 130/130
筋力 3
耐久 6
知力 17
精神 14
器用 9
敏捷 8
SP 0
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スキルディスク 2/10
アクティブスキル
パッシブスキル
【創世神の技量】【疾走Ⅰ】
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俺の名前はこの世界でも本名なんだな。まあ気に入ってるし、別にいいけど。
あ、HP減ってる。転送時の落下のせいだろうなぁ。今気づいた。
やはりHPは生命力、MPは魔力と考えて良さそうだ。他は名前通りって感じかな。SPはスキルポイントとかだろう。ステータスがゲームっぽくて助かったよ。
しかし俺は、そういったゲームではかなり筋力寄りに振っていたのだが――
客観的に見れば俺のステータスはかなり、魔法寄りだ。
現実では運動苦手で学習成績はまあまあだったので納得はいくのだが、やっぱり筋力や耐久が心許ないな。
ちなみにHPとMPは平均100、他のステータスは平均10らしい。手紙のステータス説明の端に書いてあった。そう思えばほんとに力弱いな俺。
とりあえず、ステータスはこのくらいにして、アクティブスキルは無いみたいだからパッシブスキルを詳しく見てみよう。
【創世神の技量】
・46代目勇者に捧げられた唯一無二のスキル。外せない。
・創作経験値の取得量が著しく上昇する。
・創作レベルの上限値が限界突破する。
・ヴァレスティアに存在する、あるいは存在したありとあらゆる万物を思い描くだけで創造できる。
・ただし作成には物質相応のレベルが必要。
・創造には通常、必要レベルの2乗(秒)かかる。
おおお!これが手紙に書いてあったチートスキルか!
ありとあらゆる万物……どんなものでも作り出せるってことか?俺は試しに、飲料水、と念じてみる。
すると俺の手の中に一瞬でミネラルウォーターが出現した。しかも俺が想像した通り、500ミリリットルのペットボトルで。つまりこの世界にはペットボトルがあるのか。
こ、これはすごい!次いで、回復用ポーションを思い浮かべる。
【必要なレベルに達していません。(創作レベル3)】
あ、これレベルが上がってないと出せないものもあるのね。説明にそう書いてるじゃん。なんだかレベル上げが主軸になりそうだな。
右手に持った水を飲みながら、俺はもう一つのスキルを確認してみた。
【疾走Ⅰ】
・歩行時、走行時の敏捷を2%上昇させる。
・一定距離を移動するか、SPを一定量振り分けることによって【疾走Ⅱ】に進化する。
2%……大して変わらん!ちょっとした早歩きで縮まる誤差だ。
このスキルは当分放置しておこう。
これからどうしよう……いや、もう俺は生きると決めたんだ。その為には強くなければ。
「とりあえず、あの森の中を――」
咄嗟に声に出してしまい、違和感に気づく。あれ、俺ってこんなに声高かったっけ?
「あー、あー……」
やっぱり、元から低いほうではないけれど、普段よりも数段高い。アルトの中間くらいかな?はっきり言って女子だ。悶絶してたり泣いたりしてたときは気づかなかった。
大丈夫だよね?俺男だよね?ステータスに男って書いてあったし大丈夫なはずだ、うん。
いや、でも安心はできない。さっきから細部に違和感があるし、大体現実の俺の身体だったら、最初の落下で骨折ぐらいはしてると思う。これ、本当に俺の身体なのか?
何気にこの世界に来て始めて立ち上がった俺は海に駆け寄った。
そして、水面に自分の顔を映してみる。
「………」
美少女だ。美少女が居る。
輪郭は細く、黒というより紺色の髪は肩まで伸びている。前髪も目に入りそうなほど長く、くりっとした髪と同じ色の眼が幼さを醸し出している。
全体的な顔立ちは完全に女の子で、よく見ると身体の線も細かった。
俺は無言で耳に掛かった横髪をくりくりしながら美少年(俺)の姿に見入っていた。
――これ、本当に俺の身体、なんだよな――?
いやいや、変なことはしませんよ?だって男だし、俺だし。
そろそろ見るのやめて行こう。俺は水面から目を離した。
そういえばスキル項目で確認したいことがあったんだった。
創世神の技量って、圧倒的に必要レベルが足りないものも確認できるのか、ということ。俺は典型的な勇者の剣を思い浮かべる。
【必要なレベルに達していません。(戦闘レベル80/創作レベル160)】
あ、見れた。え?つまり、戦闘、創作共にレベルが一定量超えたら無限に勇者の剣を作れてしまうのか!?何それ怖いんだけど。
――とりあえず、まずはレベル上げだ。俺の第六感が背後の森に何かがあることを察知している。きっとこの世界にも魔物とかが居るのだろうが、俺はレベル1程度のものなら何でも作れるから大丈夫のはずだ。
「強くなって、俺は絶対に生き延びる!」
今のはわざと声に出した。自分の声が可愛いと思ってしまったのは内緒である。
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