38
コールたちが逃げたレイミアを追おうとした時だった。
後方の車両から銃を構えた南軍兵士たちが押し寄せてきた。
先頭の一人目を撃ち殺すとありったけの弾丸を撃ち込んだ。
後続の兵隊たちが物陰に隠れる。
その隙にコールは、倒れているミシェルを引っ張って物陰に身を隠した。
ウィンディはすでに物陰に身を隠している。ウィンディの無事を確認すると空のシリンダーの弾丸を交換し始めた。
「教授! 無事か!」
銃声と同時に物陰にふせていた教授は、肩をすくめながら顔を上げた。
「な、なんとか」
「俺が撃ち始めたら、その隙に先の車両に行け!」
コールはそう言って弾丸を装填し終えたコルトで兵隊たちへ撃ちまくった。
教授は体を低くしながらなんとか隣の車両に移る。
弾を撃ち尽くしたコールは、再び身を物陰に隠れると弾丸を入れ替え始めた。
反撃の銃弾が頭の上を掠め飛んでいく。
弾丸も残り少ない。弾の残っているうちにウィンディをなんとかしなくては……
敵の銃撃が激しくなっていく。顔も迂闊に上げられなくなってきた。
「くそっ!」
コールは、吐き捨てるように口走った。
敵は、徐々に距離を詰めてきている。猶予はない。
どうする……
その時、床に転がるコルトが目に入った。おそらくミッシェルのものだろう。コールは、コルトに手を伸ばした。だが、コルトは、先に拾い上げられた。
見上げたコールは、信じられない光景を目にした。
「ミッシェル?」
先程まで、血まみれで横たわっていたミッシェルがコルトを握って立ち上がっているのだ。
ミッシェルは、コールの方をちらりと見るとにやりとした。
兵士たちが撃った銃弾の何発かがミッシェルの貫いた。
だが、ミッシェルはよろめくものの倒れる事はなかった。
兵士たちは、顔を見合わせる。
ミッシェルは、素早く銃を握った逆の手で
「おまえ……
コールは驚いた表情でそう言った。
「どうやら……そうらしいわ」
ミッシェルはそう言って肩をすくめてみせる。
「危ない!」
コールが叫ぶとミッシェルを押し倒した。
ショットガンの銃弾が、椅子のひとつを吹き飛ばし、木片が壁に突き刺さった。
「なんだよ、コール。
「散弾だぞ!
二人は物陰からそっと顔を出す。
ショットガンに弾を込めている指揮官らしい兵士がいた。
吸血鬼化した元南軍将校。吸血鬼貴族を護衛する指揮官チェスター・モーティマ大佐だ。
「出てこい! 人間め! かたをつけようじゃないか!」
モーティマ大佐は叫んだ。
挑発に乗って出ていこうとするミッシェルの腕をコールが掴む。
「まてよ。相手はショットガンだぞ。どんな下手くそでも命中させれる」
「こっちは祈りの込められた聖なる弾丸使ってんだ。一発でも当たれば吸血鬼は灰」
コールは首を横に振った。
「弾は残ってるのか?」
「あと一発くらいかなぁ」
「残弾は覚えておけっていつも言ってるだろ!」
コールは、自分のコルトから弾丸を抜くとミッシェルに手渡した。
「ほら、これを使え。ありったけだ」
「ありがとう、コール」
ミッシェルが、シリンダーを開けると空の薬莢しか入ってなかった。横ではコールがやれやれといった顔をしている。
ミッシェルはバツの悪そうな顔をしながら空薬莢を抜くと弾丸を装填した。
「出てこい!
挑発を続けける大佐の前にミッシェルが立った。
「誰が
「ようやく出てきたな」
「あんたを黙らせにね」
「お前は吸血鬼になったよだが、こっちは散弾。頭か、首を狙えば肉は粉々になって再生する前に死ぬぞ」
「面白いね。やってみな」
ミッシェルは、そう言って銃をホルスターにおさめた。
大佐は、その行動に眉をしかめる。
「あの馬鹿……」
コールは、頭を抱えた。
「お前、死にたいのか?」
大佐が言った。
「ハンデを与えてやってんだよ」
「バカめ!」
モーティマ大佐がショットガンの引き金に指をかけた。銃口の先は、ミッシェルの顔だ。
引き金に力がかかる瞬間だった。
先にミッシェルが銃を抜き、モーティマ大佐の眉間にめがけて銃弾を放った!
弾丸は大佐の額を貫き、ぶれた体勢で撃たれたショットガンの散弾は、ミッシェルの左肩をかすめた。
大佐はそのまま、仰向けに倒れる。
青い炎が身体から立ち上った。
「悪いけど、わたしは、
その死体を見つめながらミッシェルは、銃をホルスターに収めた。
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