真夜中の吸血列車~Blood Western~

@zip7894

第一章

プロローグ

 19世紀後半――


 のちに西部開拓時代と呼ばれる時期も終盤を迎えようとしていた。

 アメリカ国内が二つに分かれ対立した南北戦争から二十年近く経つ。

 北部州を中心としたアメリカ合衆国と分離派であるアメリカ連合国との戦争であった南北戦争シビル・ウォーで劣勢だった北軍に勝利をもたらしたのは、最高司令官エイブラハム・リンカーンによる各軍への直接指示トップダウンと前線への徹底した物資補給であった。それを可能にしたのが当時発明されたばかりの電信と大陸中に広がりつつあった鉄道によるところが大きい。

 そしてそれを支えたのは北部最大の鉄道王コーネリアス・ヴァンダービルトの所有する鉄道会社だった。

 南北戦争後のヴァンダービルトは、乱立していた多くの競合鉄道会社を吸収していく。その後、ついに彼はアメリカ最大の鉄道王となるのだった。

 やがて鉄道会社の路線は、南部にも広がり、ヴァンダービルトの鉄道会社はさらに成長していった……。


 それは奇妙な噂からだった。

 ヴァンダービルトの鉄道会社の路線を無断で使用する列車があるというものだった。

 それだけならまだしも不気味なことに、その列車が通った街、あるいは列車が目撃された近くの街は、必ず多くの住人が行方不明になるという。

 この不気味な噂がヴァンダービルトの耳に入ったのはそう時間がかからなかった。


「それなら探偵社を雇ったらどうだい?」

 それは、あるパーティーで席でのことだった。実業家仲間との立ち話で、コーネリアス・ヴァンダービルトは、そう勧められた。

「君が問題があると思うのなら徹底的に調べてみるべきだ。同業者の仕組んだことか、線路を引かれるのを嫌がる先住民の妨害であるのか、とにかく、まずは事実を知ることが重要だよ。対策はそれからだろう」

「確かにそのとおりだ」

 ヴァンダービルトは納得した。

「で、君に何か良い案があるのかね。もし、あれば参考にしたいのだが」

 相手は、待ってましたとばかりに続けた。

「アラン・ピンカートンという男がシカゴに探偵社を作った。地元の複数の鉄道会社も支援してる会社だよ。列車強盗の追跡もしているし、今回のような話にはぴったりの連中だと思うんだがね」

 悪くない案だと思ったヴァンダービルトはその提案に乗ることにした。


 かくして、ピンカートン探偵社は、ヴァンダービルトの路線に出没する謎の列車を調査に乗り出すことになったのである。

 そしてこの事件に二人の探偵を送り込むのであった。


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