三
ガーッガーッ
突然、スケボに乗った少年達が猛スピードでやって来た。
「え!」
思わず、飛び退く。
「行け行け!」
「ヒャッホー!」
トンネルに反響する少年達のかしましい声。
「うっ……」
背中が痛い。思い切り壁にぶつけたようだ。
(おまえの娘か?)
え? 何? 今、何か思い出しかけた。
あの時、あの時も背中をぶつけた?
父ではない。もう一人いた?
「大丈夫ですか?」
壁際に座り込んだ私にジョギングをしていた人が声をかけてきた。
「あ、はい、大丈夫です。立てます」
私は礼を行って、また歩き出した。すり鉢の底を抜けたのだろう、遠くに出口が見えてきた。
再びエレベーターに乗って、門司側の地上に出る。入り口の向うには真っ暗な海が広がっている筈だ。私は震えた。もう一度、捨てられたという絶望に向き合うのか。誰か、勇気を下さい。いや、誰も背中を押してはくれない。自分で扉を開けるしかないのだ。
私は扉を押した。
そして、外へ。
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