ガーッガーッ

 突然、スケボに乗った少年達が猛スピードでやって来た。

「え!」

 思わず、飛び退く。

「行け行け!」

「ヒャッホー!」

 トンネルに反響する少年達のかしましい声。

「うっ……」

 背中が痛い。思い切り壁にぶつけたようだ。

(おまえの娘か?)

 え? 何? 今、何か思い出しかけた。

 あの時、あの時も背中をぶつけた?

 父ではない。もう一人いた?

「大丈夫ですか?」

 壁際に座り込んだ私にジョギングをしていた人が声をかけてきた。

「あ、はい、大丈夫です。立てます」

 私は礼を行って、また歩き出した。すり鉢の底を抜けたのだろう、遠くに出口が見えてきた。


 再びエレベーターに乗って、門司側の地上に出る。入り口の向うには真っ暗な海が広がっている筈だ。私は震えた。もう一度、捨てられたという絶望に向き合うのか。誰か、勇気を下さい。いや、誰も背中を押してはくれない。自分で扉を開けるしかないのだ。

 私は扉を押した。

 そして、外へ。

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