第7話 魔王の国

人間を撃退した少女は、アルバートに連れられ、森を出た先――廃墟立ち並ぶ、元々は街だったであろう場所を歩いていた。


ここで魔王殿と出会ったのは何か縁を感じる。

アルバートがそう呟いた。


少女は何故?と、尋ねる。


「この場所は――」

街の……廃墟の奥の奥、さらには、景色ではなく、遠い昔を見るように目を細めたアルバートが語る。

「この場所は、先代の魔王様が魔物とともに治めていた国だったのだ」


今では見る影もないが、昔は様々な魔物が何不自由なく生活していた綺麗な街だった。と、アルバートが崩れた瓦礫の中から、ボロボロのヌイグルミを引っ張り出した。


少女は、アルバートが持ったヌイグルミと彼を交互に見た後、自分の知っている魔物はもっと野蛮であることと、ゾンビがこんなに優しいのは驚きだ。と、からかいの気持ちで言った。


「某は少々特殊でな」

アルバートが自身の腕に触れ、どこか忌々しそうに言い放った。

「魔物についてだが……何も人間だけが知識と常識良識、文明を持つわけではないのだよ」


勝ち誇ったようなアルバートの顔に、少女は、この世界の人間と自分の世界の何言っているかわからないでかいヤンキー女を思い出し、確かに人間の中には、アルバートの言ったそれらを捨てている者が多々いる。と、噴き出した。


「では魔王殿、今某が住んでいる場所に案内しますぞ」


アルバートが言うには、彼の住居には数人の魔物がおり、それだけではなく、たまに迷い込んだ正常な人間を保護しているらしい。

もっとも、2、3日で怖くなって逃げる者がほとんどだが。と、アルバートが苦笑いを浮かべた。


少女は、ふんすっ。と、鼻を鳴らし、その魔物と全員と戦って勝ったら、魔王と認められるのか。と、意気揚々に話した。


「いや、魔王殿の実力は某が理解してる。そこまでしなくとも――」


しかし、少女は聞こえないふりをし、ズンズンと歩き出すのである。

ただただ、少女は戦い足りていないだけで、少し体を動かしたいと思っている。


戦いに飢えているだけなのである。

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